ヴィーガンレザーとは、動物性の皮革を使わず、天然由来の原料を使い皮革を再現したレザーのことです。
脱炭素やSDGsが注目される昨今、畜産業の環境負荷の大きさが問題視され、ヴィーガンというライフスタイルが注目されています。
食生活以外にも、動物実験された商品を買わないとか、動物性分が含まれる化粧品を買わないといったように、あらゆる動物の搾取を極力減らす生活様式がヴィーガンなのです。
そして畜産業と同じく、環境負荷の大きな産業がファッション業界であること、ファッション業界ではファーや革製品など多くの搾取が行われてきたことから、いまヴィーガンレザーが注目されているというわけです。
フェイクレザーとの違い
ブランドによって合皮や人工皮革でもヴィーガンと呼んでいる場合があります。
ただこれらは化学物質が使用され、化石燃料を使い、分解に時間がかかります。
近年、ヴィーガンレザーが注目されている背景には、動物の搾取をやめるというだけでなく、畜産による環境負荷の問題も大きな理由の一つ。
ということを考えると、やはり環境負荷の大きな合皮や人工皮革をヴィーガンレザーと定義することに関して、個人的には懐疑的です。
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ヴィーガンレザーの種類
一口にヴィーガンレザーといっても
- 樹皮
- キノコ
- 果物
- サボテン
など様々な原料を使用した商品が展開されています。
Mylo(キノコ)
きのこ由来のサステナブルなバイオレザーが「Mylo(マイロ)」です。
再生可能なきのこ類の地下根系の菌糸体マイセリウム(菌糸の集合体)を成長させ作られた人工レザー。
摩擦などの衝撃にも強く、優れた耐久性を持ち合わせており、動物性レザーに劣らない品質を実現。
動物性のレザーの生産には長い年月や、畜産業による温室効果ガスの排出や、水などの大量の資源を必要としますが、菌糸体マイセリウムを使用したマイロは14日間で生産でき、天然繊維であるマイロは石油原料の化学繊維を必要としないなど、環境負荷を抑えた持続可能な素材として注目されています。
アディダスのスタンスミスやステラマッカートニーなどで採用されています。
Pinatex(パイナップルの葉)
ピニャテックスは、パイナップルの廃葉から抽出したセルロース繊維を原料とする天然素材の不織布です。
パイナップル産業では、毎年4万トンのパイナップルの葉が廃棄されており、これを農家から買い取り有効活用して作られている素材です。
1平方メートルのピニャテックスを作るには、パイナップル16本分にあたる約480枚の葉が必要です。
パイナップル農家は、これまで廃棄処分するしかなかった葉を買い取ってもらうことで、副収入を得ることができます。
また、繊維を取り除いた後に残るバイオマスは、肥料として使用されています。
地球にも人にも優しい素材、それがピニャテックスです。
Desserto(サボテン)
サボテンから生まれるカクタスレザーのDesserto(デサート)は、メキシコ出身のアドリアンとマルテの2人が立ち上げたアドリアーノ・ディ・マルティ社の製品です。
およそ2年間の研究開発を経て、2019年にデサート®が完成しました。
サボテンは、多年生植物なので毎年植え替えることなく、収穫後に自生します。
また、灌漑施設も不要なため水資源の大幅節約にも貢献。
天然の炭素吸収源としても知られています。
VEGEA(ぶどう)
ブドウの絞りかすから作られたイタリア生まれのバイオレザーVEGEA(ベジェア)。
ワインレザーやグレープレザーとも呼ばれたりします。
ぶどうの搾りかすと植物油、繊維を配合して作られ、天然由来の100%再生可能なサステナブル素材です。
H&Mやベントレーといった企業に採用されるなど、世界から注目を集めている素材です。
Malai(ココナッツ)
Malaiは、インドのココナッツ農業の廃棄ココナッツウォーターから作られるサステナブルなアニマルフリーレザーです。
廃棄ココナッツウォーターを収集し、バクテリアのセルロース精製をおこなうことでレザーが作られます。
通常ココナッツウォーターは農業廃棄物となって排水路に流されますが、水質汚染や土壌の酸性化に繋がる可能性があります。
ですから、ココナッツウォーターを回収して再利用することで、廃棄物を削減し、環境負荷の低減に繋がります。
数年後、経年劣化にて製品の寿命がきたら、コンポストや土に埋めて安全に土に還すことができます。
商品
LOVST TOKYO
LOVST TOKYOは、廃棄リンゴから生まれた「アップルレザー」を始め、野菜やフルーツをアップサイクリングした植物由来のプロダクトを展開するライフスタイルブランド。
注目は何と言っても廃棄されていたリンゴをアップサイクルして作られたイタリアンアップルレザー 「アップルスキン」を用いた機能的かつスタイリッシュなヴィーガンレザーアイテム。
また、単にサステナブルに取り組むブランドではなく、社会問題に対して何かしらの気づきを得たユーザーが抱きがちな本質的な課題を「ポジティブな罪悪感(Positive Guilty)」と提唱しブランドを展開。
罪悪感に寄り添うことで、社会にとっての好循環(巡りの良い暮らし)を生み出すことを目指している。
そして、ブランド名には、「愛(LOve)を持ってヴィーガン/多様性(Vegan/Variety)な考え方を一番(1ST)に尊重できる文化をTOKYO(東京)から発信していく」というメッセージが込められている。
最後に
実は動物性の革製品であっても、本来廃棄されていたはずの家畜の皮が使われるケースが多いです。
ですから、畜産動物の命をできる限り有効活用しているという点において、必ずしも動物性の革製品は環境に悪いわけではない…。
SNSやネットニュースを見ていると、たまぁにこんな意見も見受けられます。
ただ、そもそも畜産は現状で陸地の30%を使用しており、今後人口が増え続けることを考えると、たんぱく質を畜産物からとりつづけることは現実的ではありません。
ですから、今まさに「代替肉」の市場が伸び続けており、今後は畜産の市場は低下していくことが予想されます。
そう考えると、たとえ家畜の皮が有効活用されていたとしても、今後も安定供給し続けることが出来ないことを考えれば、やっぱり動物性のレザーは持続可能とは言えません。
ヴィーガンレザーの市場は今まさに黎明期にあると言っても過言ではないので、レザーとしてのクオリティもこれから上昇し続けることになるでしょう。
今後もヴィーガンレザー市場から目が離せません。
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