多くの人は人生のあらゆる場面で「生きる意味」とか「幸せとは」みたいなテーマと対峙することになると思います。
で、もしかしたら「物」や「お金」を追い求めるだけでは幸福にはなれないんじゃないか、と感じている人は多いと思うんですよね。
高度経済成長やバブルの時代は「今日よりも明日の方が豊かになっている」と誰もが信じて疑わない時代でした。
そして豊かさを求めれば、成長し続ければ、その先に幸せが待っているという価値観もあったんだろうと思います。
でもバブル崩壊後に生まれた世代は、豊かさを求めても、なんら見返りがない時代を生きてきました。
1990年代中盤から2010年代序盤までに生まれた「Z世代」と言われる人たちは、モノを持たない世代なんて言われてますが、要するに「物質」では短期的な欲求を満たすことはできても、人生という長期的な幸福にはなりえないんだろう、ということに気づいているんですよね。
別にバブル期以前の世代の人たちの価値観が間違っていたなんて言うつもりはありません。
だって実際、当時は賃金が上昇していたし、豊かになっていたのは間違いないわけですから。
でもその価値観が今の時代に合わなくなってきている、という話です。
豊かになると信じて一生懸命に働いても、見返りが得られない時代になってきているわけです。
社会全体が、時代に合った価値観にアップデートする必要はあるんだろうと思います。
ウェルビーイングとは?
最近ビジネスシーンで「ウェルビーイング」という言葉を耳にする機会が増えました。
実はSDGsの中でもウェルビーイングの追求は目標として掲げられていたりします。
ウェルビーイングとは
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること。」
という意味です。
ちなみに「幸福」といえばハピネスという言葉に訳されますが、ハピネスはあくまでも一時的な幸福を指します。
お金を稼いだり、欲しいものが手に入ったりすると、ドーパミンが分泌され、一時的には欲求が満たされます。
ドーパミン的幸福ってやつです。
でも、ドーパミン的幸福のデメリットは、その幸福感は長続きしないという点です。
しかも手っ取り早く幸福感を満たせるため、際限なくドーパミン的幸福を求めようとしてしまいます。
また、お金を稼いでも「もっと稼がないと」と思ったり、欲しい物を手にしても「あの人はもっと良い物を持ってる」といったように、他者と比較をすることにも繋がります。
お金や物といったドーパミン的幸福は、長続きしないどころか、劣等感を抱くことにも繋がるのです。
実際、お金で買える幸せには頭打ちがあるという論文*もあります。
そうではなく、ウェルビーイングはより長期的で、持続的な幸福を追求することを意味します。
*Happiness, income satiation and turning points around the world
注目されている背景
ビジネスシーンでウェルビーイングが注目されるようになったのは、SDGsもあるでしょうけど、日本的な文脈でいえば「過労死」とかが背景にあったりすると思うんです。
これまでの資本主義的なロジックで「成長」「利益追求」ばかりが優先され続け、その価値観を新しい世代の人に押し付けた結果が過労死です。
もうそんな前時代的な価値観のままでは、企業も労働者も持続可能ではなくなってきているのです。
ですから、ただ働くだけでなく、自らの幸福も追求していこう、ということでウェルビーイングが注目されているんだろうと考察しています。
ウェルビーイングについて、ギャラップ社が140を超える国や地域で大規模調査を行いました。
ギャラップ社とは、「世界幸福度ランキング」とかにも関わっている企業です。
そして、ギャラップ社の大規模調査によって、ウェルビーイングを追求するための条件がいくつかあることが分かりました。
Career well-being(キャリア ウェルビーイング)
キャリアの幸福のこと。仕事だけでなく人生もキャリアの一部ととらえ、仕事とキャリアの両方で幸福を構築する。例えば家事、育児、勉強、ボランティアなども含む。Social well-being(ソーシャル ウェルビーイング)
人間関係に対する幸福のこと。どれだけ沢山の交友関係があるかだけでなく、信頼できて愛情のある人間関係があるかどうかがポイント。Financial well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)
経済的な幸福のこと。報酬を得ることが出来ているか、報酬に納得しているか、資産管理ができているかなど。Physical well-being(フィジカル ウェルビーイング)
身体的な幸福のこと。心身ともに健康であるか、思い通りに行動ができているか。Community well-being(コミュニティ ウェルビーイング)
コミュニティを形成できているかどうか。地域、家族、友達、学校、職場など。
コミュニティ形成
ウェルビーイングを追求する条件の中に「コミュニティを形成できているかどうか」が重要だということが分かっているんですよね。
ギャラップ社の調査だけでなく、ブリティッシュコロンビア大学の経済学者、ジョン・ヘリウェル教授も、ウェルビーイングを高めるためにお金以外で重要なのは「人とのつながり」であると言っています。*
地域、家族、友達、学校、職場でコミュニティを形成できているかは、ウェルビーイングを追求するうえで重要なわけです。
でも、学齢期を過ぎると、新しいコミュニティを形成するのってなかなか難しくないですか?
学生時代の友人たちも徐々に家庭を持ち始めていって、コミュニティというよりは、ごく少数で会うことが多くなったりしますし。
多くの人は「家族」か「職場」が主なコミュニティになりますよね。
でも、職場って「いたいコミュニティ」というより「いるべきコミュニティ」という性質がありますよね。
場合によっては家族すら自分の価値観を共有できていない人もいます。
国によっては、宗教とかがコミュニティの役割を果たしていたりしますよね。
でも皆さんご存知の通り、日本は特定の宗教を信仰している人は少ないです。
そう考えると、幸福を追求するうえでコミュニティってとっても大切なのに、多くの人はコミュニティを形成することができずにいるんです。
ちなみに2022年版の世界幸福度ランキングで、日本は54位、先進国の中では最下位圏です。
幸福度はGDPとか社会保障制度とか色々な要因が考慮されているので一概に「これが原因」とは言えません。
しかし、もしかしたらコミュニティが形成できていないことも、日本人の幸福度が低い要因の一つなのかもしれません。
*John F. Helliwell, Lara B. Aknin. Expanding the social science of happiness. Nature Human Behaviour (2018) 2:248-252.
サステラコミュニティ
私はサステラというメディアでSDGsとか脱炭素といったサステナブルな情報を発信しているわけですが、こういう分野ってどうしても
「正義感が強い人だと思われたくない」
「意識高い系だと思われたくない」
という心理が働きやすく、同じ価値観を持った人たちを見つけるのが難しい分野でもあるんですよね。
- 幸福を追求するうえでコミュニティを形成するのが重要
- サステナビリティについて話し合える人がいない
これらの考慮し
「サステナビリティに関心を持つ人たちが集まるコミュニティをつくるしかない」
という思いから「サステラコミュニティ」が開設されました。
サステナブル生活を送る人たちが集まり、チャットをしたりZOOMをしたり、あるいは一緒に交流会をしたりゴミ拾いをしたりするコミュニティです。
コミュニティを開設してからまだ日が浅いですが、すでに多くの人に入会して頂いております。
再生可能エネルギーに詳しい人、アニマルウェルフェアに詳しい人、オーガニックに詳しい人、大学院でサステナビリティ学を学んでいる人、医療の知識がある人、サステナブルビジネスの経営者、アメリカ・カナダ・オーストラリアなど海外に住んでいる人。
年齢も20代~60代まで本当に幅広い世代の方がいらっしゃいます。
様々なバックグラウンドを持った人たち、色々な専門知識を持った方たちが集まり、日々情報をシェアして頂いていて、私自身、毎日新たな発見や学びがあると実感しています。
ぜひ皆さんもサステラコミュニティに参加し、ウェルビーイングを追求してみませんか?
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