南北問題とは、主に経済発展の側面から見た先進国(北半球)と発展途上国(南半球)との間の格差問題を指します。
一般的には英語でグローバル・ノース、グローバル・サウスと呼ばれることが多いです。
「南北問題」という言葉は、1959年当時イギリスのロイズ銀行会長職オリヴァー・フランクスが、アメリカで行った講演の中で初めて使われたといわれています。
東西冷戦中だった当時「問題は東西だけでなく南北にもある」といった文脈で用いられた言葉です。
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原因
先進国(北側)は工業化が進み、経済が高度に発展しています。
一方で、発展途上国(南側)は農業中心の経済が多く、工業化の途中にある場合が多いです。
なぜこのような格差が生まれるのかといえば、それは貿易における「製造」と「生産」の歪みが原因として挙げられます。
産業革命に成功した欧米各国が工業品を製造し、かたや発展途上にある国は農業という形で自国の自然資源を提供する、という分業化みたいなものが19世紀末から起きはじめました。
起きはじめたといっても、自然発生的にそうなったのではなく、宗主国である欧米が植民地の国々を半ば強制的に、単一の作物を栽培するモノカルチャー経済へと転換したのです。
そうした構造は結果的に、先進国にはさらなる豊かさをもたらし、逆に発展途上にある国の自然は破壊され続ける、という歪みを生み出しました。
たとえば欧米の食品メーカーが安価で便利な植物油を必要とし、インドネシアやマレーシアから大量のパーム油を買い続けた結果、欧米の大企業は成長をし続け、インドネシアやマレーシアでは拡大し続けるアブラヤシ農園によって熱帯雨林が伐採され続けています。
南北問題は、自然資源の搾取と環境破壊だけでなく、労働力の搾取や人権侵害も生み出します。
先進国が抱えるファストファッションブランドは、少しでも安い洋服をつくるため、不当に安い賃金でバングラデシュの労働力を搾取し続けています。
2013年にはバングラディッシュの首都ダッカ郊外にある「ラナ・プラザ」という商業ビルが崩壊し、死者1100人以上・負傷者2500人以上・行方不明500人以上の大惨事まで発生しました。
現状
南北問題は解消されつつあるのかといわれると、対象となる品目とか国が変わっているだけで、解消されているとは言い難い現実があります。
それこそ、これから世界がシフトしようとしている電気自動車には大量のレアメタルが必要となります。
先進国が電気自動車を作り、車を動かすバッテリーに必要となる鉱物資源がコンゴから次々と掘り起こされ、そして現地には強制労働などの人権問題が発生している、というのも南北問題の一つです。
解決策
南北問題を解決するには、結局のところグローバルサウスの国々が経済発展をし、工業化を成し遂げるしかありません。
たとえば、IMFや世界銀行などの国際金融機関では、アメリカや欧州諸国が主導権を握っており、アフリカ諸国などの発展途上国の意見が反映されにくい状況があります。
そして先進国に有利な国際ルールが作られ、結果的に途上国は不利な立場に置かれて搾取され続ける、というスパイラルが存在するからです。
他方で、インドやブラジルなどの国々はグローバルサウスに分類されるような国でしたが、着実に経済成長と工業化に成功しつつあり、国際社会でも影響力を高めています。
国際社会においては資本力こそがその国の影響力となるため、無視できない国だと先進国に思わせるだけの経済力を備えるしかないのです。
まとめ
日本のような先進国に住む私たち生活者も南北問題の当事者です。
私たち消費者がファストファッションを買って支持し続けているから、バングラデシュの不当な労働はなくならないのです。
私たちが普段から食べているスナックやアイスは、無計画な森林伐採によって生み出されるパーム油によって作られている現実を知らないから、ボルネオの動物は減り続けているのです。
不当な労働に加担しないためにもフェアトレードの商品を買ったり、無計画な森林伐採を防ぐためにもRSPOなどの認証パーム油が使用された商品を選びましょう。
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