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SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは?世界の現状や取り組みを紹介

国が経済発展を遂げるためには、産業発展や技術革新が不可欠です。

実際、過去に途上国に分類されていたアジアの国々が経済発展して豊かな生活を手にできたのは、産業発展や技術革新によるところが大きいです。

そして、産業発展や技術革新を起こすには、大前提として電気・ガス・水道・交通・インターネットなどインフラの整備が必要不可欠です。

たとえば、途上国でGAFAのような企業を生み出そうという目標を掲げる国があったとして、そもそもその国でインターネットを利用できる人が少なければ実現可能性は低いでしょう。

そして、残念ながら世界中では十分にインフラが整備されていない国が数多くあります。

インフラが整備され、持続可能な産業が築かれれば、新たな雇用を生んだり収入の安定化に寄与することに繋がります。

本記事では17個あるSDGsのうち、9番目の目標「産業と技術革新の基盤をつくろう」について解説をさせていただきます。

【関連記事】SDGs(エスディージーズ)とは?17の持続可能な開発目標について解説

目次

8個ターゲット

「産業と技術革新の基盤をつくろう」

といっても、どういう方法で作るのか、どういう手順でつくるのか、といった具体的な指針がなければ皆で同じ目標に向かって突き進むことができません。

というわけでSDGsはそれらの具体的な指針のことを「ターゲット」と呼んでいます。

SDGsは全部で17個のグローバル目標と169個のターゲットで構成されています。

そのうち、目標9についてはターゲットが8個あるということです。

9 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。
9.1 質が高く信頼できる持続可能かつレジリエントな地域・越境インフラなどのインフラを開発し、すべての人々の安価なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援する。
9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用およびGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。
9.3 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーンおよび市場への統合へのアクセスを拡大する。
9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術および環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取り組みを行う。
9.5 2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国および小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術的支援の強化を通じて、開発途上国における持続可能かつレジリエントなインフラ開発を促進させる。
9.b 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究およびイノベーションを支援する。
9.c 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。

【関連記事】SDGs「169」のターゲットとは?達成基準を一覧で紹介します

世界の現状

冒頭でも触れた通り、世界にはインフラが整備されていない地域が数多くあります。

特に後発開発途上国は2030年の目標を達成するために、製造業の発展、科学研究、イノベーションへの投資など多くの課題があります。

電力供給

開発途上地域では、約26億人が安定的な電力供給を受けていません。

電気がなければ子供たちは夜に教科書を見ることができず、SDGsの4番目の目標「質の高い教育をみんなに」は前進しません。

【関連記事】SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」とは?世界の現状や取り組みを紹介

引用:持続可能な開発のための2030アジェンダ採択 — 持続可能な開発目標ファクトシート

衛生施設

全世界で25億人が基本的な衛生施設を利用できていないほか、水資源にアクセスできない人々もほぼ8億人近くに上っています。

そのうち数億人がサハラ以南アフリカと南アジアに暮らしています。

下水設備が整っていないと、排泄物や工業排水などが含まれた水がそのまま河川や海に流れ出すことになります。

汚染された水が河川に流れることで、環境を汚染するのはもちろんのこと、健康への被害も及ぼします。

毎日1,000人近くの子どもたちが、予防可能な水や衛生関連の下痢性疾患で命を落としています。

【関連記事】SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」とは?世界の現状や取り組みを紹介します

引用:持続可能な開発のための2030アジェンダ採択 — 持続可能な開発目標ファクトシート

インターネット普及率

2018年には、世界人口の96%が携帯電話の電波の届く範囲に住み、90%の人が第3世代(3G)またはそれ以上の品質のネットワークを介してインターネットにアクセスすることができます。

つまり、地球上のほとんどの人が携帯電話ネットワーク圏内に住んでいることになるのですが、すべての人が携帯電話ネットワークを利用できるわけではありません。

インターネットを利用するためには当然利用料を支払う必要があるわけですが、多くの人にとってこれらの費用は高すぎるのです。

現在、世界の人口の半分以上がインターネットを利用していますが、LDC(後発開発途上国)では約20%にとどまります。

途上国では新たな産業をおこすために、道路や電気、水道といったインフラだけでなく、インターネットへのアクセスや金融サービスなどのインフラ整備も必要なのです。

インフラ未整備

低所得国をはじめ、多くのアフリカ諸国では、インフラの未整備により、企業の生産性が約40%損なわれています。

例えば経済発展のためには物流の効率化が不可欠であり、道路や鉄道が整備されていなければ輸送に大幅な時間がかかってしまいます。

引用:持続可能な開発のための2030アジェンダ採択 — 持続可能な開発目標ファクトシート

金融サービス

最貧国の小規模産業では、成長とイノベーションに必要な金融サービスが不足しています。

途上国では中小企業が国の経済成長の担い手となっており、中小企業がさらなる発展をするには十分な資金調達が不可欠です。

現状を鑑みると、世界の中小企業の31.5%が融資を受けていますが、世界全体でみると地域による偏りが顕著です。

たとえばラテンアメリカ・カリブ地域では中小企業の半数以上が融資を受けていますが、サハラ以南のアフリカでは20.7%にとどまっています。

貧しい農村に住む人に「画期的な商品を開発してください」といっても、当たり前ですが元手がなければ何もはじめられません。

革新的な技術が開発できそうな中小企業があるのに、お金がないという理由だけで実現できないのは、世界にとって大きな損失です。

金融サービスを充実させることがいかに重要かお分かり頂けるはずです。

研究開発費

広く公平に誰もが参入できる産業、資源を効率的に使う持続可能な産業をつくり出すためには、技術革新(イノベーション)が必須です。

そして、イノベーションはある日突然起こるものではなく、長年にわたる研究開発の末に実るものです。

世界的に、GDPに占める研究開発(R&D)への投資は、2000年の1.52%から2016年には1.68%に増加しました。

ヨーロッパと北アメリカでは、GDPの2.21%が研究開発に費やされていますが、サハラ以南のアフリカと西アジアでは、それぞれ0.42%と0.83%でした。

このままでは、先進国と開発途上国の技術格差は広がる一方です。

製造業

製造業はとても重要な雇用産業であり、2009年には全世界でおよそ4億7,000万人を雇用していますが、これは世界の全労働者29億人の約16%に相当します。

2013年の製造業の雇用は、5億人を超えているものと見られます。

産業化による雇用拡大効果は、社会によい影響を及ぼします。

製造業で1人分の雇用が生じれば、他の部門で2人分の雇用が生じます。

引用:持続可能な開発のための2030アジェンダ採択 — 持続可能な開発目標ファクトシート

ハイテク産業

近年では世界的に資源を中心としたローテク型の製造業から、ハイテク型の製造業へとシフトしています。

東・東南アジア、ヨーロッパ、北アメリカではMVA全体の47%以上がハイテク産業によるものでした。

一方で、オセアニア(オーストラリアとニュージーランドを除く)とサハラ以南のアフリカでは、それぞれ1.9%と14.9%にすぎませんでした。

参照:The Sustainable Development Goals Report 2019

再生可能エネルギー

2019年、新たに追加された再生可能エネルギー発電容量(大規模水力を除く)は、2018年よりも20GW多い184ギガワットとなり、過去最高となりました。

その内訳は、新規の太陽光発電システムが118GW、風力発電機が61GWでした。

2019年の設備投資額は、太陽光が3%減の1,311億ドル、風力が6%増の1,382億ドルとなり、2010年以降、投資額で風力が太陽光を上回ったのは初めてです。

開発途上国は、自然エネルギーへの投資において、引き続き先進国を上回っています。

2019年の投資額は、先進国の1,300億ドルに対し、開発途上国は1,522億ドルとなりました。

参照:Goal 9: Build resilient infrastructure, promote sustainable industrialization and foster innovation

レジリエント

インフラを整備することは重要ですが、ただ整備するだけではダメです。

なぜなら、気候変動なども相まって世界的に自然災害が増加しつつあり、道路、電力、水道などのインフラを無傷で守ることはもはや不可能だからです。

インフラを整備しても、自然災害により崩壊してしまい、もう一度整備する際に、最初に整備した際と同じような時間と費用がかかっているようでは、それは持続可能とは言えないからです。

ですから、トラブルが起きても早く復旧ができるしなやか(レジリエント)なインフラづくりが求められています。

レジリエントなインフラづくりがいかに重要であるかは、2011年に東日本大震災を経験した日本なら痛いほどわかると思います。

まとめ

以上がSDGsの9番目の目標「産業と技術革新の基盤をつくろう」の解説です。

SDGsで掲げている貧困問題にしろ、安全な水の利用にしろ、すべての人に教育や健康・福祉を提供するにしろ、その国の経済発展が大きなカギを握っているのです。

ですから、貧しい国に住む人たちが貧しさから脱却するためには経済発展が不可欠であり、経済発展のための土台作りとしてインフラがとても重要なんです。

そして、自由にインターネットにアクセスして情報を得られる立場にある私たちが、サステナブルな世界を目指す一員として何ができるのかを考えていくことが、今求められているんだろうと思います。

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この記事を書いた人

持続可能な社会の実現を目指す300人以上の生活者や企業が集まる「サステラコミュニティ」運営。生まれも育ちも神奈川県横浜市。現在は鎌倉市在住。2018年にWEBメディアの会社を起業。フォロワー9万人のInstagramを中心にSDGs、地球温暖化、エシカル消費などの情報を発信しています。

【プロフィール詳細】
https://susterra.net/ryu/

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