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LOVST TOKYOの植物性レザーはいかにして社会に変革をもたらすのか?

牛のゲップに含まれるメタンの温室効果であったり、牧草地の拡大による森林伐採など、畜産業、特に牛肉の生産による環境負荷は非常に高い。

そんな背景から、動物性を避けるライフスタイルはいま世界中で注目されている。

皆さんも一度くらいは「大豆ミート」の商品をスーパーやカフェで見たり、食べたりしたことがあるのではないだろうか。

ただ、プラントベースへのシフトが進んでいるのは、何も食品だけではない。

ファッション業界でも動物性の皮や毛皮を用いないヴィーガンファッションが世界で普及しつつあり、日本でもじわじわと注目を集めるようになってきている。

特に20代~40代ほどの女性たちから高い支持を得ているのが、廃棄される「リンゴ」を活用した「アップルレザー」をはじめとする植物由来のヴィーガンレザーブランドの「LOVST TOKYO」だ。

一体なぜ廃棄されるリンゴをつかったレザーを展開することになったのか?

消費者が植物由来のレザーを買うことがどのような社会変革をもたらすのか?

ブランドの代表、唐沢海斗さんからお話を伺った。

目次

LOVST TOKYOを立ち上げた背景

サステラ

ヴィーガンレザーのブランドをはじめようと思ったきっかけは何ですか?

唐沢さん:実は、最初はヴィーガンに対する印象はあまり良くなかったんです。笑

私は学生時代をインディアナの州立大学で過ごしたんですが、その当時僕がお付き合いしていた方が、突然ヴィーガンになったんですよね。

ちなみにその方は、Facebookで流れてきた屠殺の映像を見てからヴィーガンになることを決意して、私にもお肉を食べないよう求めてきました。

でも、インディアナ州は田舎ですし、当時はヴィーガン対応のお店などもほとんどなかったので、ヴィーガンというライフスタイルを選択したら、むしろ不都合の方が多いなと。

正直そんな印象だったんです、、、。

そうしたこともあって、ヴィーガンというライフスタイルへの印象はあまりよくありませんでした。

ただ、大学を卒業して仕事で北カリフォルニアのエリアに移住し、暮らし始めた際にその印象が一変しました。

やはり西海岸のエリアは、色んな考え方やライフスタイルが混在して成り立っているだけあって、スーパーやモールに行けばちゃんとヴィーガン対応食があるし、そこでできた友達も

「私はヴィーガンじゃないけど、たまにヴィーガンフードも食べるよ!」

といった感じで柔軟に生活の中に取り入れていたんですよね。

また同時に、自分自身もどこかで「ヴィーガン」のような多様な選択に対して偏見を持っていたなと反省しました。

そのライフスタイルを選択することは、例えば動物愛護という一側面だけではなく、畜産由来の社会課題の解決にも繋がるということを再認識したんです。

そして、こんな原体験を持つ僕だからこそ「ヴィーガン」のようなライフスタイルをきっかけに多様な生き方を尊重できる文化を東京から発信できるんじゃないか。

そんな想いから「LOVST TOKYO」を立ち上げました。

植物由来のヴィーガンレザーにたどり着いた理由は、通常のヴィーガンレザー(動物性以外の合成皮革などの人工レザー)は石油系の樹脂に依存してしまっていたため、いくら動物に優しくても環境にはどうなんだろうという懸念があったからです。

そこで廃棄されていた果物や植物を合成レザーの原料の一部として再活用し、石油由来の樹脂の量を減らすことができる植物由来のヴィーガンレザーはまさに最適なソリューションだと思いました。

畜産業の環境負荷

サステラ

植物由来のヴィーガンレザーを選択することがなぜ地球にとって良いんですか?

唐沢さん:動物性レザーと比較した際に環境負荷が低いことはもちろんですが、それ以前に現状の課題の整理とそれに起因する産業構造全体を理解する必要があると思っています。

人間が排出しているCO2排出量の14.5%が畜産由来と言われています。

量にすると年間約70億トン、日本全体のCO2排出の約7倍のCO2が世界で排出されている計算です。

最近はヴィーガンやプラントベースの市場が拡大しているから畜産業は縮小していくと思われがちですが、実は人口増加に伴い、安定的に成長していく産業だとも言われています。

食肉の需要が増加し続けるとさらに牛を育てなくてはいけなくなりますから牧草地が必要です。確か森林伐採の30~40%は畜産由来と言われていますよね、、、

また、そこから来る大量の原皮(なめし加工される前の皮)をわざわざ大量の水や化学物質を使用して加工する必要はあるのか疑問が残ります。

レザーは食肉の副産物と言われていますが、産業構造全体を捉えたときにその消費自体が結果的に環境負荷の高い産業を後押しし続けている構造になっているのであれば、それに代わる新しいソリューションを提案していくべきではないでしょうか。

植物由来のヴィーガンレザーアイテムを通して、ファッションを楽しむと同時に現状の課題に目を向けるきっかけを作れたら嬉しいですね。

アップルレザーとは?

サステラ

植物由来のヴィーガンレザーの中でも、LOVST TOKYOといえば「アップルレザー」を使った商品だと思いますが、その特徴を教えてください。

唐沢さん:はい、私たちが今メインで採用しているのが、廃棄リンゴから生まれた「アップルレザー」です。

「アップルレザー」は、リンゴジュースの工場から出る搾りかすの一部が産業廃棄されていたという背景から、それを乾燥させてパウダー状に分解したものを樹脂と合成することで生まれました。

国産アップルレザー

サステラ

使用しているアップルレザーは海外産ですか?

唐沢さん:2021年にブランドを創業した当時は「アップルレザー」の発祥と言われているイタリアのアップルレザーを採用していました。

ただ「いつか国産でも展開してほしいです!」というお声をお客様からいただくようになり、僕たちも将来的には国内で展開したいと思っていたんですよ。

そんなとき、青森県の県庁の方から「青森県にもリンゴジュースの搾りかすが余ってるから日本でも何かできないか?」というご相談をいただきました。

でも僕たちは製造工場を持っているわけではないので、協力してくれそうなメーカーさんに話を持っていったのですが、最初はあまり乗り気になってもらえませんでした。

大きなラインを動かしている工場で新しい企画の製品を製造するとなると普段の生産スケジュールを調整する必要がありますし、そこまで手間をかけて「本当に売れるのか?」という懸念があったからだと思います。

ただ、海外の事例も含めて熱心に説得し、一年くらいかけてようやくメーカーさんにも承諾していただきました。

そして、せっかくやるからには良いものを作ろうと、高耐久で動物性のレザーにも見劣りしない青森県産の「アップルレザー」をついに生み出すことができたんです。

商品について

サステラ

LOVST TOKYOではどんな商品を展開していますか?

唐沢さん:まず価格帯で言うと、小物や雑貨だと5,000円くらいで、ハンドバッグだと1万円~2万円です。

もう少し大きいトートバッグやリュックだと3万円いかないくらいの金額で販売しています。

サステナブルを少しでも多くの人に身近に感じてもらいたいので、これからも中価格を維持していきたいと思います。

商品やデザインの特徴は、様々なシーンで使いまわせて飽きが来ないよう機能的なマルチウェイやファッショントレンドに流されすぎず長く愛着を持って使えるような商品を企画しています。

また、好きな文字や数字を入れられるカスタムメイドの商品も記念日やギフト向けによくご購入いただいてます。

ものづくりへのこだわり

唐沢さん:もちろんデザイン性も大切ですが、何より長く愛着持って使っていただけることが本質的なサステナブルですし「ものづくり企業」としては大切にしていきたいと思っています。

そういった意味で、国産のアップルレザーに関しては原料調達から素材の企画までメーカーさんと一緒に行い、自分達が機能面や耐久性においても本当に納得できる素材に仕上げることができました。

例えば、一般的な合成レザーですと、加水分解という表面がポロポロしてきてしまう現象に弱いですが、国産アップルレザーに関しては、10年ほどの耐久性を試験で証明しています。

また、オプションで製品保証の延長や何かあった際の修理にもできるだけ柔軟に対応できるようにしています。

歴だけで言うとまだまだものづくり企業としては学習フェーズにいるのかもしれませんが、日々学ばせていただきながら良いプロダクトをお届けできるように精一杯精進していきたいと思っています。

ブランドのミッション

サステラ

どんな想いでLOVST TOKYOを運営していますか?

唐沢さん:私たちがブランドミッションとして掲げているのが「CIRCULAR LIVING.(サーキュラーリビング)」です。

簡単に説明すると、「自分自身の成功体験から始まる、優しい気持ちの循環」といったイメージです。

やっぱり自分が満たされていない状態で外に気持ちを向けることってなかなか難しいと思うんですよね。

なのでまずは僕たちも、ユーザーさんが抱える「ポジティブな罪悪感」に寄り添いながら、ブランドの世界観や商品を通して喜んでもらいたいんです。

そして、そこから生まれたポジティブな気持ちが循環してより多くの人たちを巻き込んでいけるんじゃないかなって思っているんです。

要するに利己的な利他体験を提供していきたいと思っています。

また、最近は使い終わった鞄の再活用にも試験的に挑戦しているんです。

まだ実用化していくのはこれからですが、回収した商品を環境負荷の少ない形で炭にして資源として活用するような仕組みを作っていきたいと考えています。

これも「使い終わった鞄を捨てるのはなんかもったいないな」と言うユーザーさんの想いに応えるために少しずつ形にしていこうと思っています。

今後の展望

サステラ

LOVST TOKYOの今後のビジョンについて教えてください。

唐沢さん:今年の8月に予約制のショールームを南青山にオープンしました。

駅からは少し離れていますが…私たちとお客さんだけしか知らないような体験空間、秘密基地のような場所につくりたかったという想いがあります。

もともとオンラインとエシカルな暮らしさんの2つが販売チャネルだったんですが、僕たちの世界観を常設的にしっかり表現できる場所がなかったので、ショールームをつくることにしました。

ご購入特典でヴィーガンスイーツが楽しめたり、ガチャガチャができたり、、、せっかくなのでこの先は内緒にしておきましょうか笑

ご興味がある方は下記のリンクをチェックしてもらえると嬉しいです!

ショールーム予約リンク:https://lovst-tokyo.com/products/showroom-reservation

さいごに

個人的には「デザインで選ばれている」というのが重要なポイントだと思っている。

私のように、すでに環境問題に関心を持っている層は「環境に優しい」という理由が購買理由になる。

しかしそうした問題に無関心な層はそうは、コスパが良かったり、機能性が優れていなければ、購入には至らない。

そして環境問題に無関心な人が社会の中で多数派を占めている現状を鑑みれば、無関心層の購買行動をエシカルにシフトしなければ、地球規模の問題は到底解決し得ない。

そういう意味で、デザインで選ばれているということは、無関心層にアプローチできていると言える。

極端な話をすると、地球にとっては私たち人間が「何を考えて行動しているか」は全く関係がない。

求められているのは「行動」だけなのだ。

無関心層が「デザイン」を理由に買ったとしても、それが結果的に環境負荷の小さい商品であれば、立派に地球環境にとってポジティブな影響を与えていると言えよう。

また、代表の唐沢さんは今冬、新たにメンズのバイオレザーブランド「CULMEN(カルメン)」を展開していくと語っていた。

大手のエネルギー企業さんとの協業という形で推進しているプロジェクトらしく、自社だけではなく他社を巻き込みながらソーシャルインパクトを最大化する狙いだ。

日本のエシカル消費をけん引していくブランドの一つとしてこちらも大いに期待している。

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この記事を書いた人

持続可能な社会の実現を目指す300人以上の生活者や企業が集まる「サステラコミュニティ」運営。生まれも育ちも神奈川県横浜市。現在は鎌倉市在住。2018年にWEBメディアの会社を起業。フォロワー9万人のInstagramを中心にSDGs、地球温暖化、エシカル消費などの情報を発信しています。

【プロフィール詳細】
https://susterra.net/ryu/

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