RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)とは日本語で「持続可能なパーム油のための円卓会議」のことを指します。
持続可能なアブラヤシ製品の成長と使用を促進することを目的として、2004年に設立されました。
RSPO認証ラベルがあると「RSPOから持続可能だと認められたパーム油が含まれた商品」だということを意味します。
- なぜパーム油は認証される必要があるのか?
- パーム油が含まれていないことの認証じゃないの?
など、様々な疑問があるかと存じます。
本記事ではそのような疑問に回答をしていきたいと思います。
【お知らせ】7月30日パーム油問題の最前線に行った報告会を開催
パーム油が抱える問題
パーム油はアブラヤシという植物から採ることが出来る植物油脂の一種で、ほとんどがインドネシアとマレーシアで生産されています。
パーム油は他の植物油に比べて単位面積あたりの収穫量が多く、安定した価格で供給が可能なんです。
そんなわけで、1990年代から急激にパーム油の需要が伸び、今となっては数ある油脂の中で最も生産されている植物油となりました。
そんなパーム油の一体何が問題なのかというと、アブラヤシ農園開発によって、熱帯雨林が激減しているという点です。
【関連記事】熱帯雨林とは?生態系・持続可能性・私たちの役割
パーム油が採れるアブラヤシは赤道直下の熱帯地域でしか育ちません。
そのため、パーム油を生産しようと思ったら、それらの地域の熱帯雨林を伐採するしかありません。
パーム油の生産のせいで、インドネシア・スマトラ島の森林の56%、ボルネオの熱帯雨林の40%が消失してしまいました。
【関連記事】ボルネオ島に行って見えてきたパーム油の根本的な問題とは?
二酸化炭素を吸収し、酸素を排出してくれる熱帯雨林を失えば、当然気候変動に影響が出てきます。
さらに、熱帯雨林に住むオラウータンやトラやゾウといった動物は住む場所を失ってしまい、生物多様性に影響が出てきます。
そのほか、コスト削減のためパーム油生産に関わる人たちを不当な労働を強いているといった問題もあります。
これがパーム油、アブラヤシ農園の開発と、それによる熱帯雨林減少が抱える問題です。
そんなパーム油について、生産から流通までをしっかり監視し、持続可能な生産を認証しているのがRSPOというわけです。
【関連記事】パーム油の問題点とは?健康や環境問題について解説!
パーム油ゼロを目指さない理由
それだけ森林伐採に貢献しているパーム油ですが、RSPOは「パーム油をなくそう!」と言っているわけではありません。
あくまでも「熱帯雨林とパーム油生産の持続可能性に配慮している」ことの認証です。
でも、パーム油生産によって多くの熱帯雨林が失われているのなら当然ゼロにすべきだと思う人もいるでしょう。
しかしパーム油問題の解決が難しいと言われるゆえんがここにあります。
生産者のほとんどが小規模農家だから
現実問題、パーム油の生産で生活をしている人が沢山います。
そしてそのほとんどが、決して裕福とは言えない小規模農家です。
パーム油生産に携わる小規模農家の人は300万人いると言われています。
パーム油ゼロを掲げ、メーカーがパーム油を使わなくなれば、パーム油の生産に関わる失業者が増え、貧困問題に拍車をかけることになります。
SDGsが掲げている「貧困をなくそう」という目標は、解決から遠のくことになるでしょう。
先進国の都合でパーム油を使い始めたのに、今度は先進国の都合で失業者を生み出すことは果たして正しいことなのか、という問題です。
【関連記事】SDGs(エスディージーズ)とは?17の持続可能な開発目標について解説
他の植物油はさらに森林伐採に繋がるから
パーム油は他の植物油と比べると単位面積当たり5~8倍の油が収穫することができます。
つまり、パーム油は森林伐採に繋がりますが、パーム油をやめて大豆油や菜種油といった他の植物油に切り替えようとすると、さらに多くの森林伐採に繋がるのです。
パーム油生産によって多くの小規模農家の生活が支えられていること、パーム油の代替品がないことから、その妥協案としてRSPO認証があるのです。
RSPO認証の原則と基準
企業がRSPOの認証を受けるには8つの原則と43の基準を守る必要があります。
原則については以下の通り。
- 透明性への誓約
- 適用される法令と規則の遵守
- 長期的な経済的及び財政的存続可能性への誓約
- 生産者と搾油工場による適切な最善の慣行の活用
- 環境に関する責任と自然資源及び生物多様性の保全
- 従業員及び生産者や搾油工場によって影響を受ける個人とコミュニティに関する責任ある配慮
- 新規作付けの責任ある開発
- 主要な業務分野における継続的な改善への誓約
批判・課題・問題点
RSPO認証に対しては少なからず批判もあります。
そもそもRSPOが設定している基準自体に、持続可能性に懸念が残るという点。
また、そんな懸念が残るRSPOの基準ですら、満たしていないのに認証されているものがあるという点です。
しかしRSPOに対しては、基準自体への批判に加えて、基準を満たしていないものが認証されているという批判があります。こうした批判に応えて、RSPOでは基準の改定を重ねて監査体制の強化も進めてはいますが、十分な対応には至っていない状況と言えます。
基準の内容で問題となっているのは、まず、2015年に策定された「持続可能な開発目標(SDGs)」にも掲げられている「森林減少の阻止」が組み込まれていない点です。RSPOの基準では、保護価値の高い森林の保全は求めていますが、それ以外の一般の天然林についての保護規定はありません。そのために天然林を皆伐して農園に転換した場合でも、RSPO認証農園に認められます。一度伐採が入ったことのある「二次林」と呼ばれる天然林も、多くの野生動物にとっては非常に重要な生息地であり、熱帯林の生物多様性は突出しており、こうした森林の保全はとても重要です。
また、RSPOでは泥炭地開発を禁止していない点も問題です。パーム油は森林減少と泥炭湿地林開発による影響を考慮すると、全体として石炭よりも多くの温室効果ガスを排出することが明らかになっています。泥炭湿地林は「地球の火薬庫」とも呼ばれ、その地中には植物を由来として分解せず堆積した泥炭として炭素が閉じ込められていたのですが、農園開発により「火薬庫」の扉が開かれ、継続的で大量の温室効果ガスの排出が発生するとともに、森林火災のリスクが拡大しています。これらは気候変動に深刻な影響を与えています。
引用:パーム油認証の環境面での課題 | Soapbox
RSPOが「これは保護すべき森林だ」と認めた森林以外は、アブラヤシ農園のために新しく開墾することが出来てしまうんです。
優先順位はあるでしょうが、SDGsではそもそも地球全体として森林減少を阻止しましょう、という目標を掲げているわけですから、RSPOの管轄外の森林は無関係ですというスタンスはマズいです。
とはいえ、確かにRSPOの団体としての批判はあるものの、一消費者にとっては認証がない商品を購入するより認証がある商品を購入した方が、地球の持続可能性に貢献できることは間違いないわけです。
RSPO認証がさらに進化することを期待しつつ、私たちはRSPO認証がある商品を選びましょう!
個人的な考え
RSPO認証にも欠点があるのなら、パーム油に問題意識を持っている人たちはどのように行動すればいいのか?
色々な考え方があると思いますが、私は今のところ「RSPOを取得+熱帯雨林の保護活動をしている企業」の商品は積極的に買うことにしています。
そもそもパーム油はご丁寧に「パーム油」とは書かれず、「植物油」「植物油脂」「ショートニング」「グリセリン」など色々な名称でパッケージ裏面に記載されます。
つまり、黙ってパーム油を使っている限りは、消費者からはバレにくいわけです。
そしてRSPOを取得している企業はごく僅かで、大半の企業は黙ってパーム油を使っています。
そんな中、わざわざRSPOを取得している企業は、パーム油を使っていることを自ら公表し、ルールに縛られ、第三者から監視され、消費者から批判されるリスクを受け入れているわけです。
企業として透明性がある、という点においてはRSPOを取得している企業は評価できると思っています。
しかもメーカーがRSPO認証を取得しようとすると、認証手数料が上乗せされる分、商品の値段が上がってしまうので、パーム油問題と向き合う気のある企業でなければなかなか取得できません。
加えて、熱帯雨林の保護活動をしていれば、RSPOの不完全さを理解し、自ら補おうとしている姿勢の表れだと考えています。
例えばサラヤとかがRSPO認証を取得していて、かつ熱帯雨林の保護活動をしている企業です。
メリット
何かを買うためには、その根拠を欲しがるのが消費者というものでしょう。
つまり、RSPO認証の商品を買うメリットです。
RSPO認証がある商品を買うことのメリットは
- 熱帯雨林の保護に貢献することが出来る
- 熱帯雨林に住む動物の保護に貢献することが出来る
などが挙げられます。
要するに、RSPO認証の商品を買うことはサステナブルな行動だということです。
もちろん、今すぐ皆さんが享受できるメリットではありません。
ただ、確実に熱帯雨林が失われており、その結果を引き受けるのはアナタの子孫です。
言い換えるなら、アナタの子孫が生きるであろう地球を、アナタは救うことができるのです。
それが、アナタがRSPO認証の商品を買う最大のメリットです。
RSPO認証の商品
RSPO認証を取得している企業としてはサラヤが有名です。
なぜ有名かといえば、2006年に日本に籍を置く企業として初めてRSPO認証を取得したのがサラヤだからです。
また、サラヤは「ヤシノミ」や「ハッピーエレファント」などの製品の売上の1%をボルネオの熱帯雨林の保全活動に寄付をしています。
パーム油生産のために失ってしまった土地を買い戻して回復をしたり、ゾウやオランウータンの保護をしたりと、熱帯雨林を守るための具体的な行動を起こしています。
パーム油と熱帯雨林の問題に真剣に取り組む数少ない日本企業がサラヤなのです。
【関連記事】サラヤは70年前からSDGsに取り組んできた企業だった
RSPOに加盟している日本企業
あ~お | 伊藤忠商事、味の素、岩瀬コスファ、植田製油、エスビー食品、太田油脂、オレオトレード・インターナショナル、イオン、イノベーティブ貿易、岩谷産業、アサヒグループホールディングス |
---|---|
か~こ | コープクリーン、花王、興和、研光通商、カネカ、高級アルコール工業、カネダ、小桜商会、小倉合成工業、キユーピー、喜多組商事、岸本木材、小松屋、クレアジャパン、合同酒精、亀田製菓、コーセー、木村産業、清田産業、川研ファインケミカル |
さ~そ | サラヤ、資生堂、阪本薬品工業、三洋化成工業、双日、新日本理化、昭栄薬品、幸商事、昭和産業、創窓堂、ゼロワットパワー、スジャータめいらく |
た~と | 太陽油脂、玉の肌石鹸、第一工業製薬、月島食品工業、豊田通商、タカナシ乳業、太陽化学、高砂香料工業、テイカ、ダイセル、東洋水産、当栄ケミカル |
な~の | 日清オイリオグループ、日油、日本触媒、ニイタカ、日清食品ホールディングス、日本生活協同組合連合会、日華化学、日本サーファクタント工業、日光ケミカルズ、ニチレイ、日本発電工業、日本精化、日世、日本食品 |
は~ほ | 不二製油、汎アジア貿易、ハウス食品グループ本社、長谷川香料、不二家、パームオイルエナジー、バイオマス発電、富士通商、ボルネオ保全トラスト・ジャパン |
ま~も | 三菱商事、三井物産、ミマスクリーンケア、丸善薬品産業、丸紅、三井化学、明治、丸善石油化学、ミヨシ油脂、三菱ケミカル、森永乳業、明和エンジニアリング、マルハニチロ |
や~よ | 雪印メグミルク、横関油脂工業 |
ら~ろ | ライオン、理研ビタミン、ラディッシュ・ソリューション、ロッテ |
A~Z | J-オイルミルズ、ADEKA、H.I.S. SUPER電力、LOPS |
これだけ沢山の日本企業がRSPOに加盟をしていますが、ここに掲載されている企業の商品がすべてRSPO認証を取得しているかといえば、全くそんなことはありません。
展開している商品に対して、徹底して認証を取得しているのは私が知る限りサラヤくらいではないでしょうか。
最後に
以上がRSPO認証に関する解説です。
是非、これから買い物をする際には、商品を手に取って、パッケージにRSPO認証がないかどうか探してみてください。
あるいは、通販サイトの検索窓にRSPO認証と打ち込んでみてください。
アナタの小さな行動が持続可能な社会の実現に繋がります。
コメント