HAREGIにインタビュー!アパレル業界の廃棄物に興味を持った訳とは?

アパレル産業は世界で2番目の環境汚染産業と呼ばれています。

洋服を作る工程で、大量の水を使用したり、大量の農薬などが使われていたりします。

また、日本の衣料廃棄物は年間140万トン。

生産工程だけでなく、廃棄する際の環境汚染も問題視されています。

そんな問題を解消するべく誕生したのが「HAREGI」です。

HAREGIは、衣服を作る工程で出る端切れを再利用して洋服を販売するアパレルブランドです。

端切れの再利用によって、業界が抱える大量廃棄という問題を解消しようとしているわけです。

しかしなぜ、あえて端切れに着目したのでしょうか?

今回はHAREGIを運営する高橋さんにお話を伺いました。

HAREGIとは?

高橋さん(写真左から2番目)

——事業内容について教えてください。

高橋さん:HAREGIというブランドは、itobanashiが運営しています。

itobanashiは、インドをはじめとする途上国の刺繍を世界に届けるエシカルファッションブランドです。

刺繍されている生地を衣服として生産する時に、サイズが合わないと生地を切っていくので、どうしても端切れが出てしまいます。

そこで衣服にならないような端切れを活かそうと、新ブランド・HAREGIを立ち上げました。

2021年の5月の立ち上げから現在までに、捨てないTシャツと捨てないパーカーを展開しています。

ブランド立ち上げ時に行ったクラウドファンディングでは200名以上の方にご賛同をいただき、目標金額の3倍以上のご支援を集めることができました。

このような皆様からの期待に応えられるように、今後もTシャツやパーカーなどアパレル品以外に小物・カーテンなどを展開したいと考えています。

——自社で出た端切れを使われているんですか?

高橋さん:主にitobanashiから出た端切れを使用しています。

しかし、私たちは「日本中の端切れをゼロにしよう」というテーマで活動しています。

そのため、今は5~6社さんに生産過程から出る端切れを提供していただいています。

たとえば、洋服の後ろにHAREGIのロゴが入っているタグがあるのですが、広島県尾道市の「立花テキスタイル研究所」さんや、岐阜県郡石徹白村にある「石徹白洋品店」糸白洋品店さんからいただいた捨てられるはずの綿素材を使用しています。

こちらに私たちがHAREGIのロゴをプリントし、タグとして再利用しています。

今後、色々なアパレル企業さんから出てくる端切れをもっと集めて、コラボが出来たら良いなと考えています。

SDGsの取り組み

——貴社がどのようにSDGsに取り組んでいるのかを教えてください。

高橋さん:私たちは「環境問題」と「労働問題」の2つを解消するために取り組んでいます。

環境問題で言うと、端切れをゴミとしてなるべく出さないことを大切にしています。

アパレル産業は環境負荷が高く、服を一つ作るのに大量の水を使用したり、人手がかかったりします。

裾野が広い産業なので、全て一気に環境負荷を軽減出来るのかというと難しい部分があります。

そのため私たちは、まずは生産の現場から出る端切れをデザインとして活かして変えていこうという取り組みをしています。

労働問題で言うと、インドの職人の方が買い叩かれてしまう現状があるため、労働環境を正したいという気持ちがあります。

そのため、インドの職人の方に対してきちんと対価を支払う、フェアトレードを意識しています。

もともとHAREGIの母体であるitobanashiがインドの刺繍を取り入れたのは、「インドの刺繍職人の地位向上」や「インドの伝統的な文化を守りたい」という想いがあったからです。

また、コロナ禍でバイトやパートなど仕事を失った若者や主婦の方に、内職等で、ものづくりを支えてもらいながら、彼らの収入にも繋げています。

今後は、福祉施設にいらっしゃる方と仕事をする機会を作り、多くの人が平等に働ける環境を作っていきたいと考えています。

SDGsを取り入れた経緯

——事業にSDGsを取り入れるようになった経緯を教えてください。

高橋さん:もともとitobanashiでは、インドの職人の方の地位向上や労働環境を正すことを大切にしていますが、SDGsとしてアピールしていませんでした。

しかし、もっと刺繍を大切にしたいという想いがありました。

日本で捨てられる服が年間約100万トン~150万トンと言われています。

衣料の廃棄物は数字として出てきますが、先程もお伝えしたようにアパレルは裾野が広い産業なので、生産過程で出るその他のゴミは数字に出ません。

私たちは、服の生産途中で出るような端切れというゴミにも目を向けていくべきだと考えており、インドの職人さんが丁寧に作った刺繍の生地を捨てるのはもったいないという気持ちがあったんです。

あらためて「見えないゴミの問題」と「勿体なさ」にも注目してきたいという想いで、SDGsを取り入れるようになりました。

SDGsの課題

——事業とSDGsを両立するうえで課題に感じていることはありますか?

高橋さん:会社を運営し、事業として成り立たせるには効率化が大切です。

効率を良くしていかないと、経営が立ち行かなくなってしまうことがあると思います。

商品を効率良く売るには、全て同じ形で同じサイズが豊富にあるなどが求められます。

しかし効率を求めていくと、アパレルで言えば、人件費を安くしないといけない、廃棄せざるを得ない洋服が出てきてしまうなど、どんどんサスティナブルから外れていくと思うんです。

事業を効率良く運営するのは成長に必要なことですが、追求しすぎると社会理念から外れていくのがもどかしいです。

ECサイトでいうと、写真を見たら写真のままの商品が、即日届くことが求められます。

そうなると大量生産にもつながりますし、同じ商品を作るために細かい作業を下請けにどんどん回していかなければいけないなどの問題が出てきます。

私たちが販売しているパーカーやTシャツは全て違うデザインです。

サイズは一緒にしていますが、出てくる端切れが違うのでデザインも全く異なります。

本来のECサイトとは違う使い方ではありますが、私たちは全ての商品を1枚ずつ撮影してECサイトに載せています。

同じパーカーが並んでいるように見えますが、全て違うデザインなので1点しかありません。

既存のECサイトのような効率が求められる業態と私たちが出していきたいものにズレはありますが、全て同じデザインである必要はないという新しい販売方法を提案しているのは一つの解決策かなと思います。

洋服の端切れに注目した理由

——洋服の端切れに注目した理由を教えて下さい。

高橋さん:もともと私はプロボノのメンバーとしてitobanashiさんと関わっていたのですが、別のプロジェクトで一緒に協業していこうという話がありました。

そこで私が「せっかくならメンズの服も作ってみたらどうですか?」とポロッとitobanashiの代表である伊達に言ったんです。

すると伊達は興味を持ち、「これまで衣服を作っている最中に出てきた端切れを捨てられずにいます。勿体なくてずっと取っておいてあるのですが、何かに使えないでしょうか?」という話になりました。

インドの刺繍の生地は、かなり時間がかけられて作られていますし、一つ一つ手作業によって刺繍されているため、人の想いも込められています。

また、刺繍というのは、その土地の文化や特色が色濃く出るものです。

植物の柄を使うところもあれば、動物や人の顔を刺繍しているところもあります。

itobanashiが主に販売するインドの刺繍生地には、チカン刺繍が施されています。

インド北部の伝統的な刺繍です。インドの職人の方がプライドを持って刺繍しているんです。

時間をかけて人が丁寧に想いを込めて作っている生地を捨てるのは、とにかく勿体無いというところで捨てずに取っておいてあったようです。

メンズ服を作るということと、勿体なくて捨てられなかった端切れを新しい服として活かしていくということを取り入れて、「みんなのハギレが、誰かの晴れ着になってほしい」と想いを込めて、HAREGIというブランドが誕生しました。

今後のSDGsについて

——今後、新たにやっていきたいSDGsの取り組みを教えてください。

高橋さん:色々な人に働く機会を持ってもらいたいという思いがあります。

実際に今は福祉施設の方に、端切れを使った小物を作ってもらえないか試行錯誤しています。

今後、仕事が出来る場を色々な方に提供したいと思います。

また、HAREGIとしてではありませんが、アパレル業界では生産現場のゴミがどのくらいあるのか把握する方法がありません。

日本国内のアパレル企業が数多くあったり、海外に工場があったりと、端切れの量がどれだけあるのか全く掴めていません。

アパレル業界の構造的な問題とは思いますが、もう少し把握出来るようになったら良いなと思います。

これからについて

——貴社の今後の展望について教えてください。

高橋さん:現在はTシャツとパーカーのみ販売しているので、アパレル商品をもっと増やしていき、行く行くは端切れの専門店を出したいです。

カーテンやテーブルクロスなどが端切れで出来ているなど、商品も店内も端切れで出来ているお店を開きたいと思っています。

また、皆さんに端切れの価値をもっとお伝えしていきたいです。

私たちは何回かワークショップを開催しています。

内容としましては、私たちが参加者さんに山盛りの端切れを用意して、「ここから好きな端切れを選んでください」と言います。

参加者さんには、端切れを型に合わせて切ったり貼ったりして、洋服に縫い付けてもらっています。

ほとんどの参加者さんは端切れを切りながら、「もったいなくて切れない」「切ったらこんなに小さくなってしまうけど使えるのですか?」と言います。

しかし、まさにこうした作業がアパレルの現場で起こっているんです。

皆さんが「ちょっともったいない」と思うことが、大規模で行われています。

こういったワークショップを定期的に開くことで、端切れをより身近に感じ、アパレルの廃棄問題にも関心を持ってもらえるはずです。

アパレルで起こっていることを自分事として身近に感じてもらえることができ、色々な意味で持ち帰るものが多いイベントになると思います。

最後に

以上がHAREGIの高橋さんのインタビューでした!

アパレル産業は様々な問題を抱えています。

その中でも洋服の生産過程で廃棄される端切れは、数字として表れることがありません。

そんな大量廃棄されている端切れに着目して、アパレル産業における廃棄物の量を減らそうと試みるHAREGI。

洋服はたくさんの人が携わり、生産されて私たちの手元に届きます。

とくに刺繡は何カ月、何年もかけて作られています。

細かく丁寧に刺繍が施されたHAREGIの洋服に愛着が湧くはずです。

HAREGIを通して、もう一度洋服が誰によって作られて、どのように捨てられてしまうのか考えていきませんか?

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