オーガニックとは日本語で言うと有機栽培のことを意味します。
そして有機栽培とは、簡単に言えば「農薬を使わずに栽培すること」を意味します。
農薬は、害虫から農作物を守り、生産性をアップするために使われます。
一方で、農薬は環境や人体に悪影響を与える可能性があります。
ですから、健康を意識したり、環境に配慮したりしている人からオーガニックの食品は好まれているわけです。
「オーガニック」とか「有機栽培」と表記のある食品を見たら「農薬が使われていないんだな」と理解していただければ問題ありません。
でも、一方で「無農薬」なんて言葉もありますよね。
有機栽培と無農薬は何が違うのでしょう?
そんな疑問がある方もいらっしゃるかもしれません。
あるいは「農薬が使われていないことをどうやって確かめるの?」なんて鋭い疑問を持つ方もいるかもしれません。
実はオーガニックってとっても奥が深いんです。
もっと詳しくオーガニックについて知りたい人は、ぜひ本記事を読み進めてみてください。
【関連記事】有機・無農薬野菜の宅配4選!オーガニック通販を徹底比較【2022】
オーガニックの定義
アナタがもし家庭菜園をしていたとして、一切農薬を使用していなかったとしても、家の前とかで「オーガニック野菜」と表記して売ることはできません。
なぜなら、オーガニックには厳密な法律と定義があるからです。
有機JAS
日本でオーガニックと名乗って食品を売るには
- 堆肥などによる土づくりを行う
- 2年(多年生作物の場合は3年)以上の期間は禁止されている化学肥料及び農薬は使用しないこと
- 遺伝子組み換え技術を利用しない
といったルールをクリアする必要があります。
そして、オーガニックの基準をクリアしていることを認証機関に審査してもらい、合格する必要があります。
審査にクリアすると以下のようなラベルを商品に貼ることが出来ます。
つまり、認証をクリアして初めて「有機栽培」とか「オーガニック」を名乗ることができるのです。
審査をクリアしていないのに勝手にオーガニックと名乗って食品を売ると、法律で罰せられる可能性があります。
無農薬とオーガニックの違い
たまにお店とかで「無農薬野菜」っていう表記を見かけることはありませんか?
オーガニックだって基本は農薬を使わずに育てられているのに、一体なぜ言葉を使い分けるのか。
実は無農薬野菜というのは、無農薬であることを「勝手に名乗っている」商品です。
オーガニックみたいに認証機関の審査を受けたわけでもありません。
そして、「無農薬」という言葉は定義があいまいで消費者の誤解を招きやすいので、厳密に言えば「無農薬」や「減農薬」と表記するのは禁止されているんです。
禁止されているのになぜ無農薬と名乗る商品が売られているのかといえば、ずばり「罰則」がないからです。
認証を受けていないのに「有機栽培」とか「オーガニック」を名乗ると罰則を受けますが、「無農薬」を勝手に名乗っても現状では罰則を受けることはありません。
いわゆるグレーゾーンってやつです。
【関連記事】有機野菜と無農薬野菜の違いは?意味や栽培方法について解説
オーガニックのメリット
オーガニックの食品は、基本的には栽培時に農薬が使われていません。
しかし、農薬が使われていないと、私たち消費者にとってどんなメリットがあるのでしょう?
健康
農薬を使用して育てられた農作物は、食品中に農薬が含まれたまま売られている場合があります。
これを残留農薬と呼びます。
残留農薬は、食品衛生法によって規制があります。
基準値を超える量の残留農薬が含まれている食品は販売することが出来ません。
逆を言えば、基準を超えない範囲でなら農薬が含まれていても問題なく販売することが出来るということです。
また、残念ながら残留農薬の検査も完璧ではありません。
残留農薬の検査は地方自治体が行うのですが、まぁ現実的に考えて市場に流通する食品の残留農薬を全て完璧に把握することは不可能です。
いずれにしても、残留農薬に関しては「自己防衛」が鉄則だと考えた方がいいでしょう。
ですから、そもそも農薬自体の利用に制限をかけているオーガニックを選ぶことが、自己防衛に繋がると言えます。
環境
有機農業は環境保全にもつながります。
サステナビリティに関する情報を発信している私としては、コチラを特に強調したいです。
地球温暖化対策
多くの人は「二酸化炭素を吸収する役割を持っているのは?」と聞かれたら「森林」をイメージすると思います。
もちろん森林は光合成によって二酸化炭素を吸収しており、地球を温暖化から守る役割を果たしています。
ですが、森林だけではありません。
実は「土壌」も大気中のCO2を吸収する役割を持っています。
さらに、植物は枯れたり燃えたりすれば大気中にCO2を放出しますが、土壌は大気中に戻さず貯留しておける可能性があります。
CO2の貯留量は以下の通りです。
- 大気中:7,500億トン
- 陸上植生:5,000億トン
- 土壌:1兆5,000億トン
これだけ大量のCO2を貯留している土壌。
そして、仮に全国の農地土壌に堆肥や稲わらなどの有機物を施用した場合、化学肥料のみを施用した場合に比べ、年間で貯留できる炭素量が約220万トン増加するそうです。
つまり、有機農業を普及させることが、地球温暖化対策につながるというわけです。
出典:農林水産省「地球温暖化防止に貢献する農地土壌の役割について」2008年3月
生態系の保全
また、土の中にはたくさんの微生物がいて、
その微生物のおかげで動物の糞や死骸、枯れてしまった植物が分解され、再び土へと還り、その土を利用して農作物が育つ…という循環が生まれます。
でも、農薬は微生物を殺してしまう可能性があります。
微生物がいなくなれば、土地はやせ細ってしまいます。
だからこそ、農薬を使用しないオーガニックは生態系に豊かさをもたらすメリットがあるわけです。
地球温暖化対策という観点からも、生態系を守るという観点からも、オーガニックは環境面から注目されているという訳です。
オーガニックコットン
世界の耕地面積のたった2.5%に過ぎない綿花畑において、世界の農薬の6.8%、殺虫剤の15.7%が綿花の栽培で使用されています。
また、ジーンズ1本分の綿を生産するには1万リットル以上の水が必要と言われています。
これは1人分の飲み水の10年分に相当する量です。
一方オーガニックコットンは農薬や機械にも頼らないため、通常のコットンに比べて排出するCO2は46%も少なくて済みます。
また、農薬を使用していない健全な土壌は水の吸収力と保持力が優れているため、水の使用量も少なくて済みます。
Tシャツ1枚をつくるのに、通常のコットンだと2,720ℓの水が必要ですが、オーガニックコットンなら243ℓで済みます。
有機JASは食品だけが対象なので、コットンには付与されません。
代わりに、オーガニックコットンには民間の認証機関があります。
それが「GOTS認証」と「OCS認証」です。
【関連記事】オーガニックコットンとは?メリット・デメリットを解説します
GOTS認証
オーガニック繊維について、生産から製造・販売まで、すべての工程の取り扱いについて定めた世界基準をThe Global Organic Textile Standard(GOTS)と言います。
オーガニック認定を受けられる原料の使用量は70%~100%と、OCSよりも厳しい水準に設定されています。
ただし、オーガニックコットンは普及している量が少ないため、商品も高額であるケースが多いです。
GOTS認証は認証を受けるハードルが高い分、オーガニックコットンの普及という部分ではOCS認証に分がありますが、認証に対する消費者からの信頼性に繋がっています。
【関連記事】GOTS認証とは?ラベルの意味やメリットについて解説!
OCS認証
原料から最終製品までの履歴を追跡し、その商品がオーガニック繊維製品であることを証明するマーク。
5%以上のオーガニック原料を含む製品に該当する「OCS Blended」、95%以上のオーガニック原料を含む製品に該当する「OCS 100」の2種類があります。
同じくオーガニックコットンに関する認証のGOTSよりも求められるオーガニック原料のハードルが低いため、リーズナブルな価格設定の場合が多い。
また、認証制度の信頼性という部分ではGOTS認証に分があります、OCS認証は認証のハードルが低い分、オーガニックコットンの普及に繋がります。
オーガニックコスメ
自然派志向の人や環境意識の高い人から支持を集めているオーガニックコスメ。
そして人気の高まりとともにオーガニックを名乗る化粧品の商品数も増えています。
オーガニックコスメで何より大切なのは「認証」です。
JAS認証はあくまでも「食品」にしか付与されず、「化粧品」にJAS認証が与えられることはありません。
つまり「化粧品」に関しては法律や罰則などが一切ないため、例えば原料のうちたった1%でも有機成分が含まれていれば「オーガニックコスメ」を名乗ることが出来てしまうわけです。
で、実際にたった数%しか有機成分が含まれていないオーガニックコスメが結構売られていたりします。
ただ、JASのように国が管理する認証はないものの、民間で独自に立ち上げられたオーガニックコスメの認証機関がいくつかあったりします。
【関連記事】オーガニックコスメおすすめ3選!化粧品の選び方に要注意?
コスモス認証
COSMOS(コスモス)認証とは、ナチュラル&オーガニック化粧品の世界統一基準を目指すヨーロッパを中心としたオーガニック認証機関のことを言います。
これまでヨーロッパでは、数々のオーガニックコスメ認証機関が生まれてきました。
しかし各認証機関によって、基準や有機に関する考え方が異なり、結局「どこの認証マークの化粧品を購入すれば分からない」と消費者が混乱するという事態になります。
そこで、ドイツの「BDIH」、フランスの「ECOCERT」「COSMEBIO」、イタリアの「ICEA」、イギリスの「英国土壌協会」の5つの認証機関がバラバラだった基準を統一しようと「COSMOS認証」を設立しました。
- 有機農法由来の原料を使用し、生物多様性に配慮すること
- 人の健康や環境に配慮した加工や製造を行うこと
- グリーンケミストリー(生態系に与える影響を考慮し、持続成長可能な化学工業のあり方を提言する環境運動)の概念に取り組むこと
- 遺伝子組み換えの植物原料の使用禁止
- 生きている動物および解体された動物から抽出された原料 の使用禁止
などがコスモス認証の基準です。
【関連記事】生物多様性とは?意味・問題・重要性について解説
ネイトゥルー認証
NATRUE(ネイトゥルー)はナチュラル&オーガニック化粧品に関する厳格な基準の維持を目指すベルギーの非営利団体。
ヨーロッパにはたくさんのオーガニックコスメ認証がありますが、営利団体も多く、ナチュラルコスメブランドの企業たちが
「認証制度をビジネス目的にするのではなく、公正さにこだわろう」
と2007年に設立しました。
- 認めたれたナチュラルおよびオーガニックな成分が配合されている
- 環境に優しい製造方法である
- 動物実験を行わない
- 石油系原料などは含まない
など厳しい基準をクリアした製品だけに認証マークの表示が許可されています。
USDAオーガニック認証
USDAオーガニック認証とは、米国農務省の傘下にある機関NOPが定める「オーガニック基準」をクリアした商品に与えられる認証。
日本にも農林水産省が有機農業を認証する「JAS」がありますが、JASのアメリカ版がUSDAオーガニック認証です。
日本とアメリカはオーガニック製品に関する「同等性相互認証」を締結しており、早い話「JAS認証=USDA認証」と見なすことができるというわけです。
USDAオーガニック認証はJAS認証とは異なり、化粧品に対しても、加工食品認証に準じた基準で審査をして認証を与えています。
つまり、USDAオーガニック認証がある化粧品は、口に入れる食べ物と同じく厳しい基準で審査を受けているというわけです。
また、世界には沢山の認証機関がありますが、いずれも「民間」の団体であり、「政府」系の認証は現状でUSDAオーガニック認証だけ。
さらに、コスモス認証やネイトゥルー認証は、石油および石油系の合成成分について、一部使用が認められています。
たとえば、石油から合成された防腐剤などがオーガニックコスメを名乗る商品に使用できるのは、サステナビリティの観点から望ましくありません。
一方、USDAオーガニック認証は「食品」に準ずる認証を受けるわけですから、当然のことながら石油系の合成成分は使用されていないというわけです。
デメター認証
世界でもトップクラスに基準が厳しいと言われているオーガニック認証の一つがデメター認証です。
デメター認証プログラムは1928年に設立された、有機栽培の食品に与えられる世界で初めての認証ラベルです。
USDA認証と同様、お肉や野菜、ワインといった食料品に対する認証制度ですが、化粧品も対象としている認証です。
デメター認証は、バイオダイナミック農法により生産された農作物、厳しい基準に則して加工された製品にのみ、認証マークをつけることが認められています。
欧米では、デメター認証を受けた農産物は、高い実績が認められ、高品質であると信頼を得ており、一種のステイタスともなっています。
バイオダイナミック農法は、太陽、月、惑星と地球の位置関係が土壌や生命体の成分及び気象等に与える影響を重視し、種まきや苗植え、耕うん、調合剤の準備や施肥、収穫などの時期を、月の満ち欠けや天体の動きにあわせて行われます。
化学肥料や農薬を使わず、天然成分で作った調合剤を使うことで、大地の力を引き出す農法です。
バイオダイナミック製法で作られた農産物は、通常栽培の物より、根の重量が18%も重かったというデータもあるんだとか。
- 植物原料:バイオダイナミック有機栽培農法で栽培された農産物を用いる事。植物原料の50%以上はオーガニックである事。
- 天然原料:95%以上は天然原料である事。香料は全て天然である事。
が審査基準とされています。
農薬は悪なのか?
地球温暖化や地球の生態系に問題意識を持つ私としては、出来るだけオーガニックが普及していくのが理想だと思っています。
しかし、だからといって、農薬をすぐになくすべきだとも思っていません。
というかそれは不可能です。
オーガニックが普及するためには、国が補助金を出したりして農家をバックアップする必要もあるし、何より消費者が有機野菜を買えるだけの賃金を得ている必要があります。
あらゆる条件が整ったうえで、慎重かつ丁寧に移行させていく必要があるのです。
2021年4月、スリランカは化学肥料輸入規制をかけ、全農作物を有機栽培にシフトしました。
しかし、十分な移行期間が設けられなかったスリランカの農家は、化学肥料の代わりに必要となる有機肥料の生産が追い付かず、たった6ヵ月で米の収穫量が20%減少することに。
そして10月下旬、結果的にスリランカ政府は一時的にこの方針を撤回し、農薬の輸入を再開すると発表しました。
スリランカの失敗事例からも分かるように、有機栽培への移行というのは、一朝一夕でどうにかなる問題ではないのです。
もっと言うと、気象条件や湿度によってオーガニック導入の難易度は大幅に変わってきます。
オーガニックに関する議論ではよく欧州が引き合いに出されますが、ヨーロッパの農業と、湿度が高く害虫が発生しやすい日本と同列に語ることは出来ません。
また、サステナブルな情報を発信していると
「昔は農薬を使わずに問題なく農業をやっていた」
「化学肥料や農薬のように人工的なものを使うべきではない」
といった主張をよく見かけます。
オーガニック推進派の私も、こういった意見は心情的には理解できます。
ただ当然のことながら、昔と今とでは地球上に生きている人間の数が異なります。
しかも、「人工的」という話を用いるのなら、農業は人工物の際たる例です。
人類が狩猟採集をしていた時代には、道端に生えているものを食べていたわけですから。
地球はそもそも、70億人以上の人間たちが、安定して作物を食べられるようには設計されていません。
農薬や化学肥料とも上手に付き合い続けつつ、できるだけオーガニックも普及させる。
これが、人類100億人の時代に向かっていくための持続可能な農業と言える気がします。
最後に
人類は産業革命以降、経済成長と豊かさだけを追い求めてきました。
その結果、大量生産・大量消費が当たり前となり、生産効率だけを追及した結果、地球の豊かさは大きく損なわれてしまいました。
しかし最近になって、従来の経済システムでは地球は維持できないことにようやく人類は気づき始めてきました。
農薬を使わない有機栽培は、持続可能な社会を実現するうえで重要なカギを握っています。
買い物は投票です。
オーガニックが売れれば、企業はオーガニックの商品づくりにシフトしていくはずです。
そして農家も、買ってくれる消費者がいるからこそ、安心して有機栽培へと移行ができるのです。
皆さんもぜひオーガニック商品を選んでください。
そして持続可能な社会に一票を投じましょう!
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