サンゴの白化現象とは?珊瑚礁と地球温暖化の関係について解説

サンゴは海の生物多様性を支えるとても重要な役割を果たしています。

サンゴ礁には多くの魚類、ナマコ、貝類が集まり、海の熱帯雨林とも呼ばれています。

しかしここ最近、サンゴはその個体数を大幅に減らしています。

ハワイ大学マノア校の新しい研究によると、サンゴの70~90パーセントが今後20年間で消滅し、80年後には地球上のすべてのサンゴ礁が死滅している可能性が高いということです。

そもそも、なぜサンゴは白化するのでしょう?

また、サンゴが死滅すると地球にはどんな影響があるのでしょう?

参照:https://futurism.com/the-byte/new-research-coral-reefs-completely-dead-2100

白化する原因

サンゴの白化現象は「水温上昇」が主な原因であると考えられています。

サンゴが棲息するのに最適な水温は25°Cから28°Cといわれており、30°Cを超える水温が続くとサンゴの体内で共生している褐虫藻(かっちゅうそう)が放出され、減少し始めます。

サンゴは褐虫藻が光合成することでエネルギーを補給しているため、褐虫藻が減少することはサンゴにとって大きなストレスになります。

サンゴから褐虫藻が放出され、骨格が透けて見える状態がサンゴの白化現象の正体です。

また、サンゴの白化は水温上昇を含めた「ストレス」によって起こります。

サンゴにとっては、淡水や土砂の流入、強光などもストレスの原因になり、最近では日焼け止めに含まれる化学物質もストレスの原因になる可能性があると指摘されています。

海洋酸性化

サンゴに迫る脅威は水温上昇による白化現象だけではありません。

近年、海洋酸性化がサンゴの骨格に悪影響を及ぼしていると考えられています。

大気中の二酸化炭素は海洋に溶け込み、水と結合することで酸性度を生み出します。

サンゴは水に溶けにくい炭酸カルシウムで骨格を作っているため、酸性化すると炭酸が減り、骨格を作れなくなってしまいます。

サンゴの体内で共生している褐虫藻が光合成をするために二酸化炭素は必要ですが、多すぎるのもまた問題だということです。

ただ、酸性化によって骨格形成ができなくなるサンゴと、そうでない種もいたりして、まだまだ不明な点も多いです。

サンゴの白化現象と海洋酸性化の関係については研究が始まったばかりなので、今後メカニズムが解明されることが期待されています。

【参照】
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/knowledge/oa/acidification_influence.html
https://academist-cf.com/journal/?p=5653

サンゴ礁の役割

世界の海に生息する海洋生物のおよそ25%がサンゴ礁に棲息していると言われています。

産卵をしたり稚魚が育ったりする場所ですから、いわば海洋生物の「家」としての役割をサンゴ礁が担っているんです。

そのほか、サンゴの体内で共生している褐虫藻は海中のCO2によって光合成をおこなうため、サンゴ礁が減少すると海のCO2濃度のバランスが崩れる原因にもなります。

サンゴ礁が減少するということは、すなわちサンゴ礁に住んでいる海洋生物の生態系にも影響が出てくるのです。

海水は地上の⼆酸化炭素の31%を吸収し、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を弱める役割を担っています。

仮にも海中のCO2の濃度を調整してくれるサンゴが絶滅し、海洋の生態系が崩れれば、地上の二酸化炭素濃度は上昇し、食べることができる魚の量は減ったりと、人間社会にも影響が出てくるのは時間の問題でしょう。

【参照】
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/contribution/environment/activities01/activities01-03.html
https://www.mri-jma.go.jp/Topics/H30/310315/press_release.pdf

サンゴを守るには

サンゴは水温上昇によって白化現象が起こり、水温が上昇する原因の一つとして地球温暖化が考えられています。

また、二酸化炭素によって海洋酸性化が進むことも、サンゴの死滅に繋がります。

ですから、二酸化炭素の排出削減をすること、地球温暖化対策をすることが、ひいてはサンゴを守ることに繋がります。

電気をこまめに消したり、自動車に乗る頻度を減らしたり、肉を食べる量を減らしたり、できることは沢山あります。

サンゴを守る活動をしている団体に寄付したりすると、もっと積極的なサンゴの保全に貢献することができます。

【関連記事】
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日焼け止め

近年、日焼け止めに含まれる「オキシベンゾン」や「オクチノキサート」などの化学物質が、サンゴや海洋生物の遺伝子を傷つける原因の一つになっていると考えられています。

実際、サンゴ礁にとって有害な化学物質が含まれる日焼け止め・スキンケア商品の販売や利用が禁止されるリゾートなども出てきています。

そんなわけで、最近はオキシベンゾンやオクチノキサートなどを含まない日焼け止めも登場したりしているので、よく海へ行く方、日焼け止めを利用する方は、そういう商品を利用することもサンゴ礁を守ることに繋がります。

ちなみに「サンゴに優しい日焼け止め」は、売り上げの一部がサンゴ礁を守る活動に寄付されたりして、より積極的にサンゴ礁の保全に貢献できるのでオススメです。

■パラオ:2020年1月1日よりオキシベンゾン、オクチノキサート、オクトクリレン、エンザカメン、トリクロサン、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルパラベン、フェノキシエタノールの10種類の化学物質を含む日焼け止めやスキンケア製品の販売・使用を禁止。
■ハワイ:2021年1月1日からオキシベンゾンとオクチノキサートを含む日焼け止めの販売が禁止。
■ボネール:2021年1月1日からオキシベンゾンとオクチノキサートが含まれるすべての日焼け止め製品の禁止

チェイシング・コーラル

出典:https://www.netflix.com/

ネットフリックスで配信されている作品「チェイシング・コーラル -消えゆくサンゴ礁-」は、サンゴの白化現象を知るのに最適な作品です。

定点観測で、きれいなサンゴと死にゆくサンゴを交互に見せる、という手法がとってもインパクトがあります。

かくいう筆者は、チェイシング・コーラルを見てサンゴの白化現象に興味を持ちました。

話すわけでも、人間になつくわけでもない、ただ海を漂うサンゴたちが死ぬということに、こんなに悲しい気持ちになるとは思いませんでした。

特に、サンゴが白化ではなく蛍光色に変わるシーンは、言葉にならないほどの衝撃を受けました。

ニュースを見たりするより、この作品を1回見る方がよほどサンゴの白化現象に関心を持つことができます。

まとめ

サンゴは

  • 海の生物多様性の保全
  • 二酸化炭素の循環機能

などの役割を担っています。

海は地球の面積の約71%を占めていることを考えると、海の生態系は間違いなく陸上に住む人間にも影響を与えます。

すなわち、海洋生物のおよそ25%が棲息しているサンゴ礁を守ることは、自分たちの命を守ることにも繋がってくると言えるでしょう。

多くの人にとって、サンゴは日常生活であまり関わりがない生物かもしれません。

しかし、サンゴも人間も同じく地球の持続可能性を担う生き物です。

どうやってサンゴを守ることができるか、今日から考えてみませんか?

【関連記事】生物多様性とは?意味・問題・重要性について解説

参照:https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/tamenteki/kaisetu/moba/sango_genjou/

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