2022年6月20日、サステナブル・ライフスタイル研究会に参加する企業5社(One Planet Cafe、花王、サントリー、LION、Harch)とサステラの対話セッションを実施しました。
企業と生活者がともに話し合い、持続可能なライフスタイルを模索する会です。
対話の場を設けて頂いたOne Planet Cafe様には心から感謝申し上げたいと思います。
そして生活者として、サステラコミュニティから10名が参加をしました。
コミュニティメンバーの皆さんは、企業さんを前にしても臆することなく積極的に自分の意見を述べておられ、対話セッションが終わったら電車内ですぐにレポートをまとめコミュニティのSlackにアップをする方までいて、なんて頼もしい方たちなんだと感じている今日この頃です。
ちなみに私RYUはというと、主にパーム油とRSPOについて問題提起をさせていただきました!
地球環境に関する問題にも、ある程度解決の道筋がたっているものから、全く先行き不透明な問題まで様々です。
そしてパーム油に関しては、問題解決の道筋が見えないまま人類は熱帯雨林を伐採し続けており、生物多様性や地球温暖化などあらゆる観点から見て非常に大きな問題だと考えています。
ですから、大企業様とお話が出来る今回のような機会にはぜひ、RSPOについて話を聞いてみたいと思っておりました。
パーム油とRSPOについて
ところで、昨日は対話セッションが終わったあとにサステラコミュニティの人たちとインド料理屋で軽い打ち上げをしたのですが、その中で
「実はRSPOについて詳しく知らなかった」
という方もいたので、ここで改めてお話させていただきます。
「そんなの知ってるぜ」という方は読み飛ばしちゃってください!
スーパーやコンビニなどで50%以上の商品に含まれ、国民1人あたり年間5kgを消費しているパーム油。
世界で最も使用されている植物油がパーム油なのです。
「え?そんなに消費してたなんて知らなかった!」
と思う方もいるかもしれません。
なぜパーム油について知らない人がいるのかといえば、パッケージには「パーム油」と記載されていないからです。
植物油、植物油脂、食用植物油脂、マーガリン、ショートニング、グリセリン、オレイン酸、脂肪酸などなど…。
まぁ色んな成分名に姿を変えて記載されています。
知らないうちにパーム油を食べたり使用したりしていることがほとんど、というわけです。
しかもパーム油を生産できるのは赤道直下の熱帯地域だけで、インドネシアとマレーシアの2か国だけで世界の87%が生産されています。
にもかかわらず、世界の人口は増え続け、パーム油の需要は伸び続けます。
パーム油の生産量は2010年~2030年の20年間でおよそ3倍に増えることが見込まれています。
一部の限られた地域でしか生産できず、世界で最も使用されていて、今後も需要が増え続ける。
これらの悪い条件がそろってしまい、パーム油を生産するためのアブラヤシ農園開発によって、熱帯雨林がどんどん伐採されていっているのです。
なんと、スマトラ島の森林の56%、ボルネオの熱帯雨林の40%が消失してしまいました。
多くの人はこの話を聞いたら
「じゃあパーム油を今すぐなくそう!」
と思うかもしれないのですが、パーム油問題はそう単純ではありません。
そもそもパーム油は、他の植物油に比べて生産効率が非常に高いからこそ、世界中で使われているのです。
パーム油は他の植物油と比べると単位面積当たり5~8倍の油が収穫することができます。
確かにパーム油は森林伐採に繋がりますが、パーム油をやめて大豆油や菜種油といった他の植物油に切り替えようとすると、さらに多くの森林伐採に繋がるのです。
ですから、パーム油を使うにしても、無計画な伐採をするのではなく、熱帯雨林の持続可能性に配慮して生産しよう、ということで世界自然保護基金(WWF)を筆頭に設立されたのがRSPO認証なのです。
余談ですが、日本に籍を置く企業として一番最初にRSPOに加盟したのが、私が大好きなメーカーである「サラヤ」です。
まぁRSPOといっても、多くの国の多くの企業が参加する仕組みですから、多くの利害が衝突するわけで、どうしても意思決定に時間がかかるわけですが、そうこうしている間にも熱帯雨林は伐採され続けます。
サラヤさんはそのことを分かっているので、RSPOに参加すると同時に、売上の1%を熱帯雨林の保全活動に寄付をし、積極的に熱帯雨林を守っているんですよね。
「RSPO+1%寄付」は本当に良い仕組みだよなぁと思ってます。
対話セッションを終えて
今回対話セッションで企業様とお話をする中で、花王さんやLIONさんもパーム油については完全に無関心なわけではなく、むしろパーム油のうち50~90%くらいは認証油を使っているという話を聞くことが出来たのは収穫でした。
一方で、実はサステナブルな取り組みはしているんだけど、それが全く消費者に伝わっていないということは大きな課題だと感じました。
まさにRSPOが良い例です。
「パーム油に関する取り組み」というスライドの資料を見たり、社員様のお話を聞いたり、企業のホームページを見に行けば、「あぁ確かに認証油を使っているんだな」と知ることは出来ます。
でも、問題の本質は「そこまでしないと分からない」ことなんじゃないかなと。
例え100%認証油じゃなくても、一部だけ使用していることを証明する「MIXED」というラベルを貼ることは出来るわけです。
ラベルがあれば、消費者はパッケージを手に取るだけでエシカルな商品を見分けることが可能です。
わざわざホームページを見に行ったりお客様センターに電話をかけて確認を取る必要もありません。
それこそ、日清食品さんは最近になってRSPO MIXEDの認証ラベルを貼るようになりました。
こうしてくれれば、私のようにRSPOの存在を知っている生活者は
「どうせカップラーメンを食べるならRSPOのラベルのあるカップヌードルにするか」
という選択ができるし、エシカルには無関心だけどカップヌードルは好きだという人たちも、カップヌードルを買えば知らぬ間に熱帯雨林に配慮することが出来ているわけです。
日清食品さんのような大手食品メーカーに出来るなら、きっと他の大企業にだって出来ないことはないはず!
というわけで、私は
「50%だけでも認証油を使っているのなら、その50%分は熱帯雨林の持続可能性に貢献しているのだから、たとえ100%でなくともラベルはあった方がいい」
という意見をお伝えしました。
ただ実際問題、昨日参加して頂いた企業様が使用しているのは、国内で消費されている全パーム油のほんの一部に過ぎません。
パーム油を使用している産業のうち、80%は食品メーカーだからです。
でも現状は、コンビニに行ってRSPOの認証ラベルがあるのはカップヌードルくらいです。
なので、企業の対話セッションでは企業と生活者が本音で語りあうことが出来た非常に有意義な会であったと同時に、この会を1回やっただけではまだまだ問題解決には程遠いのかなと。
ですから、企業様との対話はこれからもやっていきたいですし、出来るならもっと多くの企業を巻き込んで出来たらいいなーなんて思ってます。
最後に
私は生活者の立場として対話セッションに参加をしたので、やはりどうしても企業に対して批判的なスタンスになってしまいがちです。
ですが、企業は消費者が望まないものを作ることはありません。
いつだって消費者が欲しがるものを作るのが営利企業です。
例えばサステナブルという文脈で悪の代名詞として語られがちな「ファストファッション」だって、消費者が安い洋服を求め、そして実際に売れているから作っているだけのことです。
消費者が真に、社会や環境にとって悪影響を及ぼす商品を望んでいないのなら、その商品はすでに市場から淘汰されているはずです。
ですから、企業と消費者、どちらが悪いではなく、どちらも歩み寄って持続可能性を追求していく必要があります。
大量生産・大量消費が始まった産業革命以降、この世界に存在する多くの問題は「買い物」によって生み出されました。
であるならば、買い物のあり方を変えることができれば、問題を解決へと導くことは出来るはずです。
ローマは一日にして成らず。
ですが今回、企業と生活者が話し合うことができたのは、持続可能な社会を実現するための、千里の道の一歩にはなったんじゃないだろうかと感じています。
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