民主政治における組織票というバグに対抗する方法とは?

2022年の参議院選挙が終わりました。

投票日の2日前に元首相が銃撃に合うという、誰もが予想もしなかった激動の展開のまま、選挙戦は嵐のように過ぎ去りました。

一方で、自民党が大きく議席を伸ばしたという結果については、あまり驚きはなく、正直予想通りでした。

ウクライナ戦争のような安全保障を揺るがす出来事があれば、自民党のような保守勢力は基本的に支持率を上げます。

北朝鮮がミサイルを打つだけで支持率をあげるのが自民党です。

選挙戦が突入する直前には、物価上昇というマイナス要因があって多少なり支持率を下げたものの、政権を揺るがすほどではありませんでした。

2021年の衆議院選挙の際の内閣支持率ですら43%でしたが、今回の参議院選挙に関しては、6月22日の時点で内閣支持率が57%でしたからね。

どれだけ甘く見積もっても、自民党が負ける要素はありません。

投票率に関しては、今回の参議院選挙が52.05%で、前回の48.8%よりは上回りました。

ただ、それでも今回の投票率は過去4番目の低さです。

そして今回の選挙戦を通じて、政治に立ちはだかる大きな壁に気づいた人も多いかもしれません。

いわゆる「組織票」ってやつですね。

銃撃事件に関するニュースでも度々「宗教団体」というキーワードを耳にした方も多いことと思います。

早い話、自民党というのは宗教団体や経済団体など非常に多くの組織によって、投票という意味でも、お金という意味でも支えられているんです。

ちょっとやそっと投票率が上がるくらいじゃ勝ち目がないことは分かり切ったことでした。

ちなみに民主党が政権交代に成功した2009年は投票率69%。

せめてこれくらい投票率を上げ、無党派層の票を伸ばさないと、組織票には到底勝てないんです。

そして組織票に勝たせてもらった自民党は、例えば経済団体たちを喜ばせるために、大企業を優遇する政策をすることになるのです。

今回の選挙戦でもたびたび、野党の候補者が「消費税の増税は法人税引き下げの穴埋めのため」なんてことを言っていましたよね。

まぁその真意についてはさておき、いずれにせよこれが政治と資本の関係性です。

で、ここからが本記事で最も伝えたいことです。

組織票って聞くと、なんだか自民党や公明党だけがズルをしているかのように感じてしまいがちですが、実態はそうではありません。

ここは自民党憎しといえども、見誤ってはいけない部分です。

それこそ、立憲民主党や国民民主党をはじめとする野党勢力にだって票田となる組織票があります。

そして日本の政治において組織票が認められている以上、野党だって、本気で政権交代を目指そうと思ったら、組織票や政治献金を味方につける必要があるわけです。

でもこれは、言い換えるなら、仮に野党が政権交代に成功したとしても、その選挙戦で政権交代を支えた「組織」が確実にあったわけで、政権交代に成功した新たな政党もまた、その組織の支えに報いるための政治をせざるを得ないのです。

今回の選挙では立憲民主党は「消費税減税」を掲げていましたが、よくよく思い返してみると、消費税10%への増税を最初にぶち上げたのは民主党が政権与党にいた時代の話です。

つまり、たとえ政権交代が起こったとしても、根本的に政治と資本の力学が変わるわけではないのです。

元も子もない話に聞こえるかもしれませんが、資本主義国家における政治というものは、基本的に「資本」や「組織」に抗うことはできません。

選挙をするのにはまとまった票やお金が必要だし、支えてくれた組織を無視した政治は出来ない。

これは日本に限らず、世界中の民主国家で同じことが行われています。

あれだけ銃撃事件が起こって毎年多数の死者を出し続けているアメリカから銃がなくならないのは、共和党が全米ライフル協会から莫大な政治献金を受けているからです。

こういった政治の構造について、私自身、前回の衆議院選挙のときに強く実感しました。

これは資本主義国家の民主政治に存在するバグみたいなものです。

じゃあ社会変革なんてものは諦めなければいけないのか?

というと、決してそんなことはない、と私は思うわけです。

サステラコミュニティのZOOM等で私と話したことがある人なら何度も聞いたことがあると思いますが、私はいつも「3.5%」という数字を好んで使っています。

「ある非暴力的な社会運動に賛同する人の数が、人口の3.5%に達したとき、社会変革をもたらすことができる。」

ハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェスが提唱する説です。

1986年フィリピンのピープルパワー革命、2003年ジョージアのバラ革命が、まさに3.5%の賛同者を集めて社会変革に成功した事例です。

いえ、何も革命やクーデターを起こそうなんて話じゃありません。

結局のところ、政治が組織を無視できないのは、組織に沢山の有権者がいるからです。

そう考えると、社会に対して影響力を持っているのは「政治」というよりもむしろ「人の集まり」であると私は思うのです。

だったら私たちも政治が無視できないほどの人の塊になればいいのです。

例えば、気候変動という共通の問題意識を持っている人たちが沢山集まれば、それだけで政治に対して

「気候変動を無視するんじゃない」
「気候変動を重視している政党を支持するぞ」

という無言の圧力を加えることになります。

実際にみんなで同じ政党を支持する必要はありません。

同じ問題意識を抱えている人たちの集団がある。

ただそれだけで「この人たちを無視することはできない」と政治家に思わせる力を持ちます。

正直、私は前回の衆議院選挙で、政治と組織票という構造を肌で感じて、自分の一票にそこはかとない無力感を抱きました。

それでも私が投票に行くことの重要性を訴え続けるのは、もちろん少しでも投票率向上につなげたいという思いもありますが、それ以上に

「政治の構造について多くの人に知って欲しい」
「同じ問題意識を持つ仲間を増やしたい」

という想いが強いです。

そして、投票することも大事だけど、他にも社会を変革するための手段があるんだということも知って欲しいと思っています。

今回の選挙を通して、コミュニティに参加する人も増え、「社会を変えたい」と考える仲間が増えました。

ですから、私個人としては、今回の選挙結果に対して全く落胆しておりません。

民主政治のルールとして組織票が認められているのなら、こちら側もそのルールにのっとって社会変革をしていこうという話です。

今回の選挙が終わったら3年間は選挙が行われません。

政権与党にとっては黄金の3年間とか呼ばれる期間です。

でも私たちにとってはそれは停滞を意味しません。

この3年間で私たちは市民の力を付けるだけの話です。

2022年の参議院選挙こそ終わりましたが、気候変動も生態系の破壊も進行し続けるわけですから、私たちに止まっている暇はありません。

サステラコミュニティのアクションは始まったばかりです。

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