カーボンニュートラルとは?分かりやすく意味を解説します

カーボンニュートラルとは

二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロ

の状態を意味します。

文字通りカーボン(炭素)をニュートラル(中立)にするということです。

しかし、なぜ「二酸化炭素排出ゼロにしよう」と言わずにわざわざ「カーボンニュートラル」なんて言葉を使うのでしょう。

プラスマイナスゼロとは

そもそも、二酸化炭素は地球温暖化の原因ではありますが、本来は地球の気温を適切に保つために必要なものです。

大気中に二酸化炭素がなければ、地球の気温は-19℃になると言われているくらいです。

大気中に放出された二酸化炭素は植物や海水などが吸収することで、地球上の二酸化炭素の総量はプラスにもマイナスにもなっていない、という自然の循環による絶妙なバランスの上によって成り立っていたのです。

つまり、産業革命以前まで地球はカーボンニュートラルな状態にあったわけです。

しかし産業革命以降、人間が石炭や石油などの化石燃料を掘り出して燃やし、大量のCO2を排出してきたことで、本来地球が想定していた「大気中の二酸化炭素の量」を超えてしまい、自然界の絶妙なバランスが崩れ始めました。

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要するに、二酸化炭素が排出されること自体が問題なのではなく、二酸化炭素が植物や海水の吸収量を上回って過剰に排出され過ぎているのが問題なんです。

ですから、世界が目指しているのは「二酸化炭素排出ゼロ」ではなく、排出量から吸収量や除去量を差し引いて「プラスマイナスゼロ」の状態なんです。

例えば、ある町でたくさん自動車が走っていたとしても、その町がとても自然にあふれていて、自動車が排出するCO2を植物の光合成によって吸収し、結果的にプラマイゼロになるのなら、その町はカーボンニュートラルな状態であると言えるでしょう。

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背景「パリ協定」

なぜここまでカーボンニュートラルという言葉を聞くようになったのか。

その背景として「パリ協定」があげられます。

なんとなく地球が温暖化しているぞ、というお話は聞いたことがあるでしょう。

そして、これ以上地球を温暖化させないために世界中で目標設定をしたのがパリ協定です。

そんなパリ協定の中で

「今世紀後半に、世界全体の人為的温室効果ガス排出量を、人為的な吸収量の範囲に収める」

という目標が掲げられました。

これ、まさにカーボンニュートラルの考え方ですよね。

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実現する方法

どうやってカーボンニュートラルな社会を実現していけばいいのでしょう。

色々な手段があると思いますが、ここでは代表的な例を挙げさせていただきます。

再生可能エネルギー

地球温暖化の最大の原因でもあるエネルギー分野の議論は避けて通れません。

石炭や石油などを燃やす火力発電は大量の温室効果ガスを排出します。

ですから、太陽光や風力のように、CO2を排出しないクリーンで持続可能な再生可能エネルギーに移行する必要があります。

特に日本の場合、2011年の東日本大震災で原発事故を起こして以降、安定した電力供給をするために火力発電に頼りすぎており、世界からバッシングを浴びています。

どれくらい再生可能エネルギーを普及させることができるか、間違いなく再生可能エネルギーは日本の温暖化対策の肝になってくるでしょう。

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電気自動車

地球温暖化という議論で真っ先にやり玉に挙げられるのが「ガソリン車」です。

例えば日本政府は現在、2030年半ばまでにガソリン車販売禁止にして新車の100%を電動車にすることを検討しているそうですが、これはまさに「CO2排出削減」のためです。

ただ、現状は日本政府として正式に決定したわけではありません。

トヨタ自動車の社長も「地球温暖化をすべて自動車のせいにするな」と言ったりしているので、今後もひと悶着あるでしょう。

いずれにせよ日本のカーボンニュートラルと電気自動車の行方は今後も目が離せません。

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参照:https://toyokeizai.net/articles/-/394007
参照:https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20201204.html

カーボンオフセット

カーボンオフセットとは、ある場所で排出されるであろう二酸化炭素などの温室効果ガスを、植林活動やクリーンエネルギー事業などの「削減」によって相殺する、という考え方です。

たとえば、海外のECサイトなどで最近「カーボンオフセットオプション」などを見かけることがあります。

これは、購入した商品を発送する際、飛行機やトラックから排出されるであろうCO2の量を計算し、金額換算して商品の金額の1~2%分くらい上乗せして支払うオプションです。

上乗せして支払ったオプション料金は、例えば植林活動や再生可能エネルギーの設置に充てられます。

植物は光合成をすることで二酸化炭素を吸収しますから、商品発送の際に発生するCO2を実質的にプラスマイナスゼロにすることができます。

このように、排出するであろうCO2を、間接的にCO2を削減する行動をとることで、実質相殺する仕組みのことをカーボンオフセットと呼びます。

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ネガティブエミッション

カーボンニュートラルは、ガソリン車をやめて電気自動車にしたり、火力発電をやめてクリーンエネルギーにしたり、「今排出しているCO2の量を徐々に減らす」戦略が基本です。

しかし、「積極的にCO2を除去する」ことも考えなければなりません。

例えば、植林を進めて光合成に使われる大気中のCO2の吸収量を増やしたり、「BECCS」(バイオマス燃料の使用時に排出されたCO2を回収して地中に貯留する技術)や「DACCS」(大気中にすでに存在するCO2を直接回収して貯留する技術)といった「ネガティブエミッション技術」を用いたりすることによって、大気中のCO2を減少させることができます。

出典:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_02.html

日本

2020年10月26日、第203回臨時国会の所信表明演説において、菅義偉内閣総理大臣は

「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」

ということを宣言しました。

温室効果ガスの排出を「全体としてゼロにする」といったのは、「排出ゼロ」ではなく「プラスマイナスゼロ」を目指すということを言っているわけです。

実現可能性はさておき、日本はこれから2050年のカーボンニュートラルな状態を目指して突き進んでいくことは間違いないわけです。

出典:第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説

世界

もちろん日本だけでなく世界中の国々もカーボンニュートラル実現に向けて走り出しています。

中期目標 長期目標
日本 温室効果ガスの排出量を2030年度までに26%削減(2013年度比) 温室効果ガスの排出量を2050年までに80%削減(基準年なし)
脱炭素社会を今世紀後半のできる限り早期、2050年にできるだけ近い時期に実現
EU 2030年少なくとも▲55%(1990年比)
※欧州理事会(12月10・11日)合意
※2013年比▲44%相当
2050年カーボンニュートラル
※複数の前提を置いた8つのシナリオを分析
英国 2030年までに少なくとも▲68%(1990年比)
※2013年比▲55.2%相当
2050年少なくとも▲100%(1990年比)
※一定の前提を置いた3つのシナリオを提示
米国 パリ協定離脱
→ バイデン次期大統領は2050年までのGHG排出ネットゼロを表明
中国 2030年までに排出量を削減に転じさせる、
GDPあたりCO2排出量を2005年比65%超削減
(前者は今年の国連総会、後者は気候野心サミット
2020で習主席が表明)
2060年カーボンニュートラル
(今年の国連総会で習主席が表明)

出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/pdf/002_03_00.pdf

2050年カーボンニュートラルを宣言した国の同盟には、日本を含めて121か国とEUが加盟しています。

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