▶SNSでお困りのエシカルブランドをサポート

オーガニックコットンのTシャツをGOTSという世界基準でつくる理由

国連がSDGsを採択してから10年が経過し、我が国においてもサステナブルとかエシカルはすっかり馴染みあるキーワードとなった。

相変わらず紙ストローの話題になるとXやヤフコメでは炎上したりして、賛否が別れることも多々あるが、地球環境に配慮した商品づくりにシフトしたりして、企業も何かと変化を迫られていることは間違いなさそうだ。

なかでも「環境汚染産業」としてやり玉にあげられることの多いファッション業界は、多くの企業・ブランドが環境配慮をうたった商品をラインナップしている。

特に街中でよく見かけるのがオーガニックコットン製品だ。

農薬を使用や化学肥料せず、水の使用量も大幅に減らせるため、通常のコットンよりも環境負荷が小さいということで注目されている。

オーガニックコットンといえば、数年前までパタゴニアのような環境意識の高いブランドだけが取り扱う物珍しい素材だったが、最近ではファストファッションですら取り揃えているほど普及し始めている。

(そうは言っても世界の綿花生産量のうちオーガニックコットンが占める割合はまだ1%程度だが)

綿花の栽培には大量の水や農薬を必要とするため、環境負荷の小さいオーガニックコットンが普及しつつある現状は大いに歓迎したいところだ。

ただ、いま日本におけるオーガニックコットンの広がり方は、あまり健全ではないかもしれない。

GOTS(Global Organic Textile Standard)」が、日本では全く普及していないのだ。

そしてこうした状況が変わらければ、日本の繊維産業の衰退を招く可能性があると私は考えている。

目次

オーガニックコットンの現状

GOTSとは、製品の製糸・織り・編み・染め・保管・流通など、繊維製品を作る全プロセスで「オーガニック原料から作られた繊維製品が正しくオーガニックである」ことを保証する国際基準のこと。

ぜひ皆さんもお気に入りのお店に行ってGOTSのラベルを探してみて欲しい。

ショッピングモールにいって片っ端からお店に入って探してみたっていい。

きっと「オーガニックコットン」をうたう商品はすぐに見つかるはずだ。

でも、GOTS認証ラベルを見つけることはできないだろう。

店員さんに「GOTSのラベルありますか?」と聞いてみてもいいかもしれない。

もしかしたら「なんですかそれ?」という顔をされるかもしれない。

GOTSのラベルは全く普及していないし、存在を認識すらされてすらいない。

サステラのSNSでもたまに、GOTS認証を解説する発信をするのだが、毎回心苦しく感じている。

その投稿を見たユーザーが「よし探してみよう」といってお店に行っても、見つかるはずないのだから。

【コットンと環境負荷】
ジーンズ1本分の綿を生産するには1万リットル以上の水が必要と言われ、これは1人分の飲み水の10年分に相当する量だ。
また、通常のコットンは栽培するときにかなりの量の化学肥料や農薬が使用される。世界の耕地面積のたった2.5%に過ぎない綿花畑において、世界の農薬の6.8%、殺虫剤の15.7%が綿花の栽培で使用されている。農薬をまいた農地などから発生する亜酸化窒素ガスは、二酸化炭素の310倍の温室効果があると言われている。農薬や化学肥料は土壌の微生物を殺してしまい、土地がやせ細り、生物多様性を損なう。
【オーガニックコットンのメリット】
一方、オーガニックコットンの場合は水の使用量は243リットルで済む。コットンの栽培で使用する水はブルーウォーター(河・湖の水)とグリーンウォーター(雨水・土壌に蓄えられた水)の2種類があり、農薬を使用していない健全な土壌は水の吸収力と保持力が優れているため、ブルーウォーターに頼る必要がない。

またオーガニックコットンは農薬は化学肥料を使用せず、殺虫剤の代わりにてんとう虫などの益虫を使ったり、ニンキクや唐辛子など刺激臭のある植物を植えたりして、害虫対策をする。収穫の際には、通常のコットンのように枯葉剤を散布したり機械を使って刈り取ったりせず、ひとつづつ丁寧に手摘みで収穫をしていく。農薬にも機械にも頼らないので、温室効果ガスの排出量は通常のコットンに比べて46%も少ない。

オーガニックと認証

ここで一度「なぜオーガニックには認証なんてものが必要なのか?」という点をおさらいしておこう。

皆さんはスーパーで買い物をしているとき「JAS」と書かれた商品を見たことはないだろうか。

あれは「有機栽培でつくられた食品であることの証明」だ。

  • 堆肥などによる土づくりを行う
  • 2年(多年生作物の場合は3年)以上の期間は禁止されている化学肥料及び農薬は使用しないこと
  • 遺伝子組み換え技術を利用しない

といった感じの基準1があり、第三者から審査を受け、合格した畑で作られた野菜ですよ、ということをラベルが証明してくれるわけだ。

もしラベルがなかったらどうなるか想像してみよう。

近所のスーパーに行き、トマトを手に取って「うむ、このトマトは確かに2年以上農薬が使用されていない畑で栽培されたやつだ」と見分けることができるだろうか?

目で見ても、ニオイをかいでも、もっというと実際に食してみても、農薬使用の有無を判別することなどできない。

農家さんの写真を商品に貼って「これはオーガニックです」「私が証明です」と書かれていたら?その農家さんと知り合いでもない限り、なんの証明にもならない。

買い物をするたび、その食品をつくってくれた農家の住所を調べ、「本当に農薬を使用していないか」なんてことを畑の前で2年間張り込んで確かめるわけにもいかない。

そう考えると、私たちの代わりに「本当に2年以上農薬を使用していないかどうか」を確かめくれる人は必要だし、しっかり審査をクリアしていた食品に関しては「これは間違いなく有機だよ」というお墨付きをしてくれる仕組みが必要だろう。

たとえば初対面の学生Aと学生B、2人から「私は必ず東大に受かります」と言われたとしよう。

学生Aは「自分は東大に受かる学力がある」と自信満々に力説してくる。

学生Bは「東大合格A判定」と書かれた河合塾の模試の成績表を見せてくれた。

さて学生AとBの「私は必ず東大に受かります」という言葉は、どちらの方が信ぴょう性が高そうだろうか?

きっと学生Bの方が合格しそうな気がするはずだ。

2人の学生がどれほどの学力があるか初対面では知りようもないからだ。

でも学生Bは、河合塾(第三者)の模擬試験(審査)を受け、河合塾から「この学生は東大に合格する可能性が高い」と「お墨付き」をもらっているので、私たちは学生Bの言葉に信ぴょう性を感じてしまうのだ。

「自称」だけでは不十分「第三者のお墨付き」が必要は理由がなんとなくお分かりいただけるだろうか。

話をオーガニックに戻すと、もしオーガニックに対して何の基準も設けず、誰でも自由に「オーガニック」を名乗り放題になってしまったら、きっと人は「有機栽培」というもの自体を信じなくなってしまうだろう。

私たちと商品とがスーパーで初めて対面したとき、その商品が言う「私はオーガニックです」という言葉を信用できる仕組みが必要なのだ。

もし「自称オーガニック」なんてことがまかり通るなら、農薬使用中止から2年以上が経過したのか、たった1週間しか経過していないのか、消費者は確かめるすべがなくなってしまう。

  • 現在農薬を使用中の畑
  • 1週間だけ農薬使用を止めた畑

この2つでとれた野菜に、一体どれほどの差があるだろう?

2年という期間が設けられているのは、土壌に含まれる化学残留物が分解されるのにそれくらいかかるからだ。

もし「1週間だけ農薬使用を止めた畑で作られた野菜」すらもオーガニックを名乗れるようになってしまったら、きっとそんなものに高いお金払ってお金買う人はいなくなるだろう。

もっというと、農家は有機栽培に取り組むモチベーションが湧かなくなるだろう。

有機農業をするということは、農薬や化学肥料が使えないのだから、必然的に生産効率が落ちることになる。

ただ、生産効率こそ落ちてしまうものの、その分「オーガニック」という価値を付加し、商品単価を上げることで成立するのが有機食品なのだ。

それなのに、もし1週間だけ農薬使用をやめた畑ですらオーガニックを名乗れるのなら、わざわざ2年間も生産効率を落として農薬使用を中止する理由がない。

このように、消費者と農家を保護するためにも「JAS」という認証制度が必要なのだ。

GOTS認証について

オーガニック製品を認証するラベルが「JAS」なら、冒頭から言ってる「GOTS」ってのは、一体何のために存在する認証なんだ?と思われるかもしれない。

簡単に言うと、「農業」を認証するのがJASで、「加工」を認証するのがGOTSだ。

コットン製品にJASのラベルを見つけることはできない。日本ではほとんど綿花が生産されておらず、大部分は中国やインドから輸入されたコットンを使用しているからだ。

コットンの場合、野菜や果物といった農作物とは異なり、「加工」のプロセスが不可欠だ。

果物や野菜は、収穫してそのままお店で売る、ということが成立する。ミカン狩りに行けば収穫してその場で食べることだってできる。もぎたてのミカンは最高に美味しい。

しかしコットンの場合、収穫した綿をそのままお店に並べても、誰も買う人はいない。収穫した綿を握りしめても、その場で立ち尽くすしかない。洋服やタオルなど、何らかの形状になって初めてお店に並べられるのがコットンだ。

そして、アパレル産業の加工のプロセスは複雑に多層化している。

畑でコットンを育ててから1枚のTシャツが店頭に並ぶまでの間に、非常に多くの人・企業・作業工程がミルフィーユのように挟まっている。

これこそが、コットン製品の「加工」の段階を審査するGOTSが必要な理由だ。

コットン農家が「うちの畑では間違いなくオーガニックで作ってるから安心してよ!」と言っていたとしても、それはなんの保証にもならない。

その農家は、工場でどんな風に加工され、どんな薬剤が使われていたか、従業員がどんな扱いを受けているのかまでは知る由もないからだ。

そんなわけで、世界では「オーガニック繊維の加工に関する世界基準を決めよう」という動きがあるのだ。

そしてGOTSのラベルがあれば、少なくとも原料のうち70%以上がオーガニック繊維であることが保証されている。

ラベルがなければ、商品の原料のうちオーガニック繊維がたった1%しか含まれていない可能性もあるということだ。

また、オーガニックな繊維が使われているというだけでなく

・製品の追跡可能性(トレーサビリティ)が確保されている
・オーガニック以外の製品との混同、汚染されない管理・最終製品に残留物がない
・水・エネルギーの使用や廃棄物に関する環境目標をクリアしている
・排水処理方法や生分解性の基準にもとづき、毒性の強い薬剤を使用しない
・原料や助剤に遺伝子組み換え技術を使用しない
・動物実験を行わない
・強制労働、児童労働を行わない
・衛生的で安全な労働環境と搾取のない労働条件である
・差別禁止が実践されている

など複数の基準をクリアして初めて認証を受けることができる。

そもそも有機農業に取り組むことの意義は「環境保全」という側面が大きい。

土壌に多くの微生物がいることで、ミミズは生きられるし、クモやトンボやカエルも生きられるし、それらを捕食する鳥も生きることができる。生態系ピラミッドは「健全な土壌」によって支えられている。

土壌には大気中や植物よりもはるかに多くの炭素が貯留されており、地球温暖化対策としても健全が土壌は必要なのだ。

なるべく農薬を使用せず、健全な土壌を育むことで地球環境を守っていきましょう、というのが有機農業に取り組む大義名分だ。

農薬だけに気をつかって「水と電気はお構いなしで使用します」では「環境保全」と矛盾することになってしまう。

ルールが存在することで、それを守る者たちに対する信頼が生まれ、やがてそれが価値となる。

農家や企業がオーガニックコットンに関するルールを遵守し、消費者がオーガニックコットンを信用し、オーガニックコットンに価値を感じて初めて「割高でも買おう」という意識が芽生えるし、ひいては国内のオーガニックコットン市場は成長していくのだ。

消費者や農家を守るため、そして日本の縫製産業がこれからも存続していくためにも、GOTS認証は今よりもっと普及する必要があるのだ。

rrrrrrrrrとの提携

2025年10月にあるブランドから「一緒にコラボして洋服つくりませんか?」というご提案を頂いた。

サステナブルファッションブランドのrrrrrrrrr(ナインアール)だ。

ナインアールは2011年から環境に配慮した服づくりをしているブランドで、大量生産・大量廃棄を前提とすることで利益を最大化するアパレル業界の構造にも問題意識を持ち、「必要な分を作る」という受注生産を取り入れている。

また、国内で縫製されている服の割合が低いことにも問題意識を持っており、すべて日本国内(九州の福岡県の縫製工場)で生産している。

ナインアールの代表である松田潤さんとは2021年頃から交流があり、これまで何度かInstagramでタイアップの投稿をしたことはあったが、一緒に洋服をつくったことはなかった。

まだ蒸し暑さが残る湘南の海を眺め、一緒にアイスを頬張りながらコラボについて話し合った。

どんな洋服をつくるか、これがなかなかに悩んだ。

私は洋服を買うのも着るのも好きではあるが、自分が着たいと思う服を買って着ているだけだ。

一方、洋服をつくって売るということは、自分以外の、しかも多くの人が満足できるものを作らなければならない。

素人の私が下手にデザインなどに口を出した日には、それはもう盛大にコケる未来しか見えない。

結果的に売れないのは仕方がないと思うが、洋服をつくる以上は環境に負荷をかけるわけだから、しっかり売り切る努力をしなければならない。

というわけで、「服づくり」に関してはプロであるナインアールの皆さんに全面的にお任せをすることにした。

私は自分の仕事をするとしよう。

サステラは普段からユーザーに「知る」ことや「行動を起こすきっかけ」を提供することを目指して情報発信をしており、紛れもなくこれが私の仕事だ。

これまで何度となくGOTSについてサステラのSNSやブログを通じて発信をしてきたが、そもそもGOTSラベルのある商品がお店に並んでいないことに、私はある種の矛盾を感じ続けてきた。

でも、ナインアールさんにGOTSの洋服を作ってもらえば、多くの人たちにGOTSを「知ってもらえる」し、GOTSの洋服を買ってもらうという「行動」の部分も同時に担えることに気が付いたのだ。

今回のコラボが社会課題の解決に繋がるような、ポジティブな変化の一部になることを願い、GOTS認証を取得したオーガニックコットンのTシャツを展開することにした。

よく「環境に配慮したいなら、これ以上新しい商品は作らない方がいいのでは?」といったご意見を見かける。もちろんそれも素晴らしい選択だ。しかし私は自分の生活だけでなく、社会の仕組みを変えたいので、資本主義のルールに乗っ取りアクションを起こす。資本主義の中では「売れているもの=消費者の声」だ。企業はいつだって消費者が求めるものをつくる。商品を買わない人たちが何を求めているのか、企業には分からない。ボイコットをしても企業は簡単に行動を変えてくれないが、売上のためならすぐにでも変わる。つまり買い物は、どんな社会に一票を投じるかということなのだ。票を投じれば自分の声を社会に届けられる。いま売られている沢山の商品に問題意識を持つのなら、問題解決に繋がるエシカルな商品をつくり、たくさんの人がエシカルな商品を買うことで、「環境に配慮した商品は売上になる」というシグナルを沢山の企業に送る必要がある。そうすれば、環境に配慮した商品をつくるのは1社だけでなく、2社、3社と増えていくだろう。だから私は「多くの人がGOTS認証を求めている」というシグナルを日本のアパレル業界に送るため、GOTSの洋服をナインアールと協力してつくる。

GOTSに連絡

2024年11月、ナインアールとGOTS認証のTシャツをつくる案が出てすぐに、日本でGOTSの窓口を担っている松本フィオナさんに連絡をとった。

フィオナさんとは2023年から交流があり、たまに一緒にビーチクリーンをやったりするので、日本が抱えるオーガニックテキスタイルの課題についての話はよく伺っていた。

ただ、実際にGOTS認証を取得する前提で話を聞いてみると、そのハードルは決して低くないことを痛感した。

GOTSの認証を受けるためには「生地がオーガニック」というだけでは不十分なのだ。

染色をするのも、プリントをするのも、すべてGOTS基準をクリアした縫製工場で作られた洋服でなければ、認証ラベルは表示できない。

洋服屋でGOTS認証の商品はあまり見かけないと申し上げてきたが、実はタオルや寝具であればたまにGOTS認証のある商品を見かけることがある。

それはおそらく、洋服とは異なり、染色やプリントがなくても商品として成立しやすいからだ。

GOTS認証を受ける洋服を販売しようと思ったとき、最もハードルの低い商品が「無染色・無漂白の”生成り“の無地Tシャツ」だ。つまり綿が持つ素材本来の色のこと。

そして「白T」になると認証を取得する難易度が一段上がる。白Tはすでに白色に染色されているからだ。

現状では「無地の白Tシャツ」ですらハードルが高いのだ。

世界基準の手強さに打ちのめされていたところ、フィオナさんからある企業を紹介して頂いた。

大阪にある「三恵メリヤス」という縫製工場だ。

つい最近、GOTS認証を受けた「白Tシャツ」をつくれるようになったというのだ。

ちなみにGOTS認証がない洋服がダメだとは考えていない。現状、GOTSの基準をクリアしたオーガニックコットンの洋服を日本の縫製工場で作ろうと思ったら、色やデザインの選択肢は非常に限られてくる。オシャレには、バンドやキャラクターのプリントがはいったTシャツだって必要だし、真っ黒のTシャツだって必要だ。私が目指しているのは、普通のコットン、認証のないオーガニックコットン、GOTS認証のあるオーガニックコットン…これらがバランスよく市場に流通することで、自分の好みや経済状況に応じて買い物ができるよう、選択肢を増やしたいのだ。

三恵メリヤスへ

2024年12月、ナインアールの潤さんと共に、大阪にある三恵メリヤスの縫製工場を訪れた。

1926年 大正15年に創業した老舗の縫製工場で、多くの企業が海外に生産を移転してゆく昨今においても、「国産」「日本製」「大阪製」にこだわってものづくりを続けている。

新大阪についたあと「どうやって電車やバスを乗り継いでいくんだろう」なんて考えながらGoogleマップを開いてみると、なんと梅田駅から徒歩10分という抜群の立地。

老舗の工場と聞いて、勝手に郊外にあるものとばかり思っていたので、まさかこんな都会のど真ん中にまさか工場があるとは。

当日は三木社長と営業部の小西さんから、工場内を案内してもらった。

抜群のロケーションの次に驚かされたのは、なんといっても若い従業員の多さだ。

多くの縫製工場では高齢化が進んでいることは知っていたので、これはとても意外だった。

三恵メリヤスは、次の世代に技術を継承していくため、新卒採用には力を入れているそうだ。

工場が梅田駅徒歩圏という立地にあるのも、若い人たちの安定した雇用に寄与しているらしい。

三恵メリヤスは旧式ミシンでの縫製にこだわり続けており、旧式ミシンだから繊細な調整ができ、多様なニーズにこえられることもあり、世界中にたくさんの顧客を持っている。

ところで、三木社長から伺った話の中で特に印象的だったのは「欧米ではGOTSの商品が普及しつつあるのに、日本でGOTSの商品が少ないのは、日本ではGOTS商品の需要が少ないから」という話だ。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: jpgIMG_2737-1024x768.jpg
左:三恵メリヤス 三木社長 右:営業部 小西さん

すでに説明をした通り、GOTSの認証を取得するには、染色やプリントすらも基準をクリアしていなければならず、普通に洋服を作って売るよりもコストがかかる

それだけコストがかかれば、当然原価は上がり、商品の価格も上げる必要がある。

じゃあ「この洋服が高い理由はGOTS認証を取得しているからです」と言ったら、消費者は納得してお金を支払ってくれるだろうか?

いや、そもそも当然GOTSというラベルの意味を知らなければ、割高なお金を支払う理由などない。

そして消費者が買ってくれないようなものを、営利企業が作るわけがない。

こんな背景から、日本ではGOTS認証の商品が少ないわけだ。

しかしなぜ、こうした国内市場であるにもかかわらず、三恵メリヤスはGOTS認証のオーガニックコットンにこだわり続けているのかといえば、やはり世界を見据えている点が大きいという。

三恵メリヤスは海外輸出の割合が増えており、欧米では認証を取得していることはすでに最低条件になりつつあることを肌で実感しているそうだ。

EUでは2024年にグリーンウォッシュ禁止法を採択し、企業がマーケティングにおいて根拠なく「環境に優しい」と訴求することが禁止になった。2グリーンウォッシュとは、実質を伴わない環境訴求のこと。そしてこの法案では、認証ラベルを表示したりして、客観的かつ検証可能な根拠を容易することを求めている。つまりEUでは、認証ラベルを表示することはすでに企業の任意ではなく義務なのだ。ただ、日本ではまだ法制度化されていないうえ、そこまで踏み込んだ議論は起こっていないので、認証ラベルが普及していないというのも大きい。

GOTS認証が普及しないことの問題

GOTSが普及するかどうかは、環境問題だけでなく、日本の伝統技術が存続するかどうかをも左右する問題だ。

もしこのまま国内で世界基準であるGOTSが普及しなければ、一体どうなってしまうのかを想像してみよう。

まことに残念ながら、日本の人口減少が止まる様子はなく、日本人だけを相手にする商売はもはや持続可能性に乏しいと言わざるをえない。

世界に目を向けなければ、国内にある縫製工場からブランドまで、多くのアパレル関連企業の国際競争力は低下し、衰退していくだろう。

そうなれば日本が継承してきた伝統技術は静かに消えていくに違いない。

2024年5月に経済産業省が発表した「繊維産業の現状と政策について」によると、2022年の輸入浸透率は98.5%で、国内製造比率はたったの1.5%だ。3

1991年の国内製造比率は50%だったので、元々国内で作られていなかったわけではない。着実に減少していったのだ。

1990年代後半からファストファッションが台頭し、「安く」「大量に」つくるため、中国・ベトナム・バングラデシュのように人件費の安い国で作るようになったことが大きな原因だ。

しかも、国内縫製工場の90%以上は外国人実習生に依存をしているのが現状で、わずかに残っている国内の縫製工場の中でも、縫製をしている日本人に限っていえばかなり少ない。

技能実習制度は「外国人が日本の技術を学び母国に持ち帰ることを目的とした制度」であり、実習生は一定期間が過ぎれば母国に帰るので、日本国内の技術継承には寄与しない場合が多い。

かつて中国で作る洋服は「粗悪品が多い」と言われることが多かったが、日本で技術を習得した実習生が自国に戻り、技術移転をし続けたことで、いまや海外の縫製工場であっても高品質な商品が多い。

そして皮肉にも、外国に技術を伝えてきた日本の職人や工場は減り続けているのだ。

1990年には日本国内に500軒あった縫製工場が、今や50を切り、30年で10分の1にまで減少している。

かつてはファッションデザイナーのポール・スミス氏は、幅7mmの襟に二種類の生地を使いジャケットを注文したところ、世界中から断られてしまったが、日本の青森にある縫製工場に勤める地元の女性達はいとも簡単に、そして完璧に、この作業を仕上げてしまった。

ポール・スミス氏は「これからも彼女達の縫製技術が必要」だと絶賛したそうだが、残念ながら、そんな縫製技術も日本から消え去ろうとしている。

もし日本が鎖国をしているのなら、世界基準なんてものは無視してもいいかもしれない。

だが、120年以上前に浦賀沖に来航した黒船に門戸を開いたその瞬間から、日本は世界と繋がっているのだ。

国際社会で競争に晒されているはずの日本だけが、ガラパゴス化していていい理由など存在しない。

2000年代、日本のメーカーは国内だけに目を向けて携帯電話を作り続けた。

通信方式も、グローバルスタンダードではなく日本独自の方式を採用した。

そんなガラケーが日本で一世を風靡してから20年余りのときが経つ。

Source: StatCounter Global Stats – Device Vendor Market Share

2025年時点で、日本企業がつくるスマートフォンの世界シェアは、もはやTOP10にすら入っていない。

TOP10に入る韓国や中国のメーカーは、世界に目を向けてものづくりをしてきた。

その結果、世界のスマホ市場で躍進することができたのだ。

もちろんスマホと洋服では細かい問題の構造は異なるかもしれないが、少なくともガラパゴス化することへのリスクという点では共通しているだろう。

過去は変えられないが、過去から教訓を得て未来を変えることはできるはずだ。

日本の未来のためにも、やはりGOTSは普及していく必要があると思うのだ。

rrrrrrrrr×サステラ GOTS認証Tシャツ

今回のコラボTシャツは「白」「生成り」の2色展開。プリントは一切していない。

S、M、L、XLの4サイズ展開で、男女問わずに着用できるユニセックスだ。

ナインアールの「出来るだけ長く着れるようシンプルに」という理念が体現されている。

過度にトレンドは追求せず、いつの時代も通用する普遍的なデザイン・シルエットだ。

秋冬にはアウターやブルゾンのインナーとして、春夏にはトップス一枚で、文字通りオールシーズン活躍するはずだ。

「白」はどんなコーデにも合わせられる、説明不要の万能アイテム。

GOTS認証を受けた白のTシャツは、ようやく2024年に作れるようになったばかりだ。

綿本来が持つ色そのままの「生成り」も、味があっていい。

オーガニックコットンだからこそ、あえて素材そのままを楽しみたくなる。

生成りは洗剤を使用して洗っていると白度が増していくので、経年変化を楽しむことができる。

素材はオーガニックコットン100%。GOTSのラベルが証明だ。

農薬が使われていないのはもちろん、遺伝子組み換え技術も、有害な薬剤も、一切不使用だ。肌に触れる生地としてこれほど安心なものはない。

言わずもがな、三恵メリヤスさんに縫製してもらっているので、正真正銘のMADE IN JAPANだ。90年以上「日本製」にこだわり続けてきた伝統技術が注ぎこまれている。

洋服の裏側にあるタグには、rrrrrrrrr、EIJI、サステラのブランドロゴが表記されている。

モノづくりの裏側にあるストーリーを知って欲しい。

アナタの買い物は、どんな社会に一票を投じるかということ。

豊かな地球と、日本の伝統技術を、次の世代に引き継ごう。

(EIJI…三恵メリヤスが展開するオリジナルブランド)

関連リンク

Global Organic Textile Standard

文献

  1. https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/index.html ↩︎
  2. https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/02/593dce144da5d103.html ↩︎
  3. https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/240516.pdf ↩︎
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

持続可能な社会の実現を目指す300人以上の生活者や企業が集まる「サステラコミュニティ」運営。生まれも育ちも神奈川県横浜市。現在は鎌倉市在住。2018年にWEBメディアの会社を起業。フォロワー9万人のInstagramを中心にSDGs、地球温暖化、エシカル消費などの情報を発信しています。

【プロフィール詳細】
https://susterra.net/ryu/

コメント

コメントする

1 × four =

目次