2023年6月29日、EUDR(欧州森林破壊防止規則)と呼ばれる新しい法律が発効されました。
EU市場で販売、もしくはEU市場から輸出される対象品に対して「森林破壊に関わっていない」と証明することが義務付けられる法律です。
大企業には2024年12月30日から、中小企業については2025年6月30日から適用が開始され、違反をすれば罰則が課せられます。
1990年から2008年の間に、EUからの輸入は農作物に関連した森林破壊の36%、反芻動物の家畜製品に関連した森林破壊の25%以上に相当しました。
EUDRの実施は、森林伐採と森林劣化の影響を年間71.92kha、またはサッカー場約100,728面分削減し、CO2 排出量を年間3,190万トン削減することを目的としています。
対象商品
EUDRは7つの商品(牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材) に加え、多くの派生製品(肉製品、皮革、チョコレート、コーヒー、ヤシの実、パーム油誘導体、グリセロール、天然ゴム製品、大豆、大豆粉と油、燃料用木材、木製品、パルプと紙、印刷本)などが対象になります。
インドネシアやマレーシアなどアジアの主要パーム油生産国の経済、ブラジルやアルゼンチンなどの農業関連産業、コートジボワールやガーナなどからのEU向けカカオ輸出などが大きな影響を受けることになります。
罰則
違反をした場合は以下のような罰則が科せられます。
- EU域内での年間総売上高の4%以上の罰金
- 当該商品&当該商品の取引によって得た収入の没収
- 公的調達プロセスおよび公的資金へのアクセスから一時的に除外(最大12ヶ月間/入札手続き・助成金・コンセッションを含む)
- EU域内における当該品目の一時的な取引禁止(重大な違反・繰り返しの違反の場合)
- 「低リスク国」の場合、簡易デューディリジェンスの実行禁止(重大な違反・繰り返しの違反の場合)
課題
小規模生産者がサプライチェーンから排除される可能性が指摘されています。
EUDRの基準をクリアしようと思ったら、森林破壊されていないことを証明するための新たなコストが発生します。
大企業は、トレーサビリティレポートを提供し、要件を遵守するための資金力と技術的能力がありますが、小規模生産者だとそうはいきません。
実際、2023年3月、インドネシアの小規模自作農数名がジャカルタの欧州連合代表団本部前で抗議活動を行ったり、マレーシアの小規模農家団体もブリュッセルを訪れ、EUDRの変更を要求したりしています。
最後に
農業による森林破壊は深刻な問題です。
世界の森林破壊のおよそ90%が農業、40%は家畜の放牧が原因だと言われています。
EUは1990年から2008年の間に森林破壊に関連して世界中で取引された農産物の3分の1を輸入し、消費したと考えられています。
EUが規制をかけるだけでも、世界の森林破壊を大幅に抑制することができるわけです。
森林破壊、温室効果ガスの排出、生物多様性の損失を最小限に抑えるためにもEUDRは必要な規制です。
【文献】
・https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32023R1115&qid=1687867231461
・https://environment.ec.europa.eu/topics/forests/deforestation/regulation-deforestation-free-products_en
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