2020年にレジ袋が有料化され、2022年4月からプラスチック有料化の範囲は拡大されることになります。
賛否両論はあるでしょうが、否が応でも脱プラと向き合うべきときがやってきています。
そんな昨今、徐々に人気が出てきている脱プラ商品の一つが「竹歯ブラシ」です。
木は成木になるまで10年以上かかりますが、竹は成長が早く、およそ3年程度で成竹になることから、持続可能な植物として注目が集まっています。
そして竹歯ブラシを扱う国内メーカーとして脱プラ生活を送る人たちから高い支持を得ているのがMiYO ORGANICです。
MiYO ORGANICはなぜ竹歯ブラシをつくることになったのか。
竹歯ブラシを通してどんな社会を実現していこうとしているのか。
そんなお話を、代表の山本さんにお伺いしてきました。
MiYO ORANICについて
——MiYO ORGANICさんといえば竹歯ブラシが人気商品ですよね。そもそも、なぜ竹歯ブラシをつくることになったのですか?
山本さん:私の実家は、店舗プロデュースをする会社を営んでおります。
レストラン、ホテル、結婚式場などがお客さんです。
そういった事業者様に、割り箸や、プラカップ、食器などを卸す事業です。
私は二代目として経営に携わっております。
そして当社はもともとホテルのアメニティなども取り扱っていました。
ある日北海道に出張に行く日があり、いつものようにホテルに泊まり、使い捨ての歯ブラシで歯を磨こうとしたとき、ふと
「この歯ブラシは夜と朝に使って捨ててしまうのか」
と考える瞬間がありました。
私が泊っているホテルには300室ほどがありますから、1日で300本の歯ブラシが捨てられることになります。
じゃあ日本中のホテルで、世界中のホテルで歯ブラシがゴミになっているのだろう。
という考えが頭の中を巡りました。
そしてはこれは非常にもったいないことだと気が付きました。
その日以降、エコフレンドリー歯ブラシなどを調べるようになったのですが、その時点では全然選択肢がありませんでした。
選択肢がないのなら、自分で作るしかないと思ったのです。
そこから、竹歯ブラシの開発がスタートしました。
ちなみに、実家が事業をスタートした際には「竹の割り箸」からスタートしました。
竹の割り箸を飲食店に売っていたのです。
「竹をつかう」というのはここにルーツがありました。
竹の割り箸をつくっていた会社さんとは今もお付き合いがあります。
というのも、竹歯ブラシと竹の割り箸は、途中までは作る工程が一緒なんです。
また、MiYO ORGANICのパッケージは竹紙をつかったパッケージなんですけど、このパッケージも実は割り箸のパッケージの金型を使っています。
食器ソムリエについて
——山本さんはMiYO Organicとは別に食器ソムリエもやられているんですよね?食器ソムリエについて詳しく教えてください。
山本さん:私はオタク気質な一面があり、食器オタクだったんです。
レストランやホテルや結婚式場など、業務用で使う食器に詳しかったんです。
なぜ食器に詳しかったのかというと、もともと私の実家が、店舗プロデュースなど、お店にまつわる商品を販売する事業を行っていたからです。
「こういうコンセプトで、こういうインテリアのお店は、こういう食器が合う」
という提案をする事業に携わっていたのです。
そこから食器についての知識がついていきました。
食器をプロデュースするのはとても楽しいのに、これが職業として認知さられておらず、また、食器の知識が体系化されていてご提案できるようなフレームワークがありませんでした。
食器をプロデュースする仕事があれば、作り手の人も選んでもらえてうれしいし、買う人もマッチングしてもらえてうれしい。
そう考えて食器ソムリエ協会をつくりました。
講座を開いて食器に詳しい人を増やしたり、作り手と買い手をマッチングする、というのが食器ソムリエ協会です。
これは私の持論なのですが、食器が好きだと人生は3倍以上楽しくなりますよ。
1日3回ご飯を食べるとき、カフェでお茶をするとき、必ず食器を触ることになります。
食器が好きだと、毎回楽しくなります。
また、食器を知ることは歴史や文化を知ることにも繋がります。
例えば、なぜヨーロッパでボーンチャイナが生まれたかは、シルクロードの発達とそれによる中国文化の輸入が不可欠だったという経緯がありました。
食器一つで、これだけ様々な楽しみ方があるんです。
サステナビリティの難しさ
——事業とサステナビリティを両立するうえで感じている課題などはありますか?
山本さん:プラスチックは非常に価格も安くて、サイズも寸分違わず均一に作れて、大量生産できます。
一方、「竹」はプラスチックとは異なり、自然の素材なのでどうしても不均一になります。
これが魅力でもあるわけですが、生産するうえではハードルになります。
竹のサイズが違えば同じ機械で作ることができなくなり、同じコストでは出来くなります。
ですから、見たり触ったりして検品をしたり、工場にも手間をかけてもらう必要があります。
梱包もすべて手作業で行っています。
また、パッケージもプラスチックではないものを採用するうえで難しさがあります。
プラスチックは水をはじいてくれるし、汚れにくいです。
開封しやすい構造につくることもできます。
とにかくプラスチックは便利なんです。
ですから、なるべくお客様の生活を変えずに、環境に配慮した生活をできるようにするうえで、ベストオブベストは難しいと感じています。
ですから、プロダクトアウトしていきながら、改良しつつ、マッチベターを追求していくようにしています。
——ちなみにMiYO ORANICさんに限らず、多くの竹歯ブラシのメーカーさんは中国産の竹を使用していますが、これは理由があるのですか?
山本さん:日本には放置竹林が増えすぎているという問題があります。
竹が増えすぎているなら使えばいい、と思うかもしれませんが、実はそういうわけにいかないんです。
当社は孟宗竹(もうそうちく)という種類の、約3年目の竹を使用しています。
なぜ約3年目の竹を使用するのかというと、竹は植物の中でも最も成長が早く、約3年で大人になるからです。
じゃあ4年目以降はどうなるかというと、竹は繁殖するエネルギーが非常に強いため、地下茎にエネルギーがつかわれます。
外にエネルギーが使われることになるので、中はどんどんスカスカになってしまいます。
ですから、竹製品をつくろうと思ったら「何年目の竹か」というのが非常に重要です。
そして放置竹林ということは、管理されていないわけですから、どの竹が何年目の竹かが分かりません。
1年目の竹も10年目の竹も乱立している状態です。
一方で、中国にはしっかりと管理された竹林も多く、何年目の竹なのかが分かります。
そして中国の竹は非常にクオリティが高いです。
中国の竹に対して世界からの需要があったからです。
しかし日本には竹のマーケットがないので、NPOとかボランティアの方が竹を管理している状態です。
ですから、日本の竹を使おうと思ったら、竹歯ブラシの値段が非常に高くなってしまいます。
マッチベターな選択肢として、今は試行錯誤しながら、まずは中国の竹を使用して商品展開をしています。
新しい商品
——今後新たに展開しようと思っている商品はありますか?
山本さん:歯磨きペーパーをリリースします。
ホテルに置いてある小さい歯磨き粉って使い切らない場合が多いですよね。
そこに着目してつくったのが歯磨きペーパーです。
ブラシにペーパーを差し込んで、口の中で唾液に反応して泡立つものです。
こうすることで、パッケージにプラスチックを使用する必要がなくなります。
また、水を使わずに唾液に反応して泡立つので水資源も節約できますし、防災用品としても活躍します。
海外でも売られていない商品なので、グローバルに展開していきたいと思っています。
サステナビリティの注目度
——エシカルな商品を扱う事業者として、世間のサステナビリティに対する注目度は上がっていると思いますか?
山本さん:2018年の12月に竹歯ブラシをスタートしようと思ったときは、竹歯ブラシの存在はあまり認知されていませんでした。
SDGsという言葉は聞いたことがあっても、中身までは知らないという人も多かったりしました。
ただ、2020年にレジ袋が有料化されたときに世間では注目度が高くなりましたし、2022年4月からはホテル事業者様などもプラスチック新法の規制を受けることになります。
法律で規制されたりする中で、どうしても意識せざるをえない状況になっていると思います。
あと個人レベルで言うと、人によって意識のギャップはあるような気はしています。
本気で問題意識を持っている人もいれば、SDGsが「なんとなく流行っている」という認識の方も多いと思います。
たしかに世間全体で注目度は上がっているものの、まだまだ人によって認識のギャップは大きいです。
ただやはり、今後法律でプラスチックが規制されていく中で、賛否はあるでしょうけど、個人の皆さんも意識せざるを得なくなっていくんだと思います。
今後の展望
——今後の展望について教えてください。
山本さん:人それぞれに「得意なこと」「不得意なこと」というのは必ずありますよね。
私の場合、食器もそうですが、好きなことには熱中できるんですが、苦手はことは本当にダメで、組織の中で働くのが難しいタイプです。
なるべく自分が得意なことを伸ばして社会に貢献できれば、自分にとっても幸せだし、社会にとっても良いことです。
逆に自分が苦手なところは得意な人に補ってもらう、そんなチームをつくりたいなと思っています。
例えば竹歯ブラシや綿棒は、使い終わったら結局廃棄されることになります。
ですから、本当の意味での循環はまだできていないなと感じています。
ビジネスには川上、川中、川下があると思っていて、当社は販売する「川下」にあたります。
川上には竹を切る事業者様がいたり、真ん中には製造する工場があったり。
それぞれに役割があると思っています。
その人たちがみんなで協力をして循環する仕組みを作れたらいいですよね。
これまでの資本主義というシステムでは、「競争」の原理が働きやすく、「協力」することが難しかったと思います。
しかしこれからは、同じ志を持った事業者さんや地域を横断して協力し合い、循環する仕組みをつくっていきたいです。
そして当社もその循環の中の一部として、社会に貢献していきたいなと考えています。
インタビューを終えて
試行錯誤を繰り返しながらマッチベターを追求し続ける、というのは非常に重要だなと感じました。
というのも、使いやすさだけを追求すると環境負荷に繋がるし、サステナビリティだけを追求するとコストがあがって手が届きづらい商品になります。
商品の一部にプラスチックを使えばさらに使い勝手が良くなりますが、石油資源は消費する必要があります。
国産の竹だけを使用すれば、輸送時のCO2排出量は低下するでしょうけど、商品の価格は大幅に上がります。
商品をつくることで環境負荷になってしまったら本末転倒ですし、一部の裕福の人たちだけが買える商品ではサステナビリティは普及しません。
エシカルな商品の難しさってこういう部分にあるんですよね。
ですから、「マッチベターを追求し続ける」ことがサステナビリティというビジネスができうる最善なのかなと思っています。
皆さんもぜひ、MiYO ORGANICのエシカルでマッチベターな商品を体験してみませんか?
そして、持続可能な社会の実現に一票を投じましょう!
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