2022年になってから1ヵ月も経過していませんが、サステナビリティに関するニュースが次々と舞い込んできます。
つい最近、私が見たニュースの中で気になったのが
「レジ袋有料化によってレジ袋メーカーの業績が悪化し、希望退職を募っている」
というニュースです。
このような「サステナビリティの弊害」にまつわるニュースが出ると、Twitterでは鬼の首を取ったかのごとく批判の声が上がり、そしてバズります。
ですから、このニュースを見た後にTwitterを見てみると、案の定
「レジ袋有料化のせいで企業が倒産する」
「レジ袋有料化を廃止にしろ」
「プラスチック企業を保護すべきだ」
といった意見が散見されました。
なるほど、みなさんプラスチック企業の存亡について大変憂慮なされているようですね。
ただ私は思うわけです。
レジ袋有料化は、ビジネスをするうえでは当然発生しうるリスクであるということを。
そしてそのようなリスクを予見し、対処するのもまた企業の責任です。
少なくとも、2015年には「SDGs」が施行され、同年にパリ協定も締結されたわけです。
イギリスでは2008年からレジ袋が有料化されていますし、フランスは2016年からレジ袋の使用が原則禁止されています。
日本でレジ袋が有料化されるような未来が訪れることは、誰にでも、十分に予見可能だったはずです。
実際、そのような未来を見越して、バイオプラスチックの技術に投資してきた企業もあります。
むしろバイオプラスチック市場は2030年には168億米ドル規模になるとの予測もあります。
時代の変化に適応できるなら、むしろさらなるビジネスチャンスが広がっているわけです。
あるいは、自社で技術開発ができないとしても、買収という方法で生き残ることも可能です。
実際、プラスチック企業と同様に、サステナビリティの逆風を浴びている石油元売り大手のENEOSは、2021年に再生可能エネルギーのJREの買収を発表しました。
どんな方法であれ、時代の変化に適応する手立てはあるわけです。
予見可能なリスクだったこと、生き残る手段は残っていたこと、きちんとリスクに対処すればむしろビジネスチャンスだったこと。
こんな好条件がそろっているのに、いざ2020年にレジ袋有料化が実行されたら「レジ袋有料化のせいで企業が倒産する」「プラスチック企業を守れ」というのはさすがに「ビジネスとは?」と疑問をもたざるを得ません。
会社を経営することって、誰もが生き残ることが保証された安全なゲームなんでしたっけ?
すべての企業を平等に手厚く保護せよというのなら、レジ袋有料化を否定する前に、資本主義や自由主義を否定するべきです。
資本主義社会における民間企業は自由競争によって成り立っています。
歴史を振り返れば、時代の変化に対応できず淘汰されていった企業は数え切れないほど沢山あります。
産業革命によって蒸気機関が登場し、あらゆる産業が機械化されました。
そして世界は大量生産・大量消費社会へと移り変わっていくことになります。
プラスチック企業はこのような時代がもたらす恩恵を受けてきました。
一方で、産業革命という時代のうねりに飲みこまれ手工業職人は淘汰されていきました。
あるいは、インターネットの台頭によって古本屋やレンタルビデオショップなど、多くの企業が街から姿を消していきました。
テレビ、新聞、銀行…時代が移り変わる今、多くの企業が変化を迫られています。
「レジ袋を有料化する前にプラスチック企業を生かす努力をすべき」
という人たちは、AmazonやNetflixを使う前に古本屋やレンタルビデオショップを生かすための努力をしたのでしょうか?
Twitterでレジ袋有料化の批判コメントをツイートするとき、自分が手のひらで握りしめている小さな機械の誕生によって、どれほどの企業が淘汰されたのかは無視されるおつもりなのでしょうか。
少なくとも日本のような自由主義国家においては、企業が潰れるからといって「インターネットを普及させるな!」なんてことにはならないわけです。
直近で言えば、2020年に世界的パンデミックが起こり、多くの飲食店が潰れました。
これだって、経営するうえで発生しうるリスクの一つです。
少なくともレジ袋有料化は2015年から予見可能であったことを考えれば、突然発生したパンデミックよりも十分にリスク回避が可能です。
産業革命が起こったのも、インターネットが登場したのも、パンデミックが発生したのも、サステナビリティが重視され始めたのも、企業経営をしていれば発生しうるリスクの一つです。
リスクに対処せず淘汰されるのも、それは自由競争における自然の摂理であり、企業の責任です。
私自身、自営業者でありますから、企業というものはリスクと常に隣り合わせであることを十分承知しております。
そして経営が上手くいっていないのは、社会のせいでもなく、時代のせいでもなく、紛れもない自分自身の選択の結果であることも。
誰にお願いされたわけでもなく、自分の意思で起業をしたわけですからね。
それは私のような自営業者であれ、プラスチックの大手企業であれ、同じはずです。
時代の変化にどう対応すべきかを考えるのは企業自身です。
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