サーキュラーエコノミーとは?事例と一緒に詳しく解説します

サーキュラーエコノミーとは、日本語で「循環経済」を意味します。

一度使った商品を廃棄させるのではなく、資源を繰り返し循環させる経済システムです。

産業革命以降、人類は経済成長と豊かさだけを追い求め、大量生産・大量消費・大量廃棄を繰り返してきました。

しかし今後の人口増加を考えると、従来の経済システムを続けていては、地球が1個分では足りなくなると言われています。

ですから、世界では今サーキュラーエコノミーの実現が求められているのです。

従来の経済システム

従来までの経済システムは、資源を消費(Take)し、モノを生産(Make)し、廃棄(Waste)されるという流れでした。

こうした従来の経済システムは、廃棄に向かって一方通行であることから、直線型経済(リニアエコノミー)と呼ばれています。

しかしリニアエコノミーをこれから先も続けることは、あらゆる面で持続可能とは言えません。

例えばプラスチックを作る際に使用する石油は地球上に埋蔵されている量に限りがあるので、プラスチックを生産→廃棄するだけではいつか枯渇してしまうでしょう。

また、プラスチックは自然界に分解されないため、例えば海に流れてしまうと、生分解されることなく蓄積され続けてしまいます。

これから先、人口が増え続ければ、リニアエコノミーでは早晩立ち行かなくなるでしょう。

そんな背景に鑑み、今世界ではサーキュラーエコノミーの必要性が説かれているのです。

サーキュラーエコノミーの定義

イギリスのエレン・マッカーサー財団によると、サーキュラーエコノミーには以下の3原則が掲げられています。

  1. 廃棄物や汚染のない設計
  2. 製品や素材を使い続ける
  3. 自然のシステムを再生する

廃棄物や汚染のない設計

サーキュラーエコノミーでは「廃棄物や汚染をそもそも発生させない」ことが重視されます。

商品をつくる際には、人間の健康や自然システムにダメージを与える経済活動の負の影響を明らかにし、それをもとに商品設計をします。

ダメージや負の影響には、温室効果ガスや有害物質の排出、大気・土地・水の汚染、交通渋滞などの構造的な廃棄物が含まれます。

製品や素材を使い続ける

一度モノを作ったあと、最も環境負荷を下げるための行動は「使い続ける」ことです。

循環型経済では、エネルギー、労働力、材料の形で価値を維持する活動が好まれます。

つまり、耐久性を考慮した設計、再利用、再製造、リサイクルを行うことで、製品や部品、材料を経済の中で循環させることを意味します。

また、経済システムと自然システムの間を循環するように、バイオベースの材料を有効活用することが推奨されています。

自然のシステムを再生する

循環型経済では、再生不可能な資源の使用を避け、再生可能な資源を維持・強化することを重視します。

例えば、貴重な栄養素を土壌に戻して再生を改良したり、化石燃料に頼らず再生可能エネルギーを使用したりします。

【関連記事】化石燃料とは?種類や問題点について解説します

参照:https://ellenmacarthurfoundation.org/topics/circular-economy-introduction/overview

リサイクルとの違い

リサイクルは、商品の生産から廃棄に至るライフサイクルの最後、「廃棄」の段階から始まります。

ただし、今後の人口増加を考えるとリサイクルだけでは大量の廃棄物を処理することは出来ません。

ライフサイクルの下流であるリサイクルの段階で環境負荷を下げる方法を考えている時点で、すでに遅いというわけです。

サーキュラーエコノミーの場合、廃棄物や汚染の発生を未然に防ぐため、ライフサイクルの上流、最初の設計段階にまでさかのぼります。

サーキュラーエコノミーでは再利用・修理・再製造できるような商品設計の必要性を提唱しています。

商品が生み出される前の「設計」段階で、すでに環境への影響の80%が決定すると考えられているからです。

そもそも「リサイクルすら未然に防ぐ」のがサーキュラーエコノミーの基本戦略なのです。

リサイクルの限界

世界のリサイクルシステムは上手く機能しているとは言えません。

リサイクルをするためには、リサイクルできるもの、そうでないものを仕分ける必要があります。

しかしその作業を国内でやってしまうとコストが合わなくなってしまうので、多くの先進国は人件費の安い国へと輸出をします。

これまでリサイクルのため中国や東南アジアに廃棄物は輸出されてきました。

しかしこれらの国でリサイクルする以上に廃棄物が輸入されてしまうため、リサイクルが追い付かず、積み上げられたゴミの山が結果的に海に流出することになってしまいました。

海洋プラスチック問題は、廃棄物の輸出入によって生み出されているといっても過言ではありません。

このような現状に鑑み、多くの国々はいま、廃棄物に対して輸入規制をかけています。

行き場を失った廃棄物をどのように処理するか、今先進国はその対策が求められています。

リサイクルをすることは重要ですが、リサイクルだけで問題解決は出来ないことがお分かりいただけると思います。

ですから、リサイクルよりももっと上流の、商品設計から循環を考えるサーキュラーエコノミーが重要なのです。

【関連記事】海洋プラスチック問題とは?原因と対策や世界の現状を紹介

参照:http://www.env.go.jp/recycle/mat02.pdf

バタフライ・ダイアグラム

出典:https://archive.ellenmacarthurfoundation.org/explore/the-circular-economy-in-detail

エレン・マッカーサー財団では「バタフライ・ダイアグラム」と呼ばれる図を用いてサーキュラーエコノミーを説明しています。

左側の緑色のサイクルが「生物サイクル」、右側の青色のサイクルが「技術サイクル」を示しています。

MAINTAIN/PROLONG(&SHARE)

日本語にすると維持・延長(&共有)です。

技術サイクルの最も内側にあるループは、耐久性とメンテナンスおよび修理設計を通じて製品と材料の寿命をできるだけ長くすることで、製品と材料を使用し続ける戦略を示しています。

商品が長持ちすれば、ユーザー間でもモノを共有したりすることができるため、新しい商品をつくる必要がなくなります。

REUSE/REDISTRIBUTE

日本語にすると再利用・再配布です。

ここでは、製品が必要ではなくなった場合でも、新たなユーザーに再配布することが出来る設計を示しています。

例えばネットオークションのeBayや、日本だとメルカリなどが再利用・再配布のために重要な役割を担っています。

REFURBISH/REMANUFACTURE

日本語にすると改修・再製造です。

ここで言う改修と再製造は意味が微妙に異なります。

改修とは部品の分解や交換を行わず、可能な限り修理する、表面的なプロセスのことを示しています。

再製造は、使い終わった製品を部品レベルに分解し、新品と同様の状態、もしくはそれ以上の状態に再構築して改めて使うことを示しています。

RECYCLE

製品を材料レベルにまで戻し、新しい製品に作り直すプロセスがリサイクルです。

リサイクルもサーキュラーエコノミーでは重要なプロセスですが、リサイクルをするための労働力やエネルギー消費、コストなどを考えると、やはり「最終手段」と考えるべきです。

CASCADES

生物サイクル内で消費者に最も近い位置にあるのがカスケードというサイクルです。

資源を1回だけで使い切るのではなく、利用時に出る廃棄物を別の用途に使い、さらにその後も別の用途で活用をする。

利用を繰り返すことで品質は低下し続け、自然環境に戻るレベルまで余すことなく使い切り、最終的には栄養分として土壌に戻します。

事例

Loop

出典:https://loopstore.jp/

Loopとは、これまで使い捨てられていた容器を、再利用可能な容器に置き換える循環型のショッピングプラットフォーム。

「捨てるという概念を捨てよう」がLoopの掲げるミッションです。

容器を使い捨てないので、メーカーにとって容器は資産になります。

そのため、各メーカーはステンレスやガラスなど耐久性が高くデザイン性に優れた容器を採用しています。

Loopの容器ボトルにはガイドラインが定められていて

  • 最低でも10回は繰り返し使用できる
  • 洗浄しやすく衛生面にも配慮したシンプルなデザイン
  • 製造、使用過程で従来品よりCO2排出量抑えられているかどうか

などが基準になります。

2019年5月にアメリカ、フランスでスタートした「Loop」。

日本でも2021年3月からスタートしました。

Loop専用の容器ボトルを使用した商品は現状、イオンの一部店舗、イオンのネットスーパーで購入することが可能です。

今後も買える場所は拡大していくでしょう。

現在までにLoopに参入を表明している企業は、アース製薬、味の素、エステー、キヤノン、ネイチャーズウェイ、フィッツコーポレーション、P&Gジャパン、ロッテ、キリンビール、資生堂、大塚製薬など。

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