生物多様性とは?意味・問題・重要性について解説

生物多様性とは、数多くの種の生命たちがこの地球上に存在している状態を意味します。

地球上には、私たち人間だけでなく、犬や猫などの哺乳類、蝶やハチなどの昆虫、草や花などの植物などあらゆる種の生物が存在しています。

この生物多様性こそが、地球という惑星の最大の特徴と言っても過言ではありません。

しかし昨今、人類の活動によって、地球上の生物多様性は失われ続けています。

3つの多様性

生物多様性は、大きく分けて

  • 生態系の多様性
  • 遺伝子の多様性
  • 遺伝子の多様性

の3種類に分類することが出来ます。

生態系の多様性

大気、水、土壌などの環境要素が相互に関わりながら、海、河川、森林、山、湿原といった、1つのシステムとして機能する環境のまとまりが多様に存在することを指します。

種の多様性

動植物から菌類、バクテリアに至るまで様々な生きものが存在し、気候などの環境条件や生きもの同士によって多種多様な生きものが育まれることを指します。

遺伝子の多様性

同じ種であっても地域ごとに見られる個体の形や模様、生態が異なるなど、遺伝子によって多様な個性があることを指します。

そして重要なのは、これらの多様性が相互に関わり合いながら、生態系を維持しているということです。

出典:Convention on Biological Diversity

現状

WWFの2020年の報告によると、世界の生物多様性は過去50年で68% 喪失したと言われています。

特にサンゴ類は近年急激に減少し、ソテツ類はすでに深刻な状況にあります。

出典:生きている地球レポート

レッドリスト

レッドリストとは絶滅のおそれのある野生生物の種のリストです。

国際自然保護連合(IUCN)が作成・報告をしています。

IUCNが発表している最新のレッドリストによると、38,500種以上の生物が絶滅の危機にあると言われています。

これは、全評価種の27%以上に相当する数値です。

絶滅の危機にある割合
  • 両生類:41%
  • 哺乳類:26%
  • 針葉樹:34%
  • 鳥類:14%
  • サメ・エイ類:37%
  • 造礁サンゴ類:33%
  • 甲殻類の一部:28%

出典:絶滅危惧種レッドリスト – IUCN Red List of Threatened Species

プラネタリーバウンダリー

人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念をプラネタリーバウンダリーと呼びます。

スウェーデンの環境学者ヨハン・ロックストロームによって提唱されました。

プラネタリーバウンダリーでは安全域やレベルを示す限界値を有する9つのプロセスを定め、人間活動によって限界値を超えた場合、地球環境に不可逆的な変化が急激に起こる可能性があるとしています。

9つのプロセスとは以下の通りです。

  • 気候変動
  • 生物多様性
  • 生物地球科学的循環
  • 海洋酸性化
  • 土地利用の変化
  • 淡水
  • オゾンホール
  • 大気エアロゾル粒子
  • 化学物質による汚染

海洋酸性化に関しては、まだまだ限界値を超えていないとされています。

オゾンホールに関しては、一時危険な水域までいきましたが、1987年のモントリオール議定書以降、世界的なフロン規制がはじまり、安全水域まで戻すことに成功しました。

それでは生物多様性はというと、実は2009年時点で限界値を超えたと言われています。

しかも絶滅した生物は復活させることができないため、他の8つのプロセスとは異なり、取り返しがつかない点も特筆すべき点です。

参照:Planetary boundaries

野生生物の割合

地球上に存在する野生生物のバイオマスは、人類が繁栄し始めてから徐々に減り続けています。

バイオマスとは、生態学で、特定の時点においてある空間に存在する生物の量を、物質の量として表現したもの。

今からおよそ約10万年前、地球上の野生動物のバイオマスは2000万トンもありました。

しかし、徐々に繁栄を始めた人類が大型の哺乳類を狩り尽くして以降、1万年前までに野生動物は1500万トンにまで減少。

1900年には10万年前の半分になってしまい、現代ではたった300万トン、割合にして10万年前のたった15%まで減ってしまっています。

現在、地球に生息している哺乳類の大部分が人間にまつわる動物が占めています。

人間は34%、残りの62%は家畜やペットが占めています。

野生動物はたった4%しか地球上に存在しません。

問題点

生態系は非常に微妙なバランスを保ちながら維持されています。

どれか一つでも問題が生じれば、それに連鎖するように、また別の問題を引き起こす可能性があります。

例えばサンゴ礁が良い例です。

サンゴ礁は一見、私たち人間にとってあまり関係がない生物のように思えます。

しかしサンゴ礁は魚が産卵をしたり稚魚が育ったりする場所ですから、サンゴがなくなれば魚の個体数に影響が出ます。

それだけでなく、サンゴの体内で共生している褐虫藻は海中のCO2によって光合成をおこなうため、サンゴ礁が減少すると海のCO2濃度のバランスが崩れる原因にもなります。

海水は地上の⼆酸化炭素の31%を吸収しているため、サンゴが絶滅すれば、間違いなく地上の二酸化炭素濃度にも影響が出ます。

このように、サンゴが絶滅することでどのような影響が出るかがある程度推測できるのはまだいい方です。

生物多様性が崩壊することの恐ろしさは、どの生物が絶滅したら、どのような影響をもたらすかが分からないことだらけだということです。

【関連記事】サンゴの白化現象とは?珊瑚礁と地球温暖化の関係について解説

できること

生物多様性が危機的な状況にあることはお分かりいただけたと思います。

そのうえで、一体私たちには何が出来るのでしょうか。

エシカル消費

生物多様性にしろ、地球温暖化にしろ、この地球が抱える多くの問題は大量生産・大量消費という経済システムによってもたらされました。

であるならば、私たち消費者が、従来の「何も考えずに買い物をする」というあり方を変える必要があります。

例えば食べ物や洋服をつくる際、生産を効率化するために「農薬」が使われます。

しかし農薬は土壌にいる微生物を殺し、土地を弱らせてしまいます。

ですから、農薬が使われていないオーガニックを選ぶことは、土壌の肥沃さを維持することに貢献できます。

お肉を減らす

畜産は大量の森林伐採にも繋がっています。

現在、家畜は地球上の全陸地の30%を使用しています。

畜産は牧草地だけでなく、家畜が食べるための飼料を生産する耕地が必要です。

世界最大の牛肉輸出国であるブラジルでは、牛の放牧地と飼料を生産するため、1日で東京ドーム650個分の森が消えています。

熱帯雨林は生物多様性の宝庫であるだけでなく、CO2を吸収する役割を担っていますから、これが減少し続けると地球温暖化にも影響を及ぼします。

地球上のアマゾン熱帯雨林の60%がブラジルにあります。

熱帯林が地球の陸地に占める割合は7%に過ぎませんが、熱帯林に生息する生物は、地球上に生存している生物の50〜80%になるといわれています。

この現状に危機感を覚えた人は、お肉を食べる量を減らすことがとても有効です。

人がお肉を求めるからこそ、肉の生産量は増えるのです。

畜産による森林伐採に歯止めをかけるには、肉の需要を減らすしかありません。

【関連記事】熱帯雨林とは?生態系・持続可能性・私たちの役割

参照:熱帯林生態系の構造解析

情報発信

情報発信は、お金をかけることなく出来る効果的な手段です。

例えばSNS、ブログ、YouTubeなどで、生物多様性について現状を発信してみましょう。

多くの人が生物多様性について無関心であるということが、生物多様性が損なわれ続けている最大の原因です。

関心を持つ人を増やすことは、生物多様性を守るうえで非常に重要です。

もちろんこの記事をシェアして頂いてもOKです。

生物多様性には問題があるということを一人でも多くの人に知ってもらいましょう!

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