ここ最近、昆虫食への注目が集まっています。
牛肉をはじめとする畜産の環境負荷が非常に大きいからです。
牛肉のゲップに含まれるメタンは二酸化炭素よりも温室効果が高いことが一つ。
さらに畜産は放牧地や飼料を生産するために広大な土地を必要とし、そのために大量の森林破壊がされています。
今はまだ何とかなっていますが、いずれ畜産では限界を迎えるときがやってきます。
なぜなら、世界の人口はこれからも増え続けるからです。
世界の人口は2050年には90億人を超えると予測されています。
これまで私たち人類は食肉によって多くのタンパク質を賄ってきましたが、需要と供給が10年以内に逆転すると言われています。
食料供給の量を2倍にする必要があると言われていますが、じゃあ地球を2倍の大きさに出来るかというと、残念ながらできません。
この危機的な状況のことを「タンパク質危機」と呼びます。
そして国際連合食糧農業機関(FAO)は2013年に、食糧問題の解決策の一つとして「昆虫食」を取りあげました。
2015年9月に開催された国連サミットでも「貴重なたんぱく源」として推奨されています。
一部の物好きだけが推奨しているわけではなく、食料問題の解決策として、世界が真剣に昆虫食を検討し始めたということです。
そんなわけで、畜産に代わる食料として、いま昆虫食は注目されているのです。
昆虫食のメリット
環境負荷
1kg生産するのに、鶏は4.5kg、豚は9.1kg、牛は25kgの飼料を必要とします。
一方、コオロギは2.1kgの飼料で済みます。
しかも昆虫の種類によっては有機物(人間や動物の廃棄物を含む)で飼育することも可能です。
また、牛の体重を1キロ増やすのに必要な水は1,500ℓなのに対し、コオロギは1ℓで済みます。
加えて、昆虫は牛や豚に比べて温室効果ガスやアンモニアの排出量も少ないと言われています。
【参照】
・Entomophagy | Britannica
・Edible insects | FAO
食品ロス
牛肉は、人間が食べられる精肉部分は約4割だと言われています。
しかしコオロギは体の約8割を食べることが出来ます。
食料安全保障
食用昆虫は必須の炭水化物、タンパク質、脂肪、ミネラル、ビタミンの天然の供給源であり、貧困国と富裕国の間のタンパク質消費量のギャップを埋めることが出来ます。
多くの昆虫は、穀物に大きく依存している多くの人々の食生活で不足しているアミノ酸であるリジンを豊富に蓄えています。
特に日本のように食料自給率が低い国にとって、食料安全保障は大きな課題です。
日本の食料自給率はカロリーベースで37%、つまり63%を海外からの輸入に頼っているのです。
おまけに日本は20年以上続くデフレによって経済不況から脱却できておらず、将来的には安定的に食糧を輸入し続けることが難しくなる恐れもあります。
日本の場合は特に、食料安全保障という観点から、昆虫食を真剣に選択肢として検討する必要があるのです。
【関連記事】食料自給率とは?上げるには?日本・世界の数字とあわせて解説!
栄養
昆虫はタンパク質が豊富に含まれています。
コオロギ100gあたりのタンパク質量は牛とほぼ同じです。
ほかにも、不飽和脂肪酸、ビタミンB群、銅や亜鉛、マグネシウムほか各種のミネラルを含んでいます。
例えばミールワームの不飽和オメガ3脂肪酸と6脂肪酸の組成は魚と同程度で、牛や豚よりも高いです。
ミールワームのタンパク質、ビタミン、ミネラルの含有量は、魚や肉と同等です。
鉄分含有量は、牛肉では乾燥重量100g当たり6mgであるのに対し、イナゴ類では乾燥重量100g当たり8~20mgです。
コオロギ4匹で、大きめのコップ1杯の牛乳と同じだけのカルシウムが摂取できます。
フンコロガシ1匹にはステーキよりも多くの鉄分が含まれています。
【参照】国際連合食糧農業機関(FAO) | 食品安全関係情報詳細
感染症リスク
昆虫食が普及することによって人獣共通感染症のリスクを低減させることができます。
昆虫は系統分類学的に人間と離れていることから、共通で感染する病原菌・ウイルスが非常に少なく、人獣共通感染症の伝播リスクが家畜と比べて低いと考えられています。
【参照】昆虫食の低感染症リスク、生態系への負荷軽減 | 兵庫県立大学
昆虫食のデメリット
未解明
昆虫を食べることに対して、まだまだ未解明な点が多いです。
昆虫とひとくくりにして語っていますが、その種類は膨大です。
どの昆虫にどれくらい栄養が含まれているのか、そもそも食べても安全な昆虫はどれか等々。
しかも、同じ種類の昆虫であっても、その生息環境によって栄養価が大きく異なります。
また昆虫食も、畜産のように需要が高くなれば、生産量を増やすために工業化をしたりして、地球環境の破壊に繋がる可能性も十分にあります。
アレルギー
昆虫は甲殻類に近いので、エビやカニのアレルギーを持っている人はオススメしません。
食べられている昆虫
昆虫を食べる習慣がない私たち日本人にとっては、虫を食べるなんてとんでもない!と思われる方も多いかもしれません。
しかし、世界では当たり前に昆虫を食べる国があったりします。
なんと昆虫は、世界では20億人もの人々にとって、伝統的な食生活の一部を構成しているのです。
中央アフリカでは食生活の主役がイモ虫だったりします。
ちなみに、人々から最も食べられている昆虫は以下の通りです。
- カブトムシ(31%)
- イモムシ(18%)
- ハチ、スズメバチ、アリ(14%)
- バッタ、イナゴ、コオロギ(13%)
通販サイト
昆虫食のメリット・デメリットについてご理解いただけたと思います。
そのうえで「実際に昆虫食にチャレンジしてみたい!」と思った方。
昆虫食を専門に扱う通販サイトがあるので、そちらで購入しましょう。
bugoomっていうサイトです。
オススメの昆虫食を選んでくれる人工知能がとっても斬新。
昆虫食って大抵の人が初めてなので、何を選べばいいか分からないと思うので、人工知能の診断が結構ありがたい。
粉状のパウダータイプとかカップヌードルの麺タイプとか、虫の原形がないタイプの商品も豊富なので、虫が苦手な人にもオススメ。
【関連記事】昆虫食の通販サイト5選とおすすめ商品TOP5【2021】
最後に
人は馴染みのないものに対して嫌悪感を抱く生き物です。
小さい頃に虫に触ることができたのに、大人になったら触れなくなった、という人は結構多いのではないでしょうか。
それはシンプルに、子どもの頃のように自然と触れ合ったりする機会が減ったからだと思うんです。
多くの人は成長するにつれ、木や草花、土のある場所から離れ、アスファルトやビルのある場所でしか生活しなくなりますからね。
でも逆に言えば、慣れてしまえば、簡単に人間の感性というものは切り替えることが出来るとも言えます。
接触する回数が減るだけで昆虫に触ることが出来なくなるのなら、接触する回数が増えればまた問題なく触ることが出来るようになるはずです。
早い話、今美味しいと思っているもの、マズいと思うもの、美しいと思っているもの、醜いと思っているものは、いまその瞬間の感性でしかないということです。
もし昆虫食が今よりも普及したら、牛や豚の肉を見たら気持ち悪いと感じる人が出てくる、そんな時代がやってくるかもしれません。
参照:Edible insects | FAO
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