パリ協定とは?目標や問題点について分かりやすく解説

パリ協定とは、

2020年以降の気候変動に関する国際的な取り決め

のことを指します。

これまで世界は1997年に採択された京都議定書の合意内容に基づいて、気候変動の問題に取り組んできました。

しかし、京都議定書の期限が2020年に期限を迎えるため、2015年にパリ協定という形で新たに2020年以降の気候変動の取り決めをし直したのです。

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目標

パリ協定で合意された目標は「世界全体の目標」を設定したのに加え、「各国の目標」を提出するよう求めています。

世界全体の目標

まず、パリ協定で設定されている全世界が目指す大きな目標として

  • 産業革命前と比較して世界の平均気温上昇を2℃より十分に低く保ち(2℃目標)、さらに1.5℃に抑えるための努力を追求(1.5℃目標)
  • 今世紀後半に、世界全体の人為的温室効果ガス排出量を、人為的な吸収量の範囲に収めるという目標を掲げている

が掲げられています。

平均気温上昇を2℃未満にする必要があるが、2℃ギリギリではなく1.5℃を目標にしようということです。

ただ、世界全体でどれくらい温室効果ガスを減らすのか、という目標は設定されていません。

その代わりに各国での目標数値の提出が義務づけられているわけです。

ちなみに2013~2014 年に公表されたIPCC第5次評価報告書によれば、世界の平均気温は、すでに産業革命以降の約130年間で既に約0.85℃上昇しているそうです。つまり、2℃目標とは、現時点を基準にすると「1.15℃目標」とも言えます。なかなかハードルの高い目標設定です。

各国の目標

続いては

「2℃目標や1.5℃目標を達成するためにアナタたちの国はどういう目標を設定する?」

という各国が個別に設定している目標を紹介させていただきます。

目標
日本 2030年度までに2013年比で温室効果ガス排出量を26%削減
イギリス 2030年度までに1990年比で温室効果ガス排出量を57%削減
アメリカ(※離脱) 2025年度までに2005年比で温室効果ガス排出量を26~28%削減
フランス 2030年度までに1990年比で温室効果ガス排出量を40%削減
ドイツ 2030年度までに1990年比で温室効果ガス排出量を55%削減
ロシア 2030年度までに1990年比で温室効果ガス排出量を25~30%削減
中国 2030年度までに2005年比でGDP当たりのCO2排出量を60~65%削減
インド 2030年度までに2005年比でGDP当たりのCO2排出量を33~35%削減

以上が、自国の経済などを考慮し、現実的に達成できそうだと判断して設定した目標です。

ただ実のところ、各国がすでに提出した目標を達成しても2℃目標は達成できません。

特に日本は環境団体から批判をされており「もし日本が掲げている目標を世界中が設定したら地球温暖化は21世紀に3~4℃を超える」と言われています。

「すでに目標達成が不可能ならパリ協定ってもはや意味なくない?」と思われるかもしれません。

しかしパリ協定は設定した目標をずっと継続するわけではなく、5年ごとにより高い目標設定に見直すことを規定しています。

加盟国

正しい日本語としては「気候変動枠組条約に加盟している国がパリ協定に合意した」です。そのため、「パリ協定の加盟国」というのは日本語としておかしいのですが、便宜的に見出しは加盟国とさせていただきました。

気候変動枠組条約に加盟しているのは全部で196カ国で、パリ協定には全196ヵ国が参加を表明しました。

気候変動枠組条約に加盟する国が全て参加するのは歴史上初めてのことです。

パリ協定が「合意された」とみなすためには

  • 55ヵ国以上が参加すること
  • 世界の世界の総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准すること

という2つの条件がありました。

経済と環境のバランスをどう取るか、というのはその国の情勢によって異なるため、果たして世界は同意をするのかどうか懐疑的でした。

しかし、アメリカのオバマ大統領が中国やインドに働きかけて成立をしたのです。

後にトランプ大統領にひっくり返されることになるのですが、パリ協定に全ての国が参加したのはオバマ大統領の功績であると言えるでしょう。

京都議定書

パリ協定 京都議定書
成立 2015年 1997年
時期 2020年以降 2020年まで
目標 産業革命前と比較して世界の平均気温上昇を2℃よりも十分に低く抑え、さらに1.5℃に抑えるための努力を追求すること 温室効果ガスを2008年から2012年の間に、1990年比で約5%削減すること
対象国 世界中の参加国 先進国のみ
義務 目標の提出 目標の達成

1997年に採択された京都議定書は、史上初となる「世界で協力して課題を解決しよう」という国際的な取り組みでした。

京都議定書では、アメリカ・ヨーロッパ・日本をはじめとする先進国に削減目標の達成が義務付けられていました。

しかし、結果として目標達成が義務付けられていなかった中国やインドといった新興国が、大幅に排出量を増やす結果となってしまいました。

このような京都議定書の反省も踏まえ、パリ協定では「全世界が達成すべき目標」となったのです。

問題点

パリ協定は京都議定書よりも緩くなったという批判があります。

京都議定書では、掲げた目標を達成しなければ、金銭的な不利益を被ったりと、一定の罰則が設けられていました。

一方、パリ協定は目標を守らなかったとしても罰則はありません

恐らくパリ協定では京都議定書とは異なり、途上国も目標達成の対象となっていることが緩くなってしまっている原因の一つとして考えられます。

温暖化の原因となる温室効果ガスを排出していたのは先進国なのに、なぜ途上国が罰則を受けなければならないのか、といったような葛藤があったのでしょう。

一方、先進国の考えとしては、先進国だけが厳しい制約を受けている間に、途上国が経済で追い上げてきてしまう、という危機感があります。

(この主張を貫いて離脱を強行したのがアメリカのトランプ大統領です。)

このようなせめぎ合いは、京都議定書のときにもありました。

パリ協定では、先進国と途上国の妥協案としてこのような緩い目標設定になっているのでしょう。

しかし地球温暖化を取り巻く状況は京都議定書のときよりはるかに悪化している今、このような緩い目標設定でいいのか、という疑問は残ってしまいます。

排出枠が余った国や企業と、排出枠を超えて排出してしまった国や企業との間でトレードする制度を排出取引と呼びます。目標を達成できなければ排出枠を売却できなくなり、結果的にそれが金銭的な不利益となり、京都議定書における法的拘束力となっていたのです。

最後に

以上がパリ協定で掲げられている目標や問題点です。

ちなみにパリ協定は2015年12月に採択されましたが、その3ヵ月前の2015年9月に国連でSDGsが採択されました。

パリ協定はあくまで「気候変動」に関する取り組みですが、SDGsは環境問題のほか、貧困や格差といった問題を含む、全部で17個の「持続可能な開発目標」を掲げた国際的な取り決めです。

2030年までは、この2つの協定で掲げた目標達成に向かって世界は動いていくことになります。

ですから、パリ協定とSDGsはセットで理解しておくことをオススメします。

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