食糧危機とは?原因や対策について解説します

世界は今、深刻な食糧危機の問題に直面しています。

そんなことを言われたら

「未来予測なんて当てにならない」

と思う人もいるかもしれません。

地球温暖化ですら、多くの賛否を巻き起こしましたからね。

確かに未来は不確かで、正確に予測することは困難です。

そんな中でも、非常に精度が高いと言われる予測が「人口予測」です。

国連の人口に関する報告書「世界人口推計」によると、2050年には97億人に達すると予測されています。

言わずもがな、すべての人間は食べ物を必要としますから、人口が増えるということは、食べ物の需要が増加するということを意味します。

しかし、いくら人の数と食べ物の需要が増加しようとも、地球の面積が変わることはありません。

ここに食糧危機という問題の本質があります。

食糧危機とは

食糧危機とは一体どんな危機なのか。

ざっくり言えば「食べ物が足りなくなること」です。

冒頭でも申し上げた通り、世界の人口は増加し続けています。

これまで私たち人類は食肉によって多くのタンパク質を賄ってきましたが、人口増加によって需要と供給が10年以内に逆転すると言われています。

この危機的な状況のことを「タンパク質危機」と呼びます。

一人ひとりが、生きるために必要なタンパク質をとれない状況が、まさに食糧危機なのです。

原因

食糧危機の最大の原因は冒頭でも申し上げた通り「人口増加」です。

しかし、それ以外にも食糧危機をもたらす原因があります。

畜産

畜産は非常に環境負荷の大きい産業です。

例えば、大豆を生産しようと思ったら、大豆の畑を用意すれば済みます。

しかし食用の牛を生産しようと思ったら、牛を育てる放牧地と、牛のエサを育てるための農地を用意する必要があります。

現在、家畜は地球上の全陸地の30%を使用していると言われています。

世界最大の牛肉輸出国であるブラジルでは、牛の放牧地と飼料を生産するため、1日で東京ドーム650個分の森が消えています。

熱帯雨林は地球の肺とも呼ばれるくらい、地球上の二酸化炭素をコントロールするのに貢献しています。

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それが破壊されるということは、地球温暖化に拍車をかけることになります。

加えて、畜産はそれ自体が多くの二酸化炭素を排出しています。

世界で排出される温室効果ガスのうち、実に全体の18%を畜産が占めていると言われています。

畜産の温室効果ガスは、牛や豚が食べる飼料の生産・輸送、飼養管理、ふん尿の処理などで排出されます。

特に、牛のゲップで出るメタンガスは牛肉生産により排出される温室効果ガスの中でダントツに多いのです。

毎年家畜から放出されるメタンガスの量は石油約1億4400万トンに匹敵し、これは南アフリカ全体に電力を供給するのに十分な量に相当します。

そして、地球温暖化も、食糧危機をさらに深刻なものにする原因です。

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地球温暖化

地球の平均気温が上昇すると、陸上から蒸発する水分の量が増えることになります。

そうなると、干ばつが起こる地域が増えることになり、結果として穀物生産量の減少に繋がります。

平均気温が2.5℃上昇するだけで、食料の需要に対する供給が追い付かなくなります。

そうすると当然、穀物の価格は上昇することになります。

2050年には世界の穀物価格が最大で23%上昇するとも言われています。

日本は食料自給率がとても低く、その大部分を海外からの輸入に頼っているので、その影響はとても大きいんです。

また、地球温暖化は地上だけでなく海水の気温上昇にも繋がります。

海に生きる生物たちは絶妙な温度のバランスで生きていますから、海面の平均水温が上昇すると海水の酸性化が進み、魚にとって非常に住みずらい環境になります。

そうなると、魚の漁獲量の低下にも繋がってきます。

魚を食料とする途上国の人も多いですから、飢餓を悪化させることになりかねません。

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対策

このような現状に鑑み、世界では真剣に食糧危機への対策が議論されています。

特に畜産は環境負荷が大きいことから、畜産物に代わる食料を開発する企業が現れています。

代替肉

大豆など植物性原料を使い、肉の食感に近づけた食品を代替肉と呼びます。

代替肉の市場は右肩上がりで伸び続けており、2040年には「肉全体」の市場における40%が代替肉になるとの予測があります。

ケンタッキー・フライド・チキン、スターバックス、バーガーキングなど、大手の飲食チェーンもプラントベースの代替肉商品を展開しています。

アメリカの代替肉企業も急成長しており、ビヨンドミートは時価総額1兆円、インポッシブルフーズも時価総額5000億円のユニコーン企業となりました。

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培養肉

動物かた取り出した少量の細胞を培養することで得られる肉を培養肉と呼びます。

培養肉は動物を殺す必要がなく、しかも大豆ミートよりも味が本物の肉に近いという特徴があります。

2021年6月にはイスラエル企業フューチャーミートによって世界初の培養肉生産施設が開設されました。

この施設は従来の畜産設備の20倍の高速生産が可能で、1日に500キログラムの培養肉(5,000個分のハンバーガー)を生産することができます。

さらに一般的な動物を生産するよりも温室効果ガスの排出量は80%少なく、土地・水の使用量はそれぞれ99%、90%少なくて済みます。

昆虫食

国際連合食糧農業機関(FAO)は2013年に、食糧問題の解決策の一つとして「昆虫食」を取りあげました。

また2015年9月に開催された国連サミットでも「貴重なたんぱく源」として昆虫食が推奨されています。

1kg生産するのに、鶏は4.5kg、豚は9.1kg、牛は25kgの飼料を必要とします。

一方、コオロギは2.1kgの飼料で済みます。

また、牛の体重を1キロ増やすのに必要な水は1,500ℓなのに対し、コオロギは1ℓで済みます。

日本のように食料自給率が低い国でも、昆虫なら生産することが可能です。

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地産地消

食糧危機はグローバル化によってもたらされたと言っても過言ではありません。

世界最大の牛肉輸出国であるブラジルが、放牧地をつくるために熱帯雨林を伐採し続けているのも、結局はグローバル化の弊害の一つです。

ブラジルの牛肉がブラジル人によって消費されるだけなら、ここまで生産を拡大する必要はなかったわけですから。

地元で生産をし、地元で消費する、地産地消という消費スタイルは、食糧危機が取りざたされている今こそクローズアップされるべきです。

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最後に

世界が食糧危機に直面するのはそう遠くない未来です。

そして日本の場合、さらに早い段階でこの問題と向き合うべきときがやってきます。

なぜなら、日本は食料自給率が低く、大部分を海外からの輸入に頼っているからです。

それだけでなく、成長し続ける世界経済とは逆行し、日本経済は低迷し続け、恐ろしいほどに少子高齢化が進んでいます。

食糧危機とはすなわち富のある場所に食糧が集中するということです。

であることを考えれば、日本は食料自給率を高める、あるいは根本的に経済成長率を高めることは急務であると言えます。

そんな日本という危機的な国に住んでいる皆さんもぜひ、食糧問題について考えてみましょう。

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