泥炭地とは?特徴・重要性・危機的状況について

泥炭地とは、炭素を含んだ有機物が堆積してできた土壌のことを指します。

木の葉や枝が枯れると、通常は微生物によって分解されます。

しかし水分を大量に含んでいる場所では、酸素が十分にないので分解できません。

そのため、十分に分解が進まないまま有機物が土壌に堆積し続けることがあるのです。

泥炭地は、ロシア、モンゴルなどのは冷涼な亜寒帯・寒帯、あるいはインドネシア、マレーシア、アマゾン、アフリカのコンゴ盆地などの熱帯地域に分布しています。

実は日本にも北海道あたりに分布していたりします。

泥炭地の重要性

一般的にあまり目立たない存在ですが、気候変動対策において泥炭地は非常に重要な意味を持つ場所です。

泥炭地は地球表面のわずか3%(400万㎢)の面積を占めるにすぎません。

しかし、世界中の森林の2倍以上の炭素を蓄えられていると考えられており、地球の土壌炭素の約30%を保持していると推定されています。

要するに、泥炭地の健全性を保てるかどうかは、大気中のCO2濃度をプラマイゼロの状態、カーボンニュートラルを実現できるかどうかに大いに関係してくるわけです。

泥炭地が途方もなく長い年月をかけて堆積し続けると、やがて「石炭」になります。地表で泥炭層が形成され、地殻変動によって地下に埋没していき、地熱と圧力が加わり続けることで石炭化が進んでいくのです。

失われる泥炭地

人類はこれまで大量の土地を農地に転換してきました。

泥炭地も例外ではありません。

特にインドネシアやマレーシアに点在する熱帯雨林は、凄まじいスピードでアブラヤシ農園へと姿を変えています。

そして同時に、熱帯泥炭地も破壊され続けています。

泥炭地で農業をやろうと思っても、水分を大量に含んだ状態では地耐力が弱く、農業機械を走らせることもできません。

そのため、泥炭地で農業開発をしようと思ったら、まず真っ先に地中の水分が抜かれます。

ただ、泥炭地は水分を含んでいるからこそ堆積しているので、乾くと大問題です。

空気に触れれば微生物による分解が進み、CO2が排出されます。

しかも炭素を含んでいるので、乾燥すると非常に良く燃えます。

多くの炭素が眠っている泥炭地ですから、一度に分解・焼失してしまえば、大量のCO2が大気中に放出されます。

そのため泥炭地は別名「炭素爆弾」なんて呼ばれたりもします。

2015年にインドネシアでは大規模な泥炭地火災が発生しました。

このとき排出された二酸化炭素の量はたった2か月間で16億トン以上でした。

当時の日本の年間CO2排出量13.6億トンを大きく上回る量だったと推定されています。

もちろん人類も泥炭地の重要性を認識していないわけではありません。

1971年に採択されたラムサール条約によって、泥炭地を含む湿地を守ろうとはしています。

ただ、2021年までに世界の湿地はさらにその3分の1が失われてしまいました。

さいごに

泥炭地は形成されるまでに数百年という時間を要します。

破壊されたものを復元することは決して容易ではありません。

なので、私たちにできることは、いま残っている泥炭地を守ることです。

熱帯泥炭地のおよそ7割が東南アジアに分布しています。

そしてすでに述べた通り、熱帯泥炭地が破壊されている大きな原因の一つがアブラヤシ農園の開発です。

私たち日本人も一人当たり年間5kgほど消費しているパーム油生産のために森林は伐採されているのです。

そう考えると、私たちも泥炭地の破壊とは無関係ではありません。

私たちにできることはRSPOというラベルのある商品を選ぶことです。

「泥炭地の開発禁止」という基準をクリアしたパーム油を使用していなければ、このラベルは表示できないからです。

私たちの買い物によって破壊された自然は、私たちの買い物によって回復しましょう。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。