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SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」とは?世界の現状や取り組みを紹介

世界では都市化が進んでいます。

2007年以降、世界の人口の半分以上が都市に住むようになりました。

都市化は、知識・情報・人材を都市部に集積することで、国の経済成長のエンジンとなる役割を担っています。

しかし、都市化には大きな問題もはらんでいます。

都市化にはどのような問題があるのでしょうか。

また、国連が掲げるSDGsの11番目で「住み続けられるまちづくりを」とは一体どのような目標なのでしょうか。

【関連記事】SDGs(エスディージーズ)とは?17の持続可能な開発目標について解説

目次

10個のターゲット

「住み続けられるまちづくりを」

といっても、具体的な指針がなければ皆で同じ目標に向かって突き進むことができません。

というわけでSDGsはそれらの具体的な指針のことを「ターゲット」と呼んでいます。

SDGsは全部で17個のグローバル目標と169個のターゲットで構成されています。

そのうち、目標11についてはターゲットが10個あるということです。

11 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。
11.1 2030年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅および基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者、および高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11.4 世界の文化遺産および自然遺産の保全・開発制限取り組みを強化する。
11.5 2030年までに、貧困層および脆弱な立場にある人々の保護に重点を置き、水害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.6 2030年までに、大気質、自治体などによる廃棄物管理への特別な配慮などを通じて、都市部の一人当たり環境影響を軽減する。
11.7 2030年までに、女性・子ども、高齢者および障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
11.a 各国・地球規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部、および農村部間の良好なつながりを支援する。
11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対するレジリエンスを目指す総合的政策および計画を導入・実施した都市および人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015 – 2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11.c 財政および技術的支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつレジリエントな建造物の整備を支援する。

【関連記事】SDGs「169」のターゲットとは?達成基準を一覧で紹介します

世界の現状

世界の都市人口の割合は、1960年には約33.6%(約10億1900万人)でしたが、2018年には約55.3%(約41億9600万人)に増加しました。

そして2030年には50億人が都市で生活すると予測されています。

さらに2050年には、世界人口の70%が都市部に住むと予測されています。

都市化の問題点

都市部には多くの企業が集まり、技術革新や経済成長を遂げる原動力となります。

しかし、急激に都市化が進むことには多くのデメリットがあります。

CO2排出

世界の都市は、地球上のわずか3%の土地しか占めていません。

しかしエネルギー消費の60~80%、二酸化炭素排出の75%を占めています。

交通渋滞

都市化が進むことで自動車に乗る人も増え、交通渋滞の増加に繋がります。

例えばバンコク・ジャカルタ・マニラなどは、国の経済発展を支えた都市ですが、道路や公共交通機関の整備が追い付かず、同時に交通渋滞も大幅に悪化することになりました。

交通渋滞が進むと交通事故が増えたり、公共交通バスの利便性が低下することに繋がります。

そして何より、交通渋滞は純粋に経済的な損失を生むことに繋がります。

道路移動時間の約4割は渋滞に費やされていて、これは年間約280万人の労働力に匹敵すると言われています。

【参照】
https://www.mlit.go.jp/common/001123977.pdf
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=34068

ゴミ問題

都市化が進行すると、生活水準の向上などによりゴミの量が増加するとともに、ゴミの種類の多様化も進むため、ごみ処理の問題が課題となります。

一人あたりのゴミの排出量についても、都市規模が大きくなるほど増加する傾向があると言われています。

【参照】https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/s60/5380.html

災害の被害

都市部は建物やインフラが充実し、人口が集中している分、災害発生時の被害も大きくなりやすいです。

そのため、発生しても被害が少なくて済むレジリエントなまちづくりが必要となります。

建物の安全だけでなく、住む人々が都市計画や管理に参加できる仕組み作りも大切です。

スラム化

急速な都市化はスラム化を招くことにも繋がります。

なぜなら、稼ぎを求めて都市部に出てくる人の中には、都市の家賃や物価に対応できない人もいるからです。

現在、8億2800万人がスラムで暮らしており、そのほとんどが東・東南アジアに集中しています。

東・東南アジアと言えば、経済発展が著しい地域、すなわち都市化が進んでいる地域であると言えます。

そして今後30年間で、都市の成長の90%はアジアとアフリカで起こると予測されています。

無計画なまま都市化が起こると、スラム居住地が継続的に増加することを助長することに繋がります。

スラム居住地が増えると、治安の悪化に繋がります。

日本の取り組み

日本は少子高齢化という問題を抱える国であったため、比較的早くから都市化に対する問題に取り組んできました。

それが2014年に立ち上げられた「地方創生」というプロジェクトです。

地方創生とは、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保することを目指すプロジェクトです。

地方創生SDGs

SDGsが採択された2015年以降、SDGsを原動力として地方創生を推進しています。

地方自治体が主体となってSDGsの目標達成に向けた取り組みを行うことは、ひいては持続可能な地域の実現にも繋がりますからね。

そして地方公共団体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案した都市を「SDGs未来都市」として選定する制度をスタートしています。

コンパクトシティ

生活のあらゆる機能が近接した効率的で持続可能なまちづくりのことをコンパクトシティと呼びます。

日本ではひと昔から都市化への問題点に着目し、郊外への住宅地開発などが積極的に行われてきました。

これを、都市化とは対極にある郊外化と呼びます。

しかし、郊外化を進めたことで、多くの巨大ショッピングセンターなどが作られました。

地方都市では鉄道網が発達していないため、多くの人が自動車でショッピングモールを利用するようになったことで、逆に駅前にシャッター商店街を生み出す結果となってしまいました。

このような郊外化の問題点に着目し、あくまで歩いて行ける範囲を生活圏と定義し、交通機関として自転車にスポットを当てているのがコンパクトシティです。

富山市

人口減少と超高齢化社会、過度な自動車依存社会として有名だった富山市。

そんな富山市はコンパクトシティ実現のため「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」を掲げ、日本初の次世代型路面電車LRT(ライトレール)を導入しました。

自動車ではなく公共交通機関を利用する人が増え、沿線地域に住居や商業機能を集め、税収や人口といった面で一定の成果を収めています。

スマートシティ

AI、IoT、ビッグデータなどの先進技術を活用して、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化するまちづくりをスマートシティと呼びます。

スマートシティもコンパクトシティも、人口減少や環境問題、財政や経済の効率化、持続可能なエネルギー、交通の最適化という点では共通しますが、コンパクト化は「都市構造の空間的な集約化による効率化」を目的とし、スマート化は「ICT技術を活用した効率的な都市サービスの供給」を目的としています。

【参照】内閣府「スマートシティガイドブック

ウーブンシティ

出典:https://www.woven-city.global/jpn

トヨタが静岡県裾野市でウーブンシティと呼ばれる実験都市を開発しています。

このプロジェクトでは、人々が実際に生活を送る環境下で新しい技術の導入・検証を行うことが出来ます。

自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、AI技術などの技術が検証される予定です。

私たちに出来ること

都市化が進むことで「交通渋滞」「ゴミ処理問題」「CO2排出」などの問題が発生するわけです。

11.6でも都市部の一人当たり環境影響を軽減することを目標として掲げています。

だったら、都市に住む人たち個人がこれらの問題に取り組むことで貢献をすることが出来ます。

なるべく自動車に乗らないで自転車や徒歩で移動をする。

ゴミの量を減らす。

自宅の電力会社を、再生可能エネルギーを主電源とする電力会社に切り替える。

などなど。

最後に

人口が都市部に集中することには多くのデメリットがありますが、逆にメリットもあります。

例えば、人口が集中しているからこそ都市部でエネルギーや気候変動といった地球規模の問題に取り組めば、効果的に大きな変化が期待できるわけですから。

都市化が問題なのではなく、都市化をうまく制御することが求められているのです。

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この記事を書いた人

持続可能な社会の実現を目指す300人以上の生活者や企業が集まる「サステラコミュニティ」運営。生まれも育ちも神奈川県横浜市。現在は鎌倉市在住。2018年にWEBメディアの会社を起業。フォロワー9万人のInstagramを中心にSDGs、地球温暖化、エシカル消費などの情報を発信しています。

【プロフィール詳細】
https://susterra.net/ryu/

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