生分解性プラスチックとは?特徴やデメリットについて解説

海洋プラスチックゴミが問題視されている昨今、日本でもレジ袋が有料化したりして、何かと注目されることが多い生分解性プラスチック。

買い物をしているとき、あるいはニュースなどで「生分解性プラスチック」という言葉を見たり聞いたりする機会が増えましたよね。

しかし、生分解性プラスチックが一体どんなプラスチックなのか、いまいち理解していないという方も多いのではないでしょうか。

というわけで、本記事では生分解性プラスチックについて詳しく解説していきます。

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生分解性プラスチックとは

生分解性プラスチックは、自然界に存在する微生物の働きによって分解し、最終的に二酸化炭素と水に変化をする性質を持つプラスチックです。

よくバイオマスプラスチックと混同されがちですが、バイオプラスチックは石油由来なのか生物由来なのかという「原料」に着目したものであり、生分解性プラスチックはあくまで”分解されるかどうか”という「機能」面にフォーカスしたプラスチックです。

つまり、原料が何であっても生分解性を有していればそれは生分解性プラスチックとなります。

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生分解性の基準

生分解性というのは非常にあいまいな言葉です。

なぜなら、石油由来のプラスチックも微生物によって分解しないわけではないからです。

ただ、分解までにかかる年月が長いという話です。

ですから、いわゆる「生分解性プラスチック」と呼ばれるものには、生分解されるまでにかかる年月に一定の基準があります。

日本バイオプラスチック協会によると、生分解性の基準として「3カ月で6割以上が分解」と定義しています。

WWFによると、石油由来のペットボトルの場合400年かかると言われています。

メリット

プラスチックがしっかり回収され、リサイクルされる、という循環が作られればなんの問題もありません。

しかし実際には、プラスチックゴミがリサイクルされる割合は非常に少ないです。

プラスチックにも種類があって、リサイクルできるものとそうでないものをしっかり人の手で分別をする必要があります。

この分別作業を、人件費の安い国でやるために、日本を含む先進国は海外に輸出をしているのです。

輸出先は長年にわたって中国でしたが、近年ゴミの受け入れを取りやめたため、今は東南アジアに輸出されています。

そして先進国から送られてくるプラスチックゴミの量に対して分別が追いつかず、ゴミの山が作られ、海に漂流してしまっているのが現実です。

要するに、プラスチックは「海に流される前提」で作られる必要があるのです。

このような世界のリサイクルの現状に鑑みると、海に流されても短い期間で生分解されるプラスチックは現実的な解決策と言えるでしょう。

デメリット

強度が低い

生分解性プラスチックは生分解されることを前提として作られるため、容器としての強度は低いです。

そして強度を高めようとすればするほど、生分解にかかる時間は長くなります。

ですから、例えば釣り糸のようにすぐに消費され捨てられる前提の商品に使用されますが、長く使用することが前提の商品には使用できません。

用途が限られているという点は生分解性プラスチックのデメリットと言えるかもしれません。

環境による

生分解性プラスチックと言っても、生分解されやすい環境と、されにくい環境があります。

環境によって生息する微生物の種類や密度が異なるからです。

微生物が活発に活動する高温多湿な環境でのコンポストであれば、基本的にはどんな生分解性プラスチックでも生分解されます。

しかし、気温が高くない場所、湿気の少ない場所、あるいは水の上だと、生分解されにくいプラスチックがあります。

それこそ海洋プラスチックゴミ問題では海上で生分解がされなければ解決策にはなりえません。

認証ラベル

いくら生分解性プラスチックが使用されているといっても、パッと見では普通のプラスチックと区別がつきません。

ですから、生分解性プラスチックが商品やパッケージ等で使用されている場合、消費者が見分けるための「ラベル」があります。

日本バイオプラスチック協会が審査をして合格した商品に付与される認証ラベルです。

単に生分解性を有するだけのプラスチックは黒色、生分解性を有していてかつバイオ由来の原料が使用されているプラスチックは緑色のラベルです。

企業と商品

実際に生分解性プラスチックを生産している日本企業と、その商品について紹介させていただきます。

カネカ

出典:カネカ生分解性ポリマーGreen Planet™(“PHBH”)

カネカが開発した、100%植物由来で、海水中でも生分解されるカネカ生分解性ポリマーGreen Planet(“PHBH”)。

PHBHは、植物油を原料に微生物により生産されたポリマーです。

自然界に存在する多くの微生物により生分解され、最終的には二酸化炭素と水になります。

土中だけでなく、これまで難しかった海水中での生分解を実現できたのはカネカの強みです。

セブンイレブンのセブンカフェにおいて、PHBHを用いたストローが使用されています。

三菱ケミカル

出典:植物由来の生分解性樹脂「BioPBS™」

三菱ケミカルが開発したBioPBS(バイオPBS)ポリブチレンサクシネート(PBS)は、自然界の土中の微生物の力で水と二酸化炭素に自然に分解される生分解性プラスチックです。

PBSは、一般的な生分解性樹脂の中では高い耐熱性を持ち、繊維などとの相溶性も高いという特徴を有しています。

防虫・防草、地温の確保、土壌の乾燥防止、肥料などの流出防止など多様な効果が得られる「農業用マルチフィルム」などに活用されています。

また、BioPBSを用いたストローは、京急グループ施設やワシントンホテルでも採用されています。

最後に

海洋プラスチックゴミ問題を解決するには、バイオマスや生分解性など、プラスチックの技術革新は不可欠です。

しかし生分解性プラスチックにも、生分解性される環境が限られていること、あまりに生分解性を高めると強度が低下するなど、デメリットもあるわけです。

ですから、バイオプラスチックの技術革新と並行して、そもそも海にプラスチックゴミを流さない「リサイクルシステム」自体も、改めて考える必要があります。

企業と政府、そして商品を選ぶ私たち消費者がともに協力をしてこそ、海洋プラスチックゴミ解決への道筋は見えてくるかもしれません。

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