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ヴィーガンと環境問題は関係大あり?その真相についてお話します

近年、ヴィーガンという生活スタイルは大きな注目を集めています。

その理由は、2015年9月に国連で採択されたSDGsや同年12月にCOP21で採択されたパリ協定と密接な関係があります。

SDGsやパリ協定と聞けば、何となく環境問題に関する国際的な取り決めだな、というのはイメージが沸くと思います(SDGsが扱っているのは環境問題だけではありませんが)。

しかし、その取り組みとヴィーガンにどんな関係があるのか、いまいちピンと来ない人はきっと多いはず。

というわけで、本記事ではヴィーガンと環境問題について解説をさせていただきます。

目次

今の世界情勢

地球が今、地球温暖化の傾向にある、ということを知らない人はいないと思います。

そして、COP21では

「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」

という目標を決め、約200ヵ国が合意をしてパリ協定が成立しました。

また、温暖化の大きな原因となっているのは温室効果ガスの排出ですから、温室効果ガスの排出量も減らしましょう、ということも決めたわけです。

このとき、温暖化対策のために出来ることとして「電気自動車」や「再生可能エネルギー」というキーワードは出てくるんです。

しかし、畜産について触れられることはあまり多くありません。

実は、畜産も多くの温室効果ガスを排出しているのです。

ここでようやくヴィーガンと環境問題が繋がりました。

【関連記事】パリ協定とは?目標や問題点について分かりやすく解説

畜産と地球温暖化

畜産、特に工業畜産は大量の温室効果ガスを排出します。

工業畜産(集約畜産)とは、放牧して育てるのではなく、動物を屋内でケージの中に閉じ込め、機械的に肥料を与えたりして「コスト」や「効率」を最大限に追求した生産方法を指します。

世界で排出される温室効果ガスのうち、実に全体の18%を畜産が占めていると言われています。

18%となると、自動車・飛行機・船舶といった「全ての交通」が排出する温室効果ガスを超える量です。

畜産の温室効果ガスは、牛や豚が食べる飼料の生産・輸送、飼養管理、ふん尿の処理などで排出されます。

あらゆる畜産の中でも圧倒的に温室効果ガスの排出量が多いのが「牛肉」です。

畜産業全体の排出ガスの78%は牛肉生産に起因していると言われています。

カナダ・ダルハウジー大のネーサン・ペルティエ氏によると、牛肉から鶏肉に変えるだけでも、排出ガス量は70パーセント削減できるんだとか。

特に、牛のゲップで出るメタンガスは牛肉生産により排出される温室効果ガスの中でダントツに多いのです。

メタンの地球温暖化係数(GWP: Global Warming Potential)は二酸化炭素の約20倍に相当するとされていることを考慮すれば、反すう動物である牛および緬山羊由来の温室効果ガス排出量が大きなウェイトを占めていることが分かる。

引用:温室効果ガス排出削減問題に主体的に取り組む英国の畜産関係団体~畜産部門から環境への影響緩和をめざして~

牛肉1キロあたり23.1キロの温室効果ガスを排出しますが、そのうち飼料生産が23%、飼料輸送が12%、飼養管理やふん尿処理で11%、そして牛のゲップで出るメタンガスが54%です。

また、毎年家畜から放出されるメタンガスの量は石油約1億4400万トンに匹敵し、これは南アフリカ全体に電力を供給するのに十分な量に相当します。

そして、日本人の一人あたりの肉の年間消費量は、豚肉なら12キロ、牛肉なら6キロ、鶏肉なら13キロと言われています。

これをガソリン排出量に換算すると、豚肉だと約40リットル分、牛肉で約60リットル分、鶏肉で20リットル分に相当します。

お肉と自動車が排出する二酸化炭素について比較をした研究もあります。

世界自然保護基金(WWF:World Wildlife Fund)によってドイツで行われた新しい研究によると、週に一度しか肉を食べないことで、死亡率を下げて、自動車の走行距離750億kmに相当する二酸化炭素の排出量を削減することができるんだとか。

「自動車に乗らずに電車やバスを使おう!」という話は聞くのに、「肉を食べる量を減らそう!」という話はあまり聞きませんよね。

不思議だ・・・。

というより、「もうプラントベース中心の食生活にした方が環境に良いよ」という直接的なメッセージを発信している研究結果もあります。

2016年にイギリス・オックスフォード大学が中心となって行った研究では、ベジタリアンの食事にすると63%、ビーガンの食事にすると70%、温室効果ガスを削減することができると発表しています。

つまり、世界中にベジタリアンやヴィーガンが広まれば、世界の温室効果ガスの排出を3分の2近く削減できるというわけです。

【関連記事】プラントベースとは?実際に食べた商品やお店14選を紹介

【参照】
「温暖化ガス排出食」の王者は牛肉、畜産分野の約80% | AFP BB News
Plant-based diets could save millions of lives and dramatically cut greenhouse gas emissions
Eating less meat to protect the environment
バカにできない?肉の生産で出る温室効果ガス

畜産と森林伐採

畜産は大量の森林伐採にも繋がっています。

現在、地球上で人類が住むことのできる土地の半分が食料生産のために使用されてており、そのうち4分の3以上が家畜生産によって使用されているのです。

家畜を飼育するための場所が必要なだけでなく、家畜が食べるための飼料を生産する耕地も必要になります。

放牧用の牧草地と飼料用作物の栽培地を合わせると、世界の農地の77%が家畜に占められています。

しかも必要な面積に対して生産される栄養が少ない、分かりやすく言えばコスパが悪いのも畜産のデメリットです。

家畜は世界の農地の大半を占めますが、生産されるカロリーは世界の18%、タンパク質は全体の37%にすぎません。

世界最大の牛肉輸出国であるブラジルでは、牛の放牧地と飼料を生産するため、1日で東京ドーム650個分の森が消えています。

熱帯雨林は生物多様性の宝庫であるだけでなく、CO2を吸収する役割を担っていますから、これが減少し続けると地球温暖化にも影響を及ぼします。

【関連記事】生物多様性とは?意味・問題・重要性について解説

【参照】
Livestock’s Long Shadow – FAO

畜産と水

畜産は大量の水を使用します。

畜産がどれだけ水を使用しているかを理解するうえでは「バーチャルウォーター」という考え方が有効です。

バーチャルウォーターとは、農作物・畜産物の生産に要した水の量を、輸出入に伴って売買されたとみなす考え方です。

日本のように食料自給率が低く、多くの食料を輸入に頼っている国では重要な考え方です。

バーチャルウォーター
牛肉 20,600ℓ
豚肉 5,900ℓ
鶏肉 4,500ℓ
パイナップル 752ℓ
生クリーム 711ℓ
そば 667ℓ
555ℓ
牛乳 550ℓ
スイカ 501ℓ

【出典】
仮想水計算機 – 環境省
・東京大学生産技術研究所 沖研究室
UNESCO Waterfootprint

【関連記事】食料自給率とは?上げるには?日本・世界の数字とあわせて解説!

ヴィーガンとSDGs

SDGsでは17個の目標を掲げています。

その中には「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」といった目標が掲げられています。

気候変動は温暖化が一つの原因となっているので、ヴィーガンとの関連性は既にお分かりいただけると思います。

SDGsでは、さらに海の資源についても言及しています。

【関連記事】SDGs(エスディージーズ)とは?17の持続可能な開発目標について解説

海の豊かさ

このテーマに関しては、海洋プラスチック問題についても言及されていますが、「漁獲を効果的に規制」ということにも触れています。

要するに、今人類は魚を無計画に獲り過ぎていて、このままいけば近い将来、海から魚が消滅してしまうから、なんとかしましょうという話です。

魚介類に関してはMSC認証やASC認証といって、持続可能な漁業で獲れた海産物であることを認証する制度がありますが…まだまだ商品数が少ないのが現状です。

なので、海の豊かさを守るために個人レベルで出来ることとしては、「魚を食べる量を減らす」や「MSC/ASC認証ラベルのある商品を買う」といった選択肢になってきます。

ですから、そもそも動物を食べないヴィーガンという生活スタイルはSDGsが掲げる目標にもかなっているのです。

【関連記事】MSC認証(海のエコラベル)とは?意味やメリットを解説!

【関連記事】ASC認証とは?ラベルの意味やメリットを解説!

陸の豊かさ

「陸の豊かさも守ろう」については、直接「牛・豚・鶏肉」について言及しているわけではありません。

ですが、工業畜産が森林破壊の原因の80%を占めるというデータもあったりして、間接的に「森林破壊を阻止する」というSDGsの課題に関係してきそうです。

一環境団体のデータなので、80%という数字を妄信し過ぎるのは考えものですが、工業畜産が森林破壊に繋がっている可能性は高いです。

参照:Greenpeace livestock vision towards 2050

最後に

私の肌感覚ですが、ひと昔前までは動物愛護的な動機、つまり「倫理」的な動機でヴィーガンになる人が多かったように思います。

しかし、2015年以降はSDGsやパリ協定などのグローバル目標が採択されたことで、「環境」を動機としてヴィーガンになる人が加わり、一気にヴィーガン人口が増えたように思います。

また、ビリー・アイリッシュやアリアナ・グランデなど、若者から絶大な支持を集めるインフルエンサーがヴィーガンであることを公言していることから、若者の間ではある種の「ファッション」的な動機でヴィーガンになる人が増えている気がします。

とはいえ、当サイトではヴィーガンという生活スタイルを他人に強く推奨するようなことはしません。

異なる価値観を尊重し合うことは持続可能な社会を実現するうえで重要な姿勢だと思うからです。

何を食べて何を着るのか、という個人の選択は尊重されるべきです。

それに、何も「お肉を食べない」「レザー・毛皮を着ない」だけがサステナビリティに貢献できる行動ではありませんからね。

ただし、地球に生きる人間として、持続可能な社会の実現のために自分には何ができるのか、ということは是非皆さん考えていただきたいです。

それでは!

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この記事を書いた人

持続可能な社会の実現を目指す300人以上の生活者や企業が集まる「サステラコミュニティ」運営。生まれも育ちも神奈川県横浜市。現在は鎌倉市在住。2018年にWEBメディアの会社を起業。フォロワー9万人のInstagramを中心にSDGs、地球温暖化、エシカル消費などの情報を発信しています。

【プロフィール詳細】
https://susterra.net/ryu/

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