ジェンダーとは?意味や使い方をわかりやすく簡単に解説

ジェンダー(gender)とは、「社会的」な意味での性別のことを指します。

性別を表す英語としてはセックス(sex)がありますが、こちらは「生物学的」な意味で使われます。

しかしなぜ、あえて言葉を使い分ける必要があるのでしょう?

それは、人を生物学的な性差で捉えようとすることで、偏見や不平等を生み出してしまう可能性があるからです。

たとえば「女は子供を産んで家事をするもの」という偏った考え方は、子供を産むことができる女性の生物学的な役割だけに着目することで生み出されます。

でも、例え生物学的には女性だったとしても、子供の産まずに、熱心に働いてキャリアアップをしたりして、社会的な役割を果たしている方も沢山いるわけです。

生物学的な違いは、必ずしも社会的な役割とは一致しないのです。

価値観が多様化する昨今、人を生物学的に捉えるのではなく、その人の置かれた状況、能力、役割といったように社会的に捉える必要がある。

そんな背景から、ジェンダーという言葉が用いられることが増えています。

意味・使い方

実は「ジェンダー」という言葉は、それ単体で使われることはあまり多くありません。

「ジェンダー+○○」といったように、複数の単語を組み合わせて用いられる場合が多いです。

ジェンダーギャップ

男性と女性における社会的な役割における不平等のことを「ジェンダーギャップ」と呼んだりします。

例えば、ある企業の賃金が、男性と女性とで大きな格差がある場合には、ジェンダーギャップがあるといえるでしょう。

ちなみに、どれくらいジェンダーギャップが大きいかを数値化したものを「ジェンダーギャップ指数」と呼びます。

世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表しています。

【関連記事】ジェンダーギャップ指数とは?日本の順位と意味を解説

ジェンダーレス

生物学的な性別を前提に作られた社会的な区別をなくそうとする考え方のことを「ジェンダーレス」と呼びます。

例えば学生の制服で、男子生徒はスラックス、女子生徒はスカートという決まりは、社会的に形成されてきた決まり事です。

しかし最近では、ジェンダーレスの考え方から、女子生徒であってもスラックスを選択できる学校もあったりします。

ジェンダーフリー

これまで社会的に決めつけられてきた「男性像」や「女性像」にとらわれることなく、個人が自由に能力を発揮する社会を目指す考え方をジェンダーフリーと呼びます。

例えば「男性は働いて女性は家事育児をやるべき」という決めつけにとらわれず、男性が家事育児をしてもいいし、女性が働いてもいい…そんな社会を目指すのがジェンダーフリーです。

ジェンダーレスとよく似ていますが、ジェンダーレスは「区別」をなくすこと、ジェンダーフリーは「差別」をなくすこと、という風に使い分けられます。

ジェンダーニュートラル

あえて性別を区別することなく中立を目指す考え方をジェンダーニュートラルと呼びます。

例えば飛行機の中の「ladies and gentleman」という機内アナウンスは、ロンドンやニューヨークでは廃止されました。

「Everyone」と呼べばいいだけで、性別を区別して呼びかけることに何らの合理性もないからです。

ニューヨークでは最近、男性用トイレと女性用トイレを表すサインがなく、「Gender Neutral」と書かれた、男女混合のトイレがあったりします。

ジェンダーレスとジェンダーフリーは「性の差をなくす」ことを目指していますが、ジェンダーニュートラルではそもそも「性の分類をなくす」ことを目指すという違いがある、といえるかもしれません。

ジェンダー問題

2015年9月25日に国連総会で採択された目標のことをSDGs(エスディージーズ)と呼びます。

SDGsは17個の目標と169の達成基準で構成され、2030年までに達成すべき全世界の目標として定められています。

そんな17個あるSDGsの目標の中には「ジェンダー平等の実現」が掲げられています。

つまり世界には解決すべきジェンダー問題が沢山あるというわけです。

【関連記事】SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは?世界の現状や取り組みを紹介

政治参加

世界中で女性が政治の場へ進出しており、現在46か国で、少なくとも1つの議会で国会の議席の30%以上を女性が占めています。

しかし各国の議会での女性の代表率は23.7%と、平準化にはほど遠いのが現状です。

就労制限

世界銀行の年次報告書によると、調査を行った189か国のうち半分以上の国では、女性が男性と同じ職業に就くことを認めておらず、男女の賃金格差解消に向けた措置を講じておりません。

また、報告書によると、18か国では夫が妻の就労を阻止する権利が法律で認められています。

児童婚

世界で7億5000万人の女性と少女が18歳より前に結婚をしています。

これは、その国の宗教や文化で結婚をせざるを得ないケースもあれば、人身売買などによるケースもあります。

アフリカのサハラ以南の国々ではいまだに児童婚の風習が根付いております。

FGM

現状で、30か国で2億人の少女がFGM(Female Genital Mutilation/女性器切除)を受けています。

FGMを行うことで、女性は処女を守り、不貞を防ぐ手段と見なされているのです。

アフリカや中東、アジアの一部の国々で行われている悪しき慣習です。

ジェンダーの種類

身体的な性の特徴と、自分自身の性の認識は、必ずしも一致しない場合があります。

例えば、身体的には男性の特徴を有していたとしても、心は女性の場合もありますし、その逆もしかりです。

あるいは、男女どちらにも恋愛感情を抱かない人もいたり、自分自身の性を決められない人もいたりします。

つまり、ジェンダーについて論じる際には「男性」と「女性」の二元論で語られがちですが、実際にはもっと多様な性の種類があるのです。

ジェンダーの種類 概要
レズビアン(Lesbian) 性自認が女性かつ性的指向が女性に向けられる同性愛者のこと。
ゲイ(Gay) 性自認が男性かつ性的指向が男性に向けられる同性愛者のこと。
バイセクシュアル(Bisexual) 男性と女性の両方のように二つ以上の性別に対して性的指向が向けられる人のこと。
トランスジェンダー(Transgender) 出生時に割り当てられた性別と性自認が一致しない人のこと。

まとめ

世界はいま、気候変動や生物多様性の損失といったグローバルな課題を抱えています。

そんな地球規模の課題を解決するためには、参加する人の数は一人でも多い方がいいに決まってます。

男性だけでなく、女性も活躍した方が社会はより持続可能なものになるはずです。

そんなわけで、世界はいま「ジェンダーギャップの解消」を目指しているわけなのですが…。

日本はというと、ジェンダーギャップ指数でいえば世界最低レベルの国であり、世界有数の「男女不平等」な国家です。

ジェンダーギャップを解消しようと努力する世界の足を引っ張っている国家だといって差し支えないでしょう。

しかし、この現状を前向き捉えるなら、日本には活躍できる潜在的な可能性のある人が沢山いるとも言えます。

伸びしろは十分というわけです。

経済的にも、政治的にも、日本という国家をより良くしたいと考えるなら、まずはジェンダーギャップの解消から考えてみると良いかもしれません。

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