海は、人類が地球で住みやすい環境を維持するための重要な役割を担っています
雨水、飲料水、天候、気候、海岸線、食物などなど…。
そして私たちが呼吸する空気中の酸素までもが、最終的には海によって提供され、調整されています。
このように重要な役割を担っている海を守ることは、持続可能な未来を築くためには不可欠です。
しかし現在、海洋プラスチックゴミ問題や、海洋酸性化などが生態系の機能や生物多様性に悪影響を与えています。
また、海洋生物だけでなく、途上国などの小規模な漁業にも悪影響を及ぼしています。
海を守るということは、地球にとって、私たち人類にとって非常に優先度の高い課題です。
そんなわけで、国連はSDGsで「海の豊かさを守ろう」という目標を掲げているのです。
どんな目標なのか、詳しく見ていきましょう。
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ターゲット
「海の豊かさを守ろう」
といっても、具体的な指針がなければ皆で同じ目標に向かって突き進むことができません。
というわけでSDGsはそれらの具体的な指針のことを「ターゲット」と呼んでいます。
SDGsは全部で17個のグローバル目標と169個のターゲットで構成されています。
そのうち、目標14についてはターゲットが10個あるということです。
14 | 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。 |
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14.1 | 2025年までに、陸上活動による海洋堆積物や富栄養化をはじめ、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に減少させる。 |
14.2 | 2020年までに、海洋および沿岸の生態系のレジリエンス強化や回復取り組みなどを通じた持続的な管理と保護を行い、大きな悪影響を回避し、健全で生産的な海洋を実現する。 |
14.3 | あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響に対処し最小限化する。 |
14.4 | 2020年までに、漁獲を効果的に規制して、乱獲や違法・無報告・無規制(IUU)漁業および破壊的な漁業慣行を撤廃し、科学的情報に基づいた管理計画を実施することにより、実現可能な最短期間で水産資源を、少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる持続的生産量のレベルまで回復させる。 |
14.5 | 2020年までに、国内法および国際法に則り、入手可能な最適な科学的情報に基づいて、沿岸・海洋エリアの最低10%を保全する。 |
14.6 | 2020年までに、開発途上国および後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、差異のある特別な待遇がWTO漁業補助金交渉*の不可分の要素であるべきことを認識したうえで、過剰生産や乱獲につながる漁業補助金を禁止し、IUUにつながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。 |
14.7 | 2030年までに、漁業、水産養殖、および観光の持続可能な管理などを通じた、小島嶼開発途上国および後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的利益を増加させる。 |
14.a | 海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案し、科学的知識の増進、研究能力の開発、および海洋技術の移転を行い、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の海洋の健全性の改善と、開発における海洋生物多様性の寄与向上を目指す。 |
14.b | 小規模・伝統的漁業者に対する、漁業および市場へのアクセスを提供する。 |
14.c | 我々が望む未来のパラグラフ158にある通り、海洋および海洋資源保全・持続的利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約 (UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋および海洋資源保全・持続的利用を強化する。 |
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海と人の関わり
海洋は、地球表面の4分の3を占め、地球上の水の97%を含み、体積では地球上の生活空間の99%を占めています。
30億人以上の人々が、海洋と沿岸の生物多様性に依存して生活しています。
海のGDP
世界的に見ても、海洋・沿岸の資源や産業の市場価値は年間3兆ドル、あるいは世界のGDPの約5%と推定されています。
また海洋漁業は、2億人以上の雇用を生み出しています。
人口増加
約6億8,000万人が沿岸の低地に住んでいますが、2050年には10億人に増加すると予想されています。
海上輸送
海上輸送を含む持続可能で気候変動に強い輸送は、持続可能な開発の鍵となります。
商品の国際貿易量の約80%は海上輸送されており、ほとんどの開発途上国ではその割合がさらに高くなっています。
海の現状
海洋プラスチックゴミ
世界では、毎分100万本のペットボトルが購入され、毎年5兆枚もの使い捨てビニール袋が使用されています。
2050年には海洋プラスチックゴミの量が、海を泳ぐ魚の量を超えると言われています。
プラスチックをエサと間違えて誤飲してしまう魚や海鳥が増え、結果的に海の生態系に悪影響を及ぼします。
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海洋資源の減少
生物学的に持続可能な水準範囲にある魚種資源の割合は大きく減少しています。
今のペースで魚を獲り続けているといずれ獲れなくなるほど減少してしまいます。
世界の海洋資源は、獲りすぎが33.1%、十分利用している海洋資源が59.9%、まだ獲る余裕がある海洋資源が7%です。
一方で、漁業を制限してしまうと途上国が立ちいかなくなるという問題もあります。
温暖化
海は、人間が排出する二酸化炭素の約30%を吸収し、地球が温暖化するのを和らげています。
しかし人間活動による二酸化炭素の排出は海が吸収できる量を上回り、海洋の温暖化、酸性化、酸素の喪失を引き起こしています。
富栄養化
沿岸の水は、汚染と富栄養化により悪化しています。
人類の取り組みがなければ、2050年までに大規模な海洋生態系の20%で沿岸の富栄養化が進むと予想されています。
海洋熱波
海水の極端な高温が少なくとも5日間連続した場合を「海洋熱波」と呼びます。
海は、気候システムにおける過剰な熱の90%以上を吸収しています。
しかし海洋の熱は記録的なレベルに達しており、広範囲にわたる海洋熱波を引き起こしています。
北海道や東北沖でも海洋熱波が頻発し、漁獲量に影響が出ています。
【参照】
・Toward a Blue Economy: A Promise for Sustainable Growth in the Caribbean
・State of the World’s Fisheries and Aquaculture
・北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに
私たちにできること
魚を食べる量を減らす
海洋資源の33%は獲りすぎと言われています。
であるならば、そもそも食べないことが、海洋生物の個体数を守るのには効果的です。
特に日本は世界的に見ても、一人当たりの魚介類消費量の多い国です。
世界の海の生物多様性を守る上で、日本人が今よりも魚を食べる量を減らすことは重要なことです。
MSC・ASC認証の商品を選ぶ
MSC認証、ASC認証は海のエコラベルとも呼ばれています。
持続可能性に配慮をした漁業によって獲られた魚介類であることの証明です。
ただし、認証があるからといって、食べ過ぎてしまっては意味がありません。
基本は魚を食べる量を減らす、もし選ぶなら認証がある商品を、というスタンスがおすすめです。
リサイクル素材の商品を買う
adidasやエコアルフのように、最近は海洋プラスチックゴミを回収してリサイクルした商品を販売するブランドがあります。
リサイクル素材の商品をつくるためには、その素材となる海洋プラスチックゴミを回収してくる必要があるので、売れれば売れるほど回収量は増えるという仕組みです。
ビーチクリーンに参加する
個人で海岸の海のゴミを拾ってもいいと思いますし、最近はSNSなどでビーチクリーンを呼び掛けている人たちもいたりします。
ビーチクリーンは、海や海岸のゴミを減らすということ以上に、ゴミを拾う姿を見た人たちの意識改革に繋がります。
最後に
海は、体積にして地球上の生活空間の99%を占めています。
すなわち、地球の持続可能性は海が担っていると言っても過言ではないのです。
人類は陸上で生活をしていますから、どうしてもこういう事実に気づきにくいかもしれません。
しかし、まだ後戻りができる今こそ、海が抱える問題に目を向け、解決に向けて取り組んでいく必要があります。
海に持続可能性をもたらすため、私たちには何ができるのか、考えていきましょう。
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