Kesouのパンプスがサステナブルだけでなく品質も重視した理由

何かと地球環境というテーマがクローズアップされることの多い昨今。

なかでも世界で2番目に地球環境を汚染しているファッション業界は今、大きな変化を迫られています。

ですから、ここ最近はサステナブルをうたうファッションアイテムが数多く登場しています。

私も3足ほどサステナブル素材が使われたスニーカーを所有しています。

ただ一方で、フォロワーさんからよく、

「サステナブルなパンプスはありませんか?」

という質問を受けることが多かったのですが、サステナブル素材が使われたパンプスってあんまりないなぁと思っていたんです。

そんな中、偶然にもKesouさんからお声がけを頂き、詳しくお話を伺うことが出来る機会が出来ました。

Kesouとは一体どのようなブランドなのか?

パンプスはどのようにサステナブルなのか?

そのあたりを聞いてきたので、サステナブルなパンプスをお探しの方はぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

事業内容

左から長野さん、伊藤さん

——貴社の事業内容について教えてください

長野さん:お客さまの困りごとと地球にとっての困りごとの両方を解決することで、しあわせを広げたいという想いでサステナブランドとして誕生しました。

まずは第1弾としてパンプスを販売しております。

今後はサステナブルブランドとしてお客さまへさまざまな選択肢を提供していきたいと考えています。

サステナブルな取り組み

——貴社がどのようにサステナビリティに取り組んでいるのかを教えてください。

長野さん:環境にやさしい素材を使用しているという点が挙げられます。

  • ペットボトル再生糸のアッパー
  • 天然ゴム発砲素材のアウトソール
  • リサイクルポリウエタンのインソール

といったように、パンプスの主要素材はすべてサステナブル素材で構成されています。

素材となっているペットボトルも自社で回収をしたものです。

昨年は北千住マルイに回収機を設置し、お客さまにご協力いただき年間で70000本回収いたしました。

梱包もリサイクル素材で、発送の際にも無駄なごみを出さないよう、靴箱もなくしました。

また、販売にあたっては受注生産を導入しています。

お客様からオーダーを頂いてから、生産がスタートします。

1ヵ月半ほどお待たせしてしまうことになるのですが、過剰生産をせず、無駄な廃棄を減らすことが出来ます。

さらに、廃棄0を目指した取り組みにも注力しています。

返品・交換無料・ムダのない梱包でお届けしたり、CO2排出量を算出・削減を目指しております。

原材料調達から廃棄までに発生するCO2の排出量を算出しています。

Kesou PumpsのCO2排出量は、3.57kg/CO2です。

従来のパンプスから約3kg/CO2削減しました。*1

(*1グループ会社製品比)

——店舗では販売をしていないのですか?

長野さん:リアルな店舗では販売しておらず、オンラインストアでのご注文をいただいております。

2022年3月15日(火)~3月21日(月)、有楽町マルイにて期間限定ショップをオープンする予定です。

今後も実際にお試しいただける場をつくりたいと思っています。

サステナブルを取り入れた経緯

——事業にサステナブルを取り入れるようになった経緯を教えてください。

長野さん:ブランドの立ち上げが、お客さまの困りごとと地球にとっての困りごとを解決したい、という思いからスタートしています。

使うことなく多くのものを捨てなければいけない実態を考えた時に、まずは、私たち作り手がたくさん買っていただきたくて、大量に作り大量に廃棄してしまっていた現状が根本ではないかと思いました。

また、廃棄プラスチック削減の取組みもこれからの地球にとって取り組むべき重要項目だと考えました。

そしてペットボトルのリサイクル素材を用いることで、廃棄プラスチック問題の解決に繋がるのでは、という想いからパンプスが誕生した背景です。

事業とサステナブルを両立するうえでの課題

——事業とSDGsを両立するうえで課題に感じていることはありますか?

長野さん:事業としても持続的に成立させることが大事だと思っています。

つまり、地球にとっての困りごとを解決するだけでなく、商品自体の魅力も重視しています。

サステナブルな部分は、企業責任、作る側の努力なのかな、と思っています。

第1弾となるパンプスは2000人のお客さまにアンケートをとった結果、7割の方がパンプスの履き心地に満足できていませんでした、

こういったお客さまが感じる課題を解決するために

  • 「足がキレイに見えるデザイン」
  • 「痛くない」

というパンプスづくりを目指しています。

サイズ展開も女性のほぼ100%サイズをカバーするために16サイズ展開をしています。

サステナブル素材で作っても、商品として魅力がなく使われず捨てられてしまうと意味がありません。

ですから、サステナブルを前面に押し出すというよりは、まずはお客様にとって買いたいと思ってもらえる商品づくりということは忘れないようにしたいです。

伊藤さん:長野が申し上げた通り「商品としての魅力」という部分が大前提にあります。

その商品がお客様にとって価値あるものでなければ売れないですし、売れなければ無駄な廃棄をすることになってしまいます。

一方で、日本でもサステナビリティや環境配慮という意識が広まってきています。

ですから、商品がもっているサステナビリティの魅力も合わせて訴求していくことはやはり大事だと思います。

実はパンプスの販売にあたってクラウドファンディングを実施したのも、商品のサステナブルな魅力を伝えることが理由だったりします。

クラウドファンディングを見に来た方は、なぜこの商品が作られたのか、どうやって作られたのか、といった背景を知ろうとする方が多いです。

実際、クラウドファンディングの支援者の方からも、履き心地とサステナブルな部分に共感をして買った、というコメントが寄せられたりもしました。

また、サステナブル素材を使っている以上、どうしても原価が高くなってしまいます。

ですから、背景などを知ってもらわずに、普通のパンプスとして売ってしまうと「なぜこんなに高いの?」という疑問を持たれてしまいます。

逆に背景を知って頂いているからこそ、価格の壁を超えて頂いているのかなと思います。

だからこそ、商品がどれだけ環境に配慮しているかなどを知っていただき、共感をしてもらったうえで選ばれる商品にしていきたい、という想いはあります。

商品を作るうえで苦労した点

——パンプスをつくるうえで一番苦労した点は?

伊藤さん:アウトソールやインソールに使用するサステナブル素材を探すことが一番苦労しました。

実際のところ、日本はペットボトルのリサイクルが非常に進んでいる国です。

ユニフォーム等でもペットボトルのリサイクル素材が使われていたりします。

なので、アッパーで使われているペットボトルのリサイクル素材自体は、比較的メジャーな素材です。

ただ、アウトソールやインソールの素材の選択肢はそう多くありません。

サステナブルな素材で新しい技術で履き心地を高めていくバランスがとても難しかったです。

アウトソールに天然ゴムをそのまま使おうとすると、天然ゴムはそもそも滑りやすかったり、重かったりして、そのまま使うと履き心地が良くないという問題がありました。

なので、アウトソールでは天然ゴムを発泡させて軽くさせる工夫をしました。

私生活でのアクション

——お二人はプライベートでサステナブルな取り組みはされていますか?

長野さん:ペットボトルの飲み物を買わずにstojo(折り畳みマイカップ)を持ち歩いたり、シリコンラップを使ったりしています。

また、Kesou以外の、サステナブルブランドのシューズなども買いました。

こういう商品を自分で履いてみて、履き心地の良さを実感しています。

自分で履いて感じたからこそ、サステナビリティだけでなく、商品自体の魅力も大事なんだなと思っています。

ほかにも、自分の生活スタイルの中で出来るサステナブルな選択肢への切り替え、というのは意識的に行っています。

伊藤さん:例えば最近では化粧品でもパッケージが環境に配慮されている商品などもあったりして、サステナブルな選択肢が増えています。

サステナブルな商品がある場合には、できるだけそちらを選ぶようにしています。

あと、今度ミツロウラップを買いたいなと思っています。

今後の展望

——Kesouの今後の展望を教えてください。

長野さん:商品を作った以上は長く履いてもらうことが最もサステナブルなので、Kesou Pumpsを長く履いていただくための修理サービスを提供していきたいと考えています。

お客さまの困りごとと地球にとっての困りごとを解決すべく新しい商品の開発もしていきたいです。

また、共感いただける方と取り組みを一緒に発信して、サステナブルな選択がもっと気軽で当たり前な世の中を目指していきたいと考えています。

例えば現在、Instagramで「Kesouプロジェクト」というものを実施しています。

一緒に商品づくりをしていただける方を募っており、春に販売予定の新色を決めるカラーについてお客さまにお伺いしながら進めています。

あるいは、Kesouは「ライフスタイルブランド」なので、パンプス以外の新しいアイテムもつくっていきたいと考えています。

伊藤さん:理想としてはすべての商品を循環させたいと思っています。

履き古したKesouのパンプスをお預かりして、また素材に戻して、新たな靴をつくる、といったような循環です。

一切の廃棄を出すことなく循環させていきたい、という展望を持っています。

また、日本はペットボトルの回収率が高く、リサイクルも非常に進んでいます。

ペットボトルの蓋を外して、ラベルをはがして、洗う、ということを皆さん当たり前にやっていると思います。

これは世界的に見ても素晴らしいことだと思います。

ただ、「自分がサステナブルなことをしている」という意識がある人が少ないような気がしています。

なにかサステナブルが遠い世界の話のように思われている方も多いと思います。

ペットボトルのリサイクルや、ゴミの分別など、日ごろやっていることもサステナブルなんだよ、ということを伝えていきながら、これまでサステナブルに興味がなかった、あるいは少しだけ興味があった、といった方たちと一緒にブランドを大きくしていけたらなと思っています。

取材を終えて

今回お話を伺って、サステナブルを追求するだけでなく、商品としてのクオリティを高めることも注力している、という観点は非常に重要だなと思いました。

サステナブルな商品って、確かに環境には配慮されているけど、「商品の質は微妙」とか「値段高すぎない?」といった商品が多かったりします。

何よりファッション業界は洋服の大量生産・大量廃棄が問題になっているわけですから、いくら環境に配慮した素材が使われていても、消費者からの支持が得られなければ、結局は廃棄になってしまい、業界が抱える根本的な問題解決にはなりません。

その点、Kesouはしっかりと消費者がパンプスに対して抱いている問題を丁寧にリサーチしたうえで商品設計がされていますし、サステナブルファッションアイテムとしては手の届きやすい価格を実現しています。

一方でアッパーからソールに至るまで素材のサステナビリティに関しても全く妥協をしていません。

商品の魅力とサステナビリティ、この絶妙なバランスが見事に落とし込まれたパンプスであると感じました。

そして消費者である私たちが、数あるパンプスの中からKesouを選ぶということは、ファッション業界、ひいては持続可能な社会の実現に一票を投じることになるんだろうと考えています。

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