海洋プラスチック問題とは?原因と対策や世界の現状を紹介

いま世界では大量のプラスチック製品が作られ、消費され、そして海に流れ込んでいます。

海に流れ込んだプラスチックは分解されることなく漂い続けています。

そして2050年に海洋プラスチックの量は、海を泳ぐ魚の量を超えると言われています。

世界が直面する、この地球規模の問題のことを「海洋プラスチック問題」と言います。

世界中の国が協力して2030年を目途に解決を目指すSDGs17個の目標にも含まれています。

【関連記事】SDGs(エスディージーズ)とは?17の持続可能な開発目標について解説

原因

上の写真は神奈川県の湘南エリアの海岸です。

この写真を見て海洋プラスチック問題と言われても、もしかしたら、あまりピンとこない人もいるかもしれません。

そうです、海岸にも洋上にも、見渡す限り目立ったプラスチックゴミは見えませんよね。

この海に限らず、ビニール袋とかペットボトルが多少、海岸に落ちているのは見たことがあっても、ゴミの山といえる状況はあまり見たことがないはずです。

そして、これが海洋プラスチックという問題の根深さです。

ちなみに実際に海洋プラスチックが深刻なインドネシアだと、海はこんな状況です。

出典:GOT BAG

日本の海はきれいに見えるけど、インドネシアの海はまさに「確かに海洋プラスチック問題は存在するな」と大いに納得できるはずです。

でも、この状況の違いになんか違和感を抱きませんか?

日本は世界で3番目にプラスチックを生産している国です。

どう考えてもインドネシアより日本の海の方が汚れていそうですよね。

このような現象が起きてしまう理由が先進国の「リサイクル」の仕組みにあります。

実は日本や欧米などの先進国は、プラスチックゴミを自国でリサイクルせずに海外に輸出することがあります。

リサイクルといっても、どんなプラスチックでもリサイクルできるわけではありません。

同じような素材を組み合わせないとリサイクルは出来ません。

そのため、プラスチックを選別する必要があるわけです。

このプラスチックの選別作業に人件費がかかるため、コストの安い国に輸出をしているというわけです。

で、実際にプラスチックゴミを輸入した国でも、分別作業をはるかに上回るスピードでゴミが到着するので、どんどんゴミの山が積み上がっていきます。

そして山積みになったゴミが、徐々に海へと漂流してしまっているのです。

マイクロプラスチック

海洋プラスチック問題とは、何も目に見えるゴミだけではありません。

実は、何らゴミが浮いていないような場所でも、目に見えない微細なプラスチックが浮いていることがあります。

5ミリメートル以下の、とても微小なプラスチックのことをマイクロプラスチックと呼びます。

目に見えない分、問題を認識しづらいため、むしろ大きなプラスチックゴミよりたちが悪いです。

そして、海へと放出されたマイクロプラスチックを海鳥や魚、カメ、クジラなどが食べてしまい、窒息してしまうケースが多数報告されています。

【関連記事】マイクロプラスチック問題とは?海洋汚染という深刻な影響について

世界の現状

リサイクルのため、多くのプラスチックゴミが東南アジアに輸出されてきました。

しかし2018年以降、東南アジアの国々は相次いで輸入規制を打ち出しています。

マレーシア 実質的に輸入禁止
タイ 一部輸入禁止。2021年には全面輸入禁止の方針
ベトナム 輸入基準を厳格化
インドネシア 輸入禁止・規制を検討中
ラオス 輸入禁止・規制を検討中
カンボジア 貿易管理品目で一部禁止
フィリピン 貿易管理品目で一部制限

日本の現状

日本が抱えるプラスチックゴミ問題は海外に輸出することだけではありません。

自国でのリサイクル割合が圧倒的に低いのです。

日本はサーマルリサイクルと言って、プラスチックを燃やす際の熱をエネルギーに変換する「サーマルリサイクル」に頼っています。

多くの人がイメージするような「モノからモノになる」ようなマテリアルリサイクルがされる割合は低いのです。

しかし、世界の国々がプラスチックの輸入規制を行っており、現実逃避ができなくなってきてますから、そろそろリサイクル問題と向き合う必要がありそうです。

【関連記事】サーマルリサイクルとは?メリットと問題点について解説

対策

海洋プラスチック問題を解決するにはどうすればいいのか。

実際にプラスチックを完全に禁止できればいいのですが、これだけ資本主義が世界に浸透している昨今、なかなか現実的ではありません。

そのため、世界はいま海洋プラスチック問題の解決策を模索している最中です。

生分解性プラスチック

海にプラスチックが蓄積され続ける理由は、プラスチックが生分解されづらいという特性にあります。

WWFによると、石油由来のペットボトルの場合400年かかると言われています。

だったら、生分解するプラスチックを作ればいいじゃないか、ということで研究開発が進められているのが「生分解性プラスチック」です。

日本バイオプラスチック協会によると、生分解性の基準として「3カ月で6割以上が分解」と定義しています。

ただ、生分解性プラスチックも、生分解性が高いがゆえに、スプーンやストローといった使用期間の短い消耗品にしか使用できません。

【関連記事】生分解性プラスチックとは?特徴やデメリットについて解説

サーキュラーエコノミー

プラスチックを海に流れないようにするためには、一度作ったプラスチックをリサイクルし、何度も使い続けることが大切です。

このように、生産したものを処分するのではなく、何度も再生し、循環させ続ける仕組みをサーキュラーエコノミーと呼びます。

廃プラスチックを原料として再生プラスチックをつくるマテリアルリサイクルは、リサイクルするたびに劣化してしまうため、最近ではケミカルリサイクルの研究開発が進んでいます。

サーキュラーエコノミーの実現は、プラスチックは作られ続けるという前提にした現実的な対策です。

ただ、再生プラスチックからもマイクロプラスチックは出るわけですから、やはり海洋プラスチック問題の根本的な解決にはなりません。

【関連記事】サーキュラーエコノミーとは?事例と一緒に詳しく解説します

最後に

未来は予測がしづらいです。

しかし数ある予測の中でも確実は指標があります。

それは「人口増加」です。

人口は高い精度でこれからも増加し続けると言われています。

人口が増加するということは、すなわちプラスチックの供給量は増え続けるということです。

海洋プラスチックは、地球温暖化のように緊急性が高い問題とみなされないことが多いように感じます。

それは、気候変動のような分かりやすい実害がないからです。

ですが、どんな問題であれ、実害が現れてからでは遅いのです。

人口が今よりはるかに増加して、解決が困難になる前に、今すぐに対策を打ち出す必要があるでしょう。

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