水力発電の仕組みとメリット・デメリットについて解説します

水力発電とは、水が高いところから低いところへ流れるときのエネルギーを利用して発電を行う発電方式を指します。

日本では明治時代から活用されている、歴史ある再生可能エネルギーです。

最近は地球温暖化によって化石燃料からの脱却を図るのが世界の潮流であり、再エネへの注目が集まっています。

ただ、一口に再エネといっても、発電方法によってその特徴が全くことなり、それぞれ長所と短所があります。

日本で古くから活用されている水力発電も再エネの一つですが、良いとこづくめかと言えばそんなことはありません。

本記事では水力発電のメリットとデメリットについて紹介させていただきます。

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仕組み

水力発電には、河川に流れる水を利用して発電を行う「流れ込み式」と、ダムに貯めた水を放流して発電を行う「貯水池方式」「調整池式」「揚水式」があります。

流れ込み式

河川に流れる水を貯めるのではなく、水車を設置してそのまま発電を行う方式です。

発電量は河川の水量、つまり降水量に左右されます。

発電量は不安定ですが、ダムに比べて建設コストが安く済む点がメリットです。

調整池式

規模の小さいダムを利用します。

夜間や週末など電気の消費量が少ない時間に河川水を貯めこみ、電力消費が大きい時間帯に水を流して発電します。

1日から1週間分の水量を調整する発電方式。

貯水池式よりも小さなダムを利用するため環境への影響は小さくなります。

貯水池式

調整池式より規模の大きいダムを利用します。

電気の消費量が少ない春や秋などに河川水を貯めこみ、消費量の多い夏・冬に発電を行います。

年間を通じての水量を調整する発電方式。

調整池式よりも大きなダムを利用するため環境への影響は大きくなります。

揚水式

水力発電所がある河川の上流と下流にダムをつくり、2つのダムの間で水を流して発電する方法。

昼間、電力の消費量が多い時に上部ダムの水を下部ダムに落として発電し、電力の消費量が少ない夜間に下部ダムから上部ダムまで電動ポンプで水を汲み上げ、再び昼間の発電に備えます。

メリット

枯渇しない

石炭や石油といった化石燃料は、地球上に存在する数に限りがあります。

エネルギーとして人間が使い続ければ、いつか枯渇することになるでしょう。

しかし水力発電は水があれば発電が可能です。

水資源は石油のように使った分だけなくなることはなく、地球上で循環をしているので、雨が降る限り枯渇することはありません。

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CO2を排出しない

水力発電は発電時にCO2を排出しません。

石炭や石油をエネルギーとする火力発電は多くの二酸化炭素を排出し、それにより地球温暖化が問題になっています。

水力発電をはじめとする再生可能エネルギーは発電時にCO2を排出しないことから、再エネへのシフトが加速しています。

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発電効率が高い

水力発電はすべての電源の中で最も発電効率が高い発電方式です。

水車と発電機を動かす以外の電力以外はすべて発電にまわすことが出来るからです。

発電効率とは、エネルギーを電気に変換する効率のことを指します。

太陽光発電 約14~21%
風力発電 約30%~40%
水力発電 約80%
地熱発電 約10~20%
バイオマス発電 約20%
火力発電 約42~61%
原子力発電 33%

発電・管理コストが安い

火力発電なら石油・石炭・天然ガス、原子力発電ならウランといった燃料が必要になります。

これらの燃料はほとんど海外から輸入しているのが現状。

こうした燃料は値段の変動があるため、燃料が値上がりすれば電気代にしわ寄せがくるケースがあります。

しかし水力発電のエネルギー源は水であるため、調達費用がかかりません。

特に日本は水資源が豊富な国ですからね。

また、水力発電の設備自体も火力発電や原子力発電より管理コストが安くすみます。

需要の増減に対応

火力発電や原子力発電は一度操業を停止してしまうと運転再開に手間と時間がかかります。

しかし水力発電、とくに貯水式や揚水式の場合、電力需要に応じて柔軟に発電させたり停止させたりすることが可能です。

電力の需要に応じて出力を調整することが出来るのは水力発電のメリットです。

エネルギー自給率の向上

日本のエネルギー自給率は非常に低く、約9.6%しかありません。

石油、石炭、天然ガス、ウランなど、すべて輸入に頼っています。

一方、水資源が豊富な日本にとってエネルギー自給が可能なのは水力発電の大きなメリットです。

日本の地形に合っている

日本には河川と山地に恵まれており、国土の70%が山地・森林です。

傾斜が多い地形であるため、水力発電に向いた国と言えます。

実際、水力発電は日本では明治時代から活用されてきた歴史ある再エネです。

1950年代、日本のエネルギー自給率は58%で、その大半を水力発電が占めていました。

デメリット

降水量に左右

水力発電は水をエネルギー源としていますから、発電量は降水量による影響を受けます。

雨が降らない期間が続き、ダムに十分な水が貯まらなければ放水することが出来ません。

実際、降雨不足で水力発電が停止になった事例もあります。

【参照】
ダム水不足で水力発電停止 大分、北川ダム

初期費用が高い

水力発電は、日々の運用・管理コストこそ安いものの、初期のダム建設コストは高額です。

設備の初期投資は1kw当たり太陽光が30万円以下で済みますが、水力は約200万円前後かかります。

日本でも有名なダムの一つである黒部ダムは、当時の費用で総工費513億円かかったと言われています。

これは当時の関西電力資本金の5倍の金額です。

環境・生態系への影響

ダムの建設には広大な敷地を必要とし、建設にあたっては森林を伐採する必要があります。

さらに河川の水量を人為的にコントロールするわけですから、その流域の水の流れを変えてしまい、従来の生態系を変えてしまう可能性があります。

例えば上流で貯水をし、下流の水量が減れば魚やプランクトンなどに影響が出てきます。

自然環境への影響があることからアメリカではダムの新設が禁止され、この20年間で1200基近いダムが撤去されました。

安全性

水力発電は太陽光や風力に比べると安全性への懸念があります。

それほど多発している事故ではありませんが、ダムには決壊のリスクがあります。

1975年に中国河南省の板橋・石漫灘ダム決壊の事故では、57億3800万トンもの水が放出され、17万人の死者を出しました。

特に近年は地球温暖化にともなう気候変動によって集中豪雨が多発したりしていますから、水害のリスクは大いにあります。

設置場所が限られている

水力発電はどこにでも設置できるわけではありません。

「河川がある」「高低差のある地形」という条件を満たしている場所にしか設置が出来ません。

屋根に設置できる太陽光などに比べると設置場所の柔軟性が低いです。

最後に

実は日本では建設コストの見合う場所への設置が完了しており、大規模ダムの新規地点はほとんどありません。

ですから、今後は小規模な水力発電、いわゆる小水力の設置が進められていくことになるでしょう。

いずれにせよ、日本は2050年までの脱炭素を宣言しているわけですから、これ以上火力発電に頼ることは出来ません。

小水力にしろ、太陽光にしろ、風力にしろ、あらゆる可能性を探っていく必要があるでしょう。

今後日本はどのようなエネルギー政策をとっていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

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