紛争鉱物とは?鉱物の種類や使用されている商品を解説

紛争鉱物(コンフリクトメタル)とは

紛争を引き起こす武装勢力の資金源となる鉱物

のことを指します。

紛争鉱物は、紛争を長期化させるだけでなく、強制労働や児童労働などの人権侵害を引き起こすことから問題視されています。

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鉱物の種類

紛争ダイヤモンド

1990年代、シエラレオネなどの内戦地域で武装勢力の資金源となっていたのが「ダイヤモンド」です。

ダイヤモンドは非常に高価な鉱物であり、産出国にとっては重要な外貨獲得資源となります。

しかし紛争地域で産出されると、武装勢力の資金源になることがあるのです。

2006年に公開されたレオナルド・ディカプリオが主演の映画「ブラッド・ダイヤモンド」では、強制労働や少年兵などシエラレオネの内戦の実態が描かれました。

3TG

主に1998年8月から2003年7月にかけて勃発した、第二次コンゴ戦争によって注目を浴びた紛争鉱物が「3TG」です。

3TGとは、米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)によって定められた

  • スズ(Tin)
  • タンタル(Tantalum)
  • タングステン(Tungsten)
  • 金(Gold)

の4種類の鉱物を指します。

タンタルやタングステンは希少金属であることから「レアメタル」とも呼ばれています。

3TGは、パソコン、スマートフォン、タブレットなど私たちの身近な電子機器に使われています。

スマホを例にとると、タングステンは本体を震わせるバイブレーターに、タンタルは電子部品のコンデンサーに使用されています。

背景

1996年以降、紛争鉱物が産出されるアフリカのコンゴ民主共和国(DRC)では、長い間紛争が続いています。

紛争の原因となっているのは、世界有数の埋蔵量を誇るダイヤモンド、金、レアメタルといった鉱物資源です。

鉱物資源の採掘権をめぐって争いが生じるのです。

2002年に和平合意が締結されましたが、ルワンダ、ウガンダ、ブルンジとの国境に近い地方では、現在でも沈静化しておりません。

武装勢力は鉱山を実効支配し、周辺の村を襲撃して住民を鉱山労働に就かせ、採掘した鉱物を密輸することで紛争資金を得ているのです。

また、紛争鉱物と性暴力は切っても切り離せない問題です。

武装勢力は鉱物の流通経路を制圧するため、組織的に性暴力を行います。

性暴力は単に性欲を満たすだけでなく、地域社会を崩壊させるための「武器」として用いられるのです。

コンゴ東部は「世界のレイプの中心地」と呼ばれるほど、性暴力が深刻な地域となっています。

規制

キンバリープロセス認証制度

ダイヤモンドが内戦の資金源となっていることが問題視され、2002年に国連で採択されたのがキンバリープロセス認証制度です。

キンバリープロセスとは、ダイヤモンド原石の輸出入の際に原産地証明書(キンバリー・プロセス証明書)が必要となる仕組みです。

日本をはじめ、50か国以上がキンバリープロセス認証制度に参加をしております。

ドッド・フランク法

アメリカでは2013年より施行されているドッド・フランク法によって、米証券取引所に登録されている全電子機器メーカーに対して、コンゴとその周辺国で採掘された鉱物を使用する場合は報告が義務付けられています。

そして企業側としては、紛争に加担していないことを示すためにサプライチェーンをたどって確認作業を行い、紛争に加担していないことが証明されて初めて「コンフリクト・フリー(紛争鉱物不使用)」を名乗ることができます。

日本

アメリカでは2013年からドッド・フランク法、EUでは2021年からEU紛争鉱物規則が施行されるなど、世界的に紛争鉱物に対する規制が進んでいます。

一方、我が国はというと、残念ながら紛争鉱物を規制する法律はありません。

とはいえ、民間ベースでは自主規制をしようとする動きが進んでいます。

2012年に、電子情報技術産業協会(JEITA)が「責任ある鉱物調達検討会」を設立し、多くの企業が参加をしています。

以下のページが参加している企業の一覧です。

https://home.jeita.or.jp/mineral/member/

紛争鉱物不使用度ランキング

コンゴ領域で採掘される鉱物を最も使用する家電とジュエリー・小売業において、株式時価総額の高いトップ企業20社の「紛争鉱物不使用度」ランキングがEnough Projectによって発表されています。

ランキングは以下の通りです。

家電

企業名 ポイント
Apple 122
Alphabet(Google) 102.5
HP 76
Microsoft 73
Intel 72.5
パナソニック 42.5
IBM 42
ソニー 33.5
Samsung 17.5
東芝 9

ジュエリー・小売

企業名 ポイント
Signet 66.5
Tifany 60
JCPenney 20
Target 20
Macy’s 19.5
Costco 7.5
Helzberg Diamonds 5
Sears 2.5
Walmart 2.5
Neiman Marcus 0

ジュエリー・小売はさておき、家電を見れば一目瞭然。

AppleとGoogle、世界の2大IT企業はしっかり上位を取っていることが分かります。

特にAppleは2010年に紛争鉱物をめぐって不買運動が起こったことで、態度を改めた経緯があります。

引用:https://enoughproject.org/products/reports/conflict-minerals

まとめ

企業が紛争鉱物を使用することは、それが善意であれ悪意であれ、間接的に武装勢力に資金提供をしているようなものです。

そしてまた、紛争鉱物が含まれる商品を購入する消費者も、間接的に紛争に加担していると言えそうです。

知り合いと話し合ったり、SNSで情報発信をしたりして、紛争鉱物という問題を多くの人とシェアしてください。

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