カーボンプライシングとは、二酸化炭素(CO2)の排出に価格をつける制度のことです。
世界銀行の2021年の報告書によると、カーボンプライシングを導入している国や地域はあわせて64と報告されています。
脱炭素社会を実現するうえでは人や企業の行動変容が不可欠です。
そしてまさに、カーボンプライシングは人々の行動を変えるに有効な政策手法であると期待されています。
カーボンプライシングの目的
二酸化炭素の排出は地球温暖化を引き起こし、気候変動の要因となっています。
一方で「地球温暖化を防ぐためにCO2を減らそう」と言われても、メリットがなければ行動できないのが人間の性です。
しかし、CO2に価格をつけ、お金と同じように取引可能なものにして、CO2の排出量によって経済的に有利になったり、不利になったりする状況をつくりだすことで、行動を起こす動機になるのです。
「CO2排出量が多いので費用負担も多くなります」と言われて、コスト削減を検討しない企業はいないでしょう。
カーボンプライシングの具体的な手法
国内 | 炭素税 |
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国内排出量取引 | |
クレジット取引 | |
炭素国境調整措置 | |
国際 | 国際機関による市場メカニズム |
社内 | インターナル・カーボンプライシング |
炭素税
炭素税は、排出される二酸化炭素の量に応じて企業に課税する制度です。
炭素排出の「社会的コスト」を市場価格に反映することで、企業や個人が炭素排出を自発的に減らすインセンティブを生み出すことに繋がります。
つまり、炭素を排出することが経済的コストになるため、企業はよりクリーンなエネルギー源にシフトし、エネルギー効率の改善や排出削減に関連する技術開発に投資する動機付けとなります。
徴収された税金は、再生可能エネルギーやエネルギー効率の向上などの環境保護対策に投資するための公的資金として利用されることがあります。
排出量取引
排出量取引は、政府が二酸化炭素排出量の上限を設定し、その枠内で企業間で排出権を売買する市場を形成するものです。
排出権を多く持つ企業は、排出権を必要とする他の企業に売ることで利益を得ることができます。
これにより、炭素排出を抑えることが経済的に有利となり、全体の排出量を削減することができます。
また、炭素排出を抑制するための新たな技術開発にもつながります。
炭素税は確実に排出量をコントロールすることが難しい一方で、価格の安定性を提供します。
一方、排出取引は排出量の上限を設定することが可能ですが、市場の動向により価格が変動します。
クレジット取引
再生可能エネルギーを導入したり、森林の再生や保全など温室効果ガス排出を削減・抑制する取組を証書化し、そのクレジットを売買するものです。
【非化石価値取引】再生可能エネルギー(太陽光・風力等)・原子力といった化石燃料でない(非化石)エネルギーがもつ価値を売買するもの
【Jクレジット】先進的な対策によって実現した排出削減量を「クレジット」として、売買できるようにするもの
【JCM(二国間クレジット制度)】途上国と協力して実施した対策によって実現した排出削減量を「クレジット」として、削減の効果を二国間で分け合う制度
【ゼロエミッション車クレジット取引】販売するゼロエミッション車をクレジット化し、自動車メーカーに対し一定比率以上のクレジットの取得を求めるもの(米国ではカリフォルニア州など10州で実施)
インターナル・カーボンプライシング
企業が自社の事業活動に関連する温室効果ガス(GHG)排出に対して自主的に価格を設定し、そのコストをビジネス戦略や投資決定に反映する戦略のことを指します。
この価格設定により、企業は環境に対する影響を金額で表現し、それを経営戦略や製品開発、投資決定などに反映させます。
まとめ
従来まで「エコ」とか「環境問題」と言ったら、人や企業たちの善意にゆだねられていた側面があります。
しかし、人々の善意に頼っていては、もはや間に合わないくらい地球温暖化は進行しています。
カーボンプライシングが脱炭素を強力に推し進めるテコになることを期待しています。
*Publication: State and Trends of Carbon Pricing 2021
*脱炭素に向けて各国が取り組む「カーボンプライシング」とは? | 経済産業省
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