時の流れははやいもので、2020年にサステラが誕生してから約5年が経過した。
サステラのインスタアカウントをつくった当初、私は堂々とアラサーを名乗ることができたが、いまやアラウンドカウント方式を採用すると繰り上げられてしまう年齢に突入してしまった。
なので「平成元年生まれです」という和暦カウント方式を採用し、相手の脳内計算を巧みに妨害する小賢しさを発揮している今日この頃だ。
三十代も半ばを過ぎると、多くの人が関心を持ち始めるテーマが「健康」だろう。
かく言う私も、家にはヘンプシードのプロテインやオーツミルクが常備され、Kindleには予防医学関連の本が大量にダウンロードされている。
帰宅してもiPhoneのムーブリングが達成されていなければ、再び家から飛び出して早歩きで近所を徘徊するのが日課だ。
時の流れに身をまかせず、これからも見苦しく抗っていきたい。
ちなみに、この5年で変わったのは私のライフスタイルだけではない。
ヘンプシードのプロテインも、オーツミルクも、5年前は電車に乗ってわざわざオーガニックスーパーに行かなければ買えなかったのだが、今はどちらも近所のスーパーで買えるようになったことだ。
もっというと、スーパーでは有機野菜の売り場面積が増えたし、近所のコンビニにはフェアトレードのチョコレートなんかも売られていたりしている。
拡大するエシカル市場
消費者庁が行った調査によると、日本のエシカル消費の市場規模は約8兆円の規模になったそうだ。
8兆円といえば、ちょうど国内アパレル業界の市場規模と同じくらいの消費額だ。
市場が拡大していけば、サステナブルとかエシカルと呼ばれるカテゴリーで起業をするスタートアップもこれからさらに増えていくことだろう。
ところで、サステラが誕生してから今日にいたるまで、多くのエシカルブランドと交流してきたのだが、ここ最近は事業から撤退するブランドさんも増えてきたように感じる。
当然のことながら、日本でエシカル市場が拡大していたとしても、それはすべての企業の成功が保証されているわけではない。
市場が拡大していけば、より一層淘汰が進んでいくというのも、資本主義経済の厄介な側面だ。
一体何がエシカルブランドの明暗を分けているのだろうか。
もちろん経営は複合的な要因で成長したり低迷したりするもので、一つの要因だけをもってして何かを断定することはできない。
しかし多くの企業に共通した課題から教訓を引き出し、自社の経営に生かそうとすることもまた、大事な生存戦略だと思うのだ。
その前提で、私個人が観測した範囲内で申し上げると、上手くいかないケースとして「お墨付き」が課題になっている場合が多いように感じる。
人は損失を回避しようとする
たとえば私たちは、インターネットで何かを買おうとするとき、Amazonや楽天のユーザーレビューを見たり、Instagramのハッシュタグを調べたりして、「商品を買ったことがある人の感想」を調べるだろう。
これは何もインターネット時代に限った特殊な購買行動ではない。
近所でウワサの商品とか、ママ友の間で評判が良いかどうかを基準に商品を選んできたように、人は重要な決定を迫られると「第三者の意見」を重視してしまう生き物だ。
2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが提唱した「プロスペクト理論」という行動経済学の理論によれば、人は「得をしようとする」よりも、「損をしたくない」という”損失回避”の心理がより強く働き、行動に影響を与えるそうだ。
どう考えても素晴らしい商品なのに、ユーザーレビューが1個もないことが分かった途端、購入ボタンを押す手が止まってしまうのも、損失回避バイアスが有意に働いていると推測できる。
エシカルブランドも、自社の素晴らしい商品を顧客に届けようと思ったら、そうした消費者心理を考慮して戦略を立てる必要があるかもしれない。
海洋プラスチックゴミに問題意識を持ったり、途上国の貧困などに心を痛めたりして立ち上がったような素晴らしいエシカル商品を作っているブランドは沢山ある。
しかし、どれだけ商品に熱い想いを持っていたとしても、やはり想いだけで商品が売れるわけではないのだ。
しかもエシカルな商品に関して言えば、一般消費者の口コミだけでは不十分だ。
一般的な商品であれば「品質」や「コスパ」に言及している口コミがあれば十分な判断材料になるが、エシカルな商品は「倫理」という要素も加わる。
そしてその商品が本当に地球や社会に配慮して作られているかどうかは、素人には判別がつきづらいため、その分野に知見のある人の評価が求められる。
サステラをフォローしている人の中にも、パッケージに記載されている「地球にやさしい」という言葉だけを鵜呑みにしない、賢明なる消費者が沢山いる。
とはいえ「なんのコネクションもないのに、どうやって知見のある人からお墨付きをもらえばいいのか」と考える人もいることだろう。
そんな方のために、エシカルなブランドを展開している事業者の方にぜひ検討してもらいたい「お墨付き」を紹介させて欲しい。
ここからは宣伝になるが、オルタナの「サステナブル★セレクション」を推奨したい。
サステナブル★セレクション
そもそも、皆さんはオルタナをご存知だろうか?
サステナビリティやCSRをテーマとした日本初のビジネス情報誌として2007年4月に創刊した歴史あるメディアだ。
もし「最も信頼できるサステナブル系メディアは?」と聞かれたら、私はオルタナと即答するだろう。
そんなオルタナが2020年から提供しているのが、サステナブルな理念と手法で開発された製品・サービスを選定し、推奨する「サステナブル★セレクション」だ。
選定ポイントは以下の通りだ。
過去には、アシックス、コクヨ、サラヤ、みんな電力、ユーグレナなどの商品が選定されている。
「ウチの企業規模では難しいのでは?」
と思われた方もいるかもしれないが、そこは心配ご無用。
サステナブル★セレクションは1つ星・2つ星・3つ星に分かれており、「製品・サービス単位」「企業・組織単位」「社会的影響力」などに応じて選定される仕組みだ。
【星の意味】
一つ星(★)は、製品・サービスが、持続可能な社会づくりに貢献していること
二つ星(★★)は、★に加え、取り扱う企業・組織がサステナブル経営に取り組んでいること
三つ星(★★★)は、★★の中から特に大きな社会的インパクトを生み出していることを表します。
たとえ潤沢な資本力がなくとも、地球や社会にとって素晴らしい影響を与えるであろうエシカル商品は沢山ある。
そうした商品にも光を当てようとする仕組みがサステナブル★セレクションの選定基準に現れていたりする。
サステナブル★セレクションが優れているのは、「第三者のお墨付き」を提供してもらえるだけでなく「ブランド認知」にも貢献してくれる点にある。
すでに申し上げた通り、オルタナは情報誌やWEBサイトですでに多くの読者(しかもサステナビリティに関心のある)を抱えている。
そんなオルタナの読者に商品の存在を知ってもらえれば、サステナビリティ界隈に口コミが伝播する可能性もある。
さらに、サステナブル★セレクションに選定された企業は、実際に見て買えて商談できる機会「サスセレEXPO」にも割引価格で参加することができる。
ブランドを知ってもらえるだけでなく、その場でお客さんと会話をし、商品を手に取ってもらい、実際に購入してもらえるというわけだ。
個人的に、EXPOとか展示会は商談をしたい企業ばかりが集まるイメージだったのだが、昨年知り合いの展示を手伝うために参加をしたところ、思った以上に生活者の方々も多く会場に足を運んでいた。
私が手伝った知り合いのお店では、想定以上に商品が売れたため、持ってきた在庫が足りなくなってしまったほど。
サスセレEXPOは、企業との繋がりを作りたい人も、生活者に商品を試してもらいたい人も、きっと有意義な機会になるはずだ。
またサステナブル★セレクションに認定されると、交流会での横のつながりや、サステナブルビジネスに関するセミナー参加、サステナ経営検定3無料受験といったように、たくさんの学びの機会が用意されている。
一つ言えることは、サステラがこの5年間発信を継続できているのも、同じ志を持った人や企業との繋がりの賜物だということ。
人と繋がり続けていれば、思いもよらないコラボレーションの機会が生まれたり、自分一人で抱え込んでいては到底思いつかなかったアドバイスをもらえることもある。
実は私がオルタナの皆さんと繋がりができたのも、昨年サスセレEXPOでお手伝いをした知人が紹介してくれたおかげだ。
この文章を書いている最中にも、繋がりの大切さを改めて噛みしめている。
17個あるSDGsの最後の目標が「パートナーシップで目標を達成しよう」と掲げられているのも、人と人とが手を携えることなく1~16番目の目標は達成できないことを意味している。
解決したい課題や達成したい目標がある方こそ、サステナブル★セレクションで繋がりを見つけてみて欲しい。
ここまでは「エシカルブランド」にとってのメリットをお伝えしてきたが、企業がサステナブル★セレクションを利用することは、実は「生活者」にとっても恩恵がある。
サステナブル★セレクションは、申し込めば誰でもお墨付きがもらえるようなものではなく、本当に環境や社会に配慮されているかの審査を受けることになる。
サステナブル★セレクションで商品・サービスを選考するのは以下の方々。

あらゆる分野に精通している専門家が評価をするため、もし商品に不十分な点があれば、企業側もしっかり改善する必要があるため、グリーンウォッシュを回避することに繋がるのだ。
エシカルの市場規模が拡大していることはすでにお伝えした通りだが、それはすなわち「本当にエシカルなのか怪しい商品」の流通量も増えることを意味する。
せっかく地球環境に配慮していると思ったから商品を買ったのに、実際にはさらなる環境負荷に繋がっていたり、あるいは生産者の搾取に繋がっていたなんてことになれば、それは消費者にとっても地球や社会にとっても不利益でしかない。
だからこそ、サステナブル★セレクションのように、地球や社会にとって、消費者にとって、企業にとって、三方良しな仕組みがいま求められているのだ。
申し込み期限は2025年5月31日までなので、2025年を飛躍の年にしたいエシカルブランドは、ぜひ選択肢の一つとして検討してみて欲しい。
申し込み期限の5月31日が過ぎればもうすぐ梅雨になり、そして蒸し暑い夏がやってくる。
今年もまた世界平均気温の記録更新、熱波による欧州の森林火災、干ばつによる作物生産量低下のニュースを聞くことになるのだろうか。
気が付けば2015年にSDGsが採択されてから10年がたち、SDGsが掲げる目標達成の期限である2030年もあと5年だ。
きっとエシカル市場も、これから先の5年で大きく変化していくに違いない。
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